ベースは85年に登場したVFR750Fだが、HRCのワークスマシンRVF750に近い造り込がされていて、ワールドスーパーバイク選手権に参戦するためのホモロゲ獲得のためのモデルという位置づけで開発された。
心臓部の水冷V4エンジンは、チタンコンロッドや専用のカムシャフトを採用しさらに、360度クランクとした新設計。リアサスペンションには片持ちスイングアームのプロアームを装備し、アルミ製フューエルタンクにFRP製フルカウリングを採用していた。プロアームの採用はもちろん、鈴鹿8耐をはじめとした耐久レースでのタイヤ交換作業の時間短縮のためである。いずれにしても、手作りに近いモデルだったことから、販売価格は148万円となっていた。当時の750㏄モデルが80万円前後だったことから比較すると、とんでもなく高価なバイクだったのである。また、限りなくレーシングマシンに近いことから、VFR750Rではなく形式の呼称であるRC30という呼び方が大勢を占めた。
このようにストリートバイクとしては非常に高価に思えるが、レーサーベースとしては手頃な価格だったことから、鈴鹿8耐に参戦するプライベートライダーたちから絶大な支持を得た。結果、国内販売1000台限定に対して2826台の注文が殺到。急遽、抽選販売という異例の措置がとられたのである。
VFR750Rベースのスーパーバイクレーサーは国内外のレースで大活躍し、鈴鹿8耐においてもワークス勢を相手に一歩も引けを取らない走りを披露したプライベーターを輩出するなど、レースシーンに大きなインパクトを与えた。一方ストリートバイクとしては、特別な1台としてコアなファンに支持された。レーサーレプリカブームという特殊な状況があったからこそ創出された、贅を尽くしたスーパースポーツモデルだといえるだろう。
以下は、メディアに向けたリフレッシュプラン説明会の会場に展示されていたVFR750R。
型式:RC30
全長/全幅/全高(m):2.045/0.700/1.100
軸距(m):1.410
最低地上高(m):0.130
シート高(m):0.785
車両重量(kg):201
乾燥重量(kg):180
乗車定員(人):1
燃費(km/L):32.2(60km/h定地走行テスト値)
最小回転半径(m):3.3
エンジン型式:RC07E(水冷4サイクルDOHC4バルブV型4気筒カムギアトレーン)
総排気量(cm3):748
内径×行程(mm):70.0×48.6
圧縮比:11.0
最高出力(PS/rpm):77/9,500
最大トルク(kg-m/rpm):7.1/7,000
始動方式:セルフ
キャブレター型式:VDHO
点火方式:CDI式バッテリー点火
潤滑方式:圧送飛沫併用式
潤滑油容量(L):3.8
燃料タンク容量(L):18
クラッチ形式:湿式多板ダイヤフラムスプリング
変速機形式:常時噛合式6段リターン
変速比
1速/2.400
2速/1.941
3速/1.631
4速/1.434
5速/1.291
6速/1.192
減速比(1次/2次):1.939/2.500
キャスター(度):24°50′
トレール(mm):91
タイヤサイズ:前120/70-17-58H(バイアス) 後170/60R18-73H(ラジアル)
ブレーキ形式:前/油圧式ダブルディスク(フローティングディスクプレート) 後/油圧式ディスク(フローティングキャリバー)
懸架方式:前/テレスコピック 後/スイング・アーム(プロアーム)
フレーム形式:バックボーン(ツインチューブ)