レシプロエンジンに不可避な振動は、基本設計だけではなかなか除去できない。乗員に不快を感じさせることは、自動車の商品としての価値を削ぐことになるからコストと重さを圧しても装備したいのがバランスシャフトだ。

 直列6気筒以外の気筒配置では、大なり小なり振動が発生する。直列4気筒の二次振動や3気筒の偶力が代表例で、商品力を上げるためにはどうしても消したいネガである。




 20世紀初頭に理論化されていたバランスシャフトを、三菱自動車が1974年に実用化したことで、振動除去への道筋ができあがった。クランクの回転と反対方向に回るウェイト付の軸を付加するのが原理で、振動の種類によって、一軸、二軸、平行配置、斜め配置等の種類がある。バランスシャフトはどんな振動でも完全に排除できるわけではなく、重量とコストがかさむことから、最近の3気筒エンジンでは、クランクシャフトの設計の工夫や、マスダンパーの配置の仕方等でバランスシャフトを使わない事例も増えている。

ベアリングメーカーを傘下に持つシェフラーは、転がり軸受構造のバランスシャフトを提案。摩擦を著しく低下させるとともに質量が最適化されることで新しい設計が可能になるとアナウンスしている。図に示すバランスシャフトユニットは、転がり軸受の支持部を搭載しているのも特徴である。リブと偏心構造を巧みに使うデザインが見て取れる。

日産は3気筒エンジンの振動をキャンセルする手段として、エンジン内部のバランスシャフトではなく、アンバランスマスを持つアウターバランサーを採用、クランクプーリーとドライブプレートに備える構造とした。エンジンから発生する縦方向の振動を横方向の振動へ変換することで、とくにアイドリング時の車室内で感じる振動を低減している。

三菱自動車のサイレントシャフト。フレデリック・ランチェスター氏の理論を用いてエンジンの往復慣性力を抑え込もうとした快作で、その効果が認められ他社を含め多くに用いられることとなった。とくにこのサイレントシャフトはバランサーを2本に分け上下に配置、振動のみならず回転モーメントの抑制も図っていた。

情報提供元: MotorFan
記事名:「 内燃機関超基礎講座 | バランスシャフトの効果と理屈