日産スカイラインGT Type Pに試乗した。3.0ℓV6ツインターボ搭載の生粋の「スカG」である。パワーは304ps。同じエンジン搭載の400R(405ps)より101ps出力ダウンのスカGに魅力はあるか? ライバル、トヨタ・クラウンRS(2.0直4ターボ)と比べたら?

最初からこのパッケージだったらよかったのに

個人的には新しい日産顔のスカイラインの方が好み

こちらがマイナーチェンジ前のインフィニティ顔のスカイライン

 現行スカイライン(V37型)は、2014年デビューだから、決して新しいクルマではない。デビュー当初は3.5ℓV6HYBRIDモデルだけで、旧型V36型も併売したり、なにより、日産スカイラインなのに「インフィニティ顔」にしたり、2014年にはダイムラー(メルセデス・ベンツ)の2.0ℓ直4ターボ(M274型)を載せたりと日産のダメなマーケティング戦略に翻弄されたクルマと言っていい。


 2019年7月にマイナーチェンジを受け、ようやく自社開発の3.0ℓV6ツインターボ(VR30DDTT型)を載せ、フロントフェイスも「日産顔」を手に入れた。


 ハイブリッドモデルには、プロパイロット2.0というキラーコンテンツを投入し、コンベのエンジン搭載車は、「スカG」の名前に恥じないハイパワーのV6ターボエンジンを載せた。トップモデルは400ps(実際は405ps)の「400R」を擁する。今回のGT Type Pは同じエンジンながら最高出力を300ps(実際には304ps)に抑えたモデルである。今回は「400R」に対して「300GT」と呼ぶことにする。


 最初に結論めいたことを言わせていただくと、「なんで最初からこれで出さなかったんだろう」と思わせるほど、V6ターボエンジン搭載のスカイラインは良い。「クルマの魅力の多くはエンジンだよなぁ」と(たとえ旧世代だと後ろ指さされても)呟いてしまう。

 エンジンがいいとスタイルもよく見えてくるから不思議だ。イフィニティ顔のときは、正直言ってピリッとしないデザインだと思っていのに……。全長×全幅×全高:4810mm×1820mm×1440mm ホイールベース:2850mmは、けして小さくないが、扱いに困るほどではない。現行3シリーズの4715mm×1825mm×1440mm ホイールベース:2850mmと比べてもフロント/リヤのオーバーハングが少しずつ長いだけで、同じような感覚でドライブできる。

全長×全幅×全高:4810mm×1820mm×1440mm ホイールベース:2850mm

トレッド:F1540mm/R1570mm 最低地上高:130mm 最小回転半径:5.6m
車重:1740kg 前軸軸重980kg 後軸軸重760kg


3.0ℓV6ツインターボ(VR30DDTT)がいい

 300GTが搭載する3.0ℓV6ツインターボの型式はVR30DDTT。2016年デビューで当初はインフィニティQ50/Q60に搭載していた。生産は福島・いわき工場なのに、日本では乗れないエンジンだったのだ。Vバンク角は60度、ボアピッチも108mmだからVQ系と共通だ。DDTTという型式からもわかるように、DOHC(D)直噴(D)、ツインターボ(TT)である。このエンジン、個人的には現代のV6エンジンのなかでは五指に入るいいエンジンだと思っている。


 400Rに乗ったときも、「ああ、いいエンジンだな」と思ったが、その感触は300GTでも変わらない。


400Rが


最高出力:405ps(298kW)/6400rpm


最大トルク:475Nm/1600-5200rpm


なのに対して300GTは


最高出力:304ps(224kW)/6400rpm


最大トルク:400Nm/1600-5200rpm


 と101ps/75Nmほど穏やかな出力となっている。とはいえ、304psですよ! アクセルをひとたび踏めば期待以上の加速が味わえるし、そこに至るまでに、いわゆる「ターボラグ」を感じることもない。

ボンネットフードはダンパー付き。見える景色はこちら

ご興味ある方は少ないと思いますが、これがエンジンカバー
裏側はこうなっている


エンジン形式:V型6気筒DOHCターボ エンジン型式:VR30DDTT型 排気量:2997cc ボア×ストローク:86.0mm×86.0mm 圧縮比:10.,3 最高出力:304ps(224kW)/6400rpm 最大トルク:400Nm/1600-5200rpm 過給機:ターボチャージャー 燃料供給:筒内燃料直接噴射(DI) 使用燃料:無鉛プレミアム 燃料タンク容量:80ℓ

 インタークーラーが400Rと違って「強化型」でないのと、ターボチャージャーに回転センサーがつかない(からギリギリまでのターボの回転限界までは使わないのだろう)し、もちろん過給圧も違うのだろうが、味わいはさほど変わらない。少なくとも首都高を流したり都内をのんびり走るときには405psと304psでなにかが大きく違うわけではない。


 燃費性能も


300GT


WLTCモード燃費:10.0km/ℓ


 市街地モード 6.2km/ℓ


 郊外モード 10.6km/ℓ


 高速道路モード 12.9km/ℓ


400R


WLTCモード燃費:10.0km/ℓ


 市街地モード 6.5km/ℓ


 郊外モード 10.6km/ℓ


 高速道路モード 12.5km/ℓ


とほぼ同じ(つまりモード走行では300も400も必要ないのだ)。


 とにかく、言えることは「VR30DDTTは良いエンジン」だということ。

インタークーラーは日産初の水冷式。400Rは強化型を使うが300は通常型。VVEL(可変バルブリフト機構)はなし。レスポンスを重視してEGRも不採用。吸気側のVVTはレスポンスに優れた電動式とした

室内長×幅×高:2000mm×1480mm×1160mm



 乗り込んでみる。正直言ってインテリアはよく言えば「男の仕事場的」悪くいえばちょっと古い感じ。とはいえ、これまたエンジンが良いとスタイルまで良く見えてくると同じで、インテリアも流行が一周回って、これはこれでヨシと思えた。


 気になったのは、ステアリングの重さ。400Rも同じだが304ps(400Rは405ps)もあるクルマとは思えないほどステアリングが軽い(パワーアシストが強い)のだ。同じステアバイワイヤーのDAS(ダイレクト・アダプティブ・ステアリング)を使うハイブリッド(プロパイロット2.0付き)は、さらに軽く、もう小指で回せるほどで、そちらも正直、もう少し手応えがあった方がいいと感じるが、300GTもそれよりマシだが、もう少ししっとり重い方がいいと思う。


 ステアリング操作は軽ければ軽いほどいい、と思う層も一定数いる(あるいは多数派)と思うが、スカイラインを求める層は、そう受け止めないのではないだろうか。

トランスミッションはジヤトコ製7速AT  1速:4.783 2速:3.102 3速:1.984 4速:1.371 5速:1.000 6速:0.870 7速:0.775 後退:3.858 最終減速比:2.937

モニターは最新モデルと比較すると小さいがユーザーインターフェイスは使いやすい

 横浜の日産グローバル本社から東新宿の編集部まで首都高を使ってのんびり帰ると燃費は10.3km/ℓだった。今回の試乗は高速道路よりも市街地が多く、トータルで244.7km走った。満タン法での燃費は8.9km/ℓ。WLTCモード燃費の89%だから、まぁまぁこんなもんなのだろう。


 ちなみに400Rをジャーナリストの瀨在仁志さんが試乗したときの燃費(高速道路中心でそれなりにアクセルを踏んで)は9.9km/ℓ、遠藤正賢さんの試乗のときが9.1km/ℓだから、やはり300GTと400Rでは燃費の差はほとんどないのかもしれない。




 300GTで100km/h巡航するとエンジン回転数は1720prm近辺(メーターを目視した)だった。ジヤトコ製ATはライバル(アイシン・エィ・ダブリュやZF)の8速、9速(メルセデス・べンツ)、10速と比べるとスペック的に見劣りがするが、7速でまったく不満は感じない。


 強いて不満をあげれば、400Rの方が乗り心地が少しいいかも、ということだ。これは400Rには「インテリジェントダイナミックサスペンション」(IDS)と呼ばれる、減衰力をより幅広い領域かつ100分の1秒単位で制御可能な電磁式比例ソレノイドダンパーが標準装備されているから、なのかもしれない。




 300GTで最大の問題は、「400Rがあること」なのだ。400Rがあるのに、300GTを選ぶ理由があるか?

タイヤは225/50RF18のブリヂストン・ポテンザのランフラットタイヤを装着

 国産でスポーティなFRセダンが欲しいとなると日産スカイラインは、3.0ℓV6ツインターボのおかげで俄然有力候補となる。同じスカイラインには3.5ℓV6ハイブリッドのモデルがあって、そちらは「プロパイロット2.0」で売るクルマだ。個人的にスカイラインを選ぶなら、ハイブリッドではなくV6ターボを選ぶ。プロパイロット2.0は素晴らしい技術だと思うが、V6ターボの魅力にはまったく及ばない。


 ちなみに、同じGT Type PでV6ツインターボとハイブリッド(581万6800円)の価格差は117万8100円にもなる。


 ここはV6ターボでしょ。

日産スカイライン400R

日産スカイライン400R 400R 車両本体価格:562万5400円



形式:V型6気筒DOHC直噴ターボ 型式:VR30DDTT 種類:筒内直接燃料噴射V型6気筒(DOHC) 排気量:2997cc ボア×ストローク:86.0×86.0mm 圧縮比:10.3 最高出力:405ps(298kW)/6400rpm 最大トルク:475Nm(48.4kgm)/1600-5200rpm

 今度は400Rとの比較となる。今回試乗した300GTは、GT Type Pだが、もうひとつ上のグレードのGT Type SPだと490万8200円になる。400Rが562万5400円だから304psと405psの価格差は71万7200円だ。なかなか悩ましい金額だ。




 あらために400Rの写真を見ると、タイヤ&ブレーキの違いなどもあって、なんとなく精悍に見える。405psを解き放つ場面など、ほとんどないかもしれないが、「オレのスカGは405psだ!」と心のどこかで思えることの価値は71万7200円になるような気もする。


 電動化されていない400psオーバーのFRセダンという乗り物が絶滅危惧種であるのは周知の事実だし、今後生き延びることができたとしても500万円台ではきっと手に入らなくなるだろう。


 となれば、(お金に余裕があれば)ここは300GTではなく400Rを選びたいと思う。そう思う人が多いらしく、300GTより400Rの方が売れているという。

トヨタ・クラウンRS

 ハイパワー、ノンハイブリッドのスポーツセダンにはクラウンRSという選択肢もある。こちらは、2.0ℓ直4DOHCターボ(245ps/350Nm)+8ATを搭載する。


 400km試乗したときの燃費は12.2km/ℓと今回の300GTよりずっとよかった。


 とはいえ、この試乗の際も、クラウンを選ぶならハイブリッドと結論づけたように、スカイライン300GT/400Rが積む3.0ℓV6ツインターボほどの魅力はクラウンの2.0ℓ直4ターボにはなかった。

トヨタ・クラウンRS Advance(2WD)車両本体価格:569万8000円



形式:2.0ℓ直列4気筒DOHCターボ 型式:8AR-FTS 排気量:1998cc ボア×ストローク:86.0×86.0mm 圧縮比:10.0 最高出力:245ps(180kW)/5200-5800pm 最大トルク:350Nm/1650-4400rpm 燃料供給:筒内燃料直接噴射(DI)+ポート噴射(D-4ST) 燃料:無鉛プレミアム

 スカイラインを買うならV6ツインターボ。クラウンを買うならハイブリッド、というのが私の(極めて個人的な)結論である。




 いいエンジンのクルマってやっぱりいいなぁ、なんて言えるのも今だけかもしれない。であるならば、3.0ℓV6ツインターボを積む「スカG」でそれを味わっておくのも悪くない。

試乗車は以下のオプション付き:BOSEサウンドシステム(16スピーカー)+アンビエントライトシステム22万3300円、フィニッシャー本アルミ 5万5000円、リヤ可倒シート4万4000円、電動ガラスサンルーフ12万1000円、オーロラフレアブルーパール色4万4000円 ディーラーオプション:ドライブレコーダー3万8897円、プレミアムフロアカーペット5万7200円、ウィンドウ撥水12ヶ月1万285円

日産スカイライン GT Type P(V6 TURBO)


全長×全幅×全高:4810mm×1820mm×1440mm


ホイールベース:2850mm


車重:1730kg


サスペンション:Fダブルウィッシュボーン式 Rマルチリンク式


エンジン形式:V型6気筒DOHCターボ


エンジン型式:VR30DDTT型


排気量:2997cc


ボア×ストローク:86.0mm×86.0mm


圧縮比:10.,3


最高出力:304ps(224kW)/6400rpm


最大トルク:400Nm/1600-5200rpm


過給機:ターボチャージャー


燃料供給:筒内燃料直接噴射(DI)


使用燃料:無鉛プレミアム


燃料タンク容量:80ℓ




WLTCモード燃費:10.0km/ℓ


 市街地モード 6.2km/ℓ


 郊外モード 10.6km/ℓ


 高速道路モード 12.9km/ℓ


車両価格○463万8700円

情報提供元: MotorFan
記事名:「 日産スカイラインGT:国産FRスポーツセダン 選ぶべきは400Rか300か。はたまたトヨタ・クラウンRSか。エンジンの魅力で考えると