さまざまな感想が聞かれたが、大勢を占めるのは「かっこいい」、「レヴォーグらしい」という声だった。多くは肯定的な感想が多かったようだ。
スバルという製品は日本の製品のなかでも極めてマニアックでユニークな製品だ。メカニズムを中心とした理詰めのクルマ造りに対するリスペクトが高く、スバルもその希望に常に応えてきた。その半面、なかなか一般受けしにくい製品との感触もあり、その人気をさらに広い顧客層に拡大するべくデザインを中心とした大きな大改革が進められてきたのが、これまでの流れだ。
初代レヴォーグはそのなかで、大きな転換を実現したモデルのひとつだ。
2013年に発表されたそのモデルは、レガシィよりも大幅に短く低いモデルとなった。これまで日本市場でも主役でもあったレガシィが北米での人気から、大型化していくのに対して、日本での取り回しのしやすさを図ったもの。
しかしこれは、多くのユーザーからの声も参考にされた。熱狂的なレガシィファンからは、「5ナンバーこそがレガシィの王道」との声も強く、市場では多くの機能をコンパクトなサイズに凝縮された箱庭感が日本の美徳との主張もなされた。こうした、日本市場と世界市場の間でのニーズの違いは極めて深刻な問題ともなってきた。
それを補うかのような製品となったのが、初代レヴォーグだ。全幅こそ5ナンバーサイズではなかったが、短めの全長によって扱いやすさを実現した。
しかしレヴォーグは、単にこれまでのユーザーのニーズだけに応えた訳ではなかった。これまでのスバルファンにとって大きかった声が、後方に引いて立ち上がったフロントピラーへの好感度だった。ボンネットが見やすく車両感覚をつかみやすいこと、そしてフロントピラーが手前にあることで、前方を見やすいことだった。これこそが、朴訥なスバルのデザインと賞賛されたりもした。
しかし、初代レヴォーグはここに手を入れた。
時代的には前進しすぎたフロントピラーをドライバー側に引き始める時期に差し掛かっていたが、レヴォーグではあえてフロントピラーの付け根を前進させ、フロントウインドウをさらに後傾化した。
これはトレンドを追ったということではなく、強固で合理的なボディ骨格の構築やパッケージの再検討にもよるものだ。この構造がより一体感のあるマッシブな造形を生み、コンテンポラリーなフォルムを纏うこととなった。
しかし注目は、サイドビューでは一連するスバルらしさを見せていたことだ。その特徴となるのは、全長に対してホイールベースが比較的短く、長いフロントオーバーハングを持つ点だ。実はこれを前後反対にすると、ポルシェ911らしさになる…というのは余談だが、水平対向エンジンに縦置きトランスミッション、そしてエンジンとの付け根にドライブシャフトを出す構造は、必然的にエンジンをオーバーハング部に搭載することになる。
このプロポーションに寄り添ってきたのが、水平対向エンジン&AWDのスバルの形だ。そして初代レヴォーグでは、そのフォルムの意味合いを深掘りしエクステリアの造形に表現した。これまで機能として必要最小限に形にしてきたのに対して、独自のエンジン、独自のトランスミッション、独自のAWDによる駆動システム。こうした機能を明確にすること同時に、システムが与えるそれぞれの価値「躍動感」をフォルム全体とした形創ったように見える。
そして新型レヴォーグは、基本としてこれまでの価値を継承した。しかし、違ってきたのはリヤセクションの形だ。当初レヴォーグは、これまで久しく市場に存在感のなかったステーションワゴン・オンリーのボディ形態にトライした(もちろんセダンのWRXは存在するが…)。
まずはステーションワゴンとしての価値を明確にすることが、初代レヴォーグの役目でもあったものが、新型ではその存在感を弱めている。
これはユーザーのニーズや、周囲からの見え方の変化にも呼応したものだろう。特に初代レヴォーグでは質の高い走りの性能に評価があり、ステーションワゴンであることは「あって当たり前」の価値となってきたようだ。もはや、すでに認識されたレヴォーグの機能を前提に特化した価値を高めることが、新型の狙いのように見える。
荷室の存在感を弱めてでも、より軽快に。ステーションワゴンが持ちがちな、リヤセクションの重さや生活感をできるだけ排除。また、リヤセクションをリヤコンビランプの外周に合わせて囲うことで、キュッとしまった小尻感を演出している。
そして全体のフォルムとも関係するが、レヴォーグにとっては先代よりもフェンダーが明確にその存在を示す必要があったようだ。それは機能の明確化であり、AWDとして4輪がしっかりと路面を蹴り出すパワフルさ、そして高い安定感をさらに印象的に造形化している。
フロントに回って見てみても、エンジンの存在感と、駆動系の力強さをより明確に分離するフェンダー造形となっている。先端のバンパーレベルから、独立したフェンダーのイメージが与えられている。より機能を明確にデザインに載せるやり方に徹していることが感じられる。もしかしたら、初期スケッチでは水平対向エンジンの重心の低さを主張するため、フェンダーよりボンネットが低い絵を書いていたんじゃないだろうか? なんて想像もしたくなるほどだ。
そしてフロント、リヤともにデザインとしてちょっと意識しているのは、水平対向エンジンの存在感だ。ヘッドライトやリヤコンビランプには内側に向かったコの字のランプ造形を感じることができる。またそれを繋ぐように水平に伸びたラインは、コンロッドのようにも見える。
こうした機能を明確にしながらパッションを形全体に与える造形は、先代モデルから行なわれているが、その主張をより明確にしたのが新型だ。同時に不必要なものを削ぎ落とす造形は、よりシャープで軽快に見える。
ここまでは、すでにモーターショーで我々の目前に登場した形であり、その期待や安心感のある形の実感は共有できていると思う。
問題は、いままで公開されていないインテリアだ。ここ最近、エクステリア以上に多くの革新が見られる部分だが、さてスバルは未来に向けて、どんなインテリアを披露してくれるのだろうか。