また、NEDOは2014年9月に策定した「太陽光発電開発戦略」の中で発電コスト低減目標達成のため、革新的で高性能な太陽電池の開発を推進する事業(※3)を行い、その一環としてシャープはIII-V化合物3接合型太陽電池(※4)の技術により、世界最高水準(※5)の高効率太陽電池モジュール(※6)(変換効率31.17%(※7))を開発した。
シャープはこのたび、移動体への太陽電池搭載の可能性を検証するため、日産自動車の協力の下、上記、III-V化合物高効率太陽電池モジュール(変換効率31.17%)と同等のセルを活用して、電気自動車(EV)用太陽電池パネルを製作した。本セルは約0.03mmの薄いフィルム状であり、車体の曲面形状に沿って効率よく搭載できることから、1kWを超える約1,150W(※8)の定格発電電力を実現した。本パネルは、公道走行用実証車として、日産自動車のEV「e-NV200」に搭載されている。
今後NEDOは、本実証EVの実証結果のほか、2019年7月からトヨタ自動車が実施した、シャープ製の太陽電池パネルを搭載したプラグインハイブリッド実証車(実証PHV ※9)による公道走行実証のデータと併せて、IEAPVPStask17(※10)などの国際的な調査活動に生かす。さらに、NEDOは新規事業として、車載用III-V化合物太陽電池の実用化に向け、さらなる高効率化とコストダウンを推進し、太陽電池の新規市場創出とエネルギー・環境問題解決を目指す。
※1 太陽光発電システム搭載自動車検討委員会
太陽光発電システムの「新たな市場創出」と「エネルギー・環境問題解決へのさらなる貢献」を目的として、自動車搭載用太陽光発電システムについて調査・検討するため、2016年4月にNEDOが設置したもの。
※2 試算自動車への太陽光発電システム搭載時における〔1〕CO2排出削減効果、〔2〕ユーザーの利便性(充電回数)、〔3〕太陽光発電システム搭載自動車が普及した際の社会全体のCO2排出削減効果について検討し、その結果を中間報告書として2018年1月に公表した。
https://www.nedo.go.jp/news/press/AA5_100909.html
※3 革新的で高性能な太陽電池の開発を推進する事業
事業名:高性能・高信頼性太陽光発電の発電コスト低減技術開発/革新的新構造太陽電池の研究開発/超高効率・低コストIII-V化合物太陽電池モジュールの研究開発
事業期間:2015年度~2019年度
※4 III-V化合物3接合型太陽電池
インジウムガリウムリン(InGaP)、ガリウムヒ素(GaAs)、インジウムガリウムヒ素(InGaAs)などの化合物を接合している。
※5 世界最高水準2020年7月6日現在。シャープ調べ。
※6 高効率太陽電池モジュール上記※3のNEDO事業にて開発を実施。7円/kWhを実現する発電事業用途を想定しているが、本件においては、高い変換効率に着目し、EVでの可能性を検討する。
太陽電池モジュールで世界最高変換効率31.17%を達成(2016年5月19日ニュースリリース)
https://www.nedo.go.jp/news/press/AA5_100571.html
※7 変換効率31.17% 2016年2月、国立研究開発法人産業技術総合研究所(世界の太陽電池の公的測定機関の一つ)により、確認された数値[モジュール面積:968cm(2)(約31cm×約31cm)]。
※8 約1,150Wセル出力値(シャープ測定)と今回製作したパネル面積から算出したパネル出力の合計。
※9 実証PHVトヨタのプラグインハイブリッド車 「プリウスPHV」に、シャープの高効率な太陽電池セルをモジュール化して搭載した乗用車。2019年7月より、愛知県豊田市や東京都などで公道走行実証が実施された。
世界最高水準の高効率太陽電池を搭載した電動車の公道走行実証を開始(2019年7月4日ニュースリリース)https://www.nedo.go.jp/news/press/AA5_101150.html
※10 IEAPVPStask17国際研究協力プログラム「IEAPVPS」の研究テーマのひとつ。太陽光発電システムを搭載した移動体の省エネ効果や要求される仕様について、国際的に調査を行う日本主導の活動。