今回トヨタが受賞したのは、エンジンの性能を左右するシリンダーヘッド(*3)の世界初となるアルミ鋳造技術。シリンダーヘッドの冷却水路は、通常、中子(なかご)と呼ばれる砂を接着剤で固めた砂型で形成される。中子の製造方法として現在主流となっている技術は、接着剤として有機物質であるフェノール樹脂を使っており、鋳造時に臭気と煙が発生し、臭気ガスの処理のための大型脱臭設備が必要となる課題があった。
一方、エンジン性能を向上させるためには、シリンダーヘッドの冷却能力を向上させる必要があり、そのためには、冷却水路を細く複雑な形状にすることが求められる。煙と臭気を発生させないためには、接着剤に無機物質を用いることが有効だが、無機物質を使った中子製造方法で、複雑な形状を作ることや砂を再利用できる方法は存在しなかった。
今回トヨタが開発したアルミ鋳造技術は、臭気や煙が発生しない無機物質の水ガラスを使用し、かつ、複雑な形状にも対応でき、砂が再使用できる世界初の技術。熱分解しない水ガラスを接着剤とし、アルミ鋳造時における臭気濃度を1/100以下にすることに成功し、脱臭設備の投資を削減した。また、界面活性剤の働きでムース状にし、砂の流動性を改善することで、シリンダーヘッドの細く複雑な冷却水路を実現し、熱効率41%の新型エンジンの量産に大きく寄与している。さらに、砂処理温度の低温化を実現したことで、CO2の排出量を従来の半分以下にした。
*1 新東工業(株)との共同開発
*2 大河内記念生産特賞、大河内記念生産賞、大河内記念技術賞を含む
*3 シリンダーブロックと共にエンジンの本体骨格を形成する部品のひとつ。エンジンの性能を左右する重要な部品