次はワゴンに、と思ったわけは、セダンよりワゴンの方が少し短く、その分扱いやすいだろうと思ったからだ。MAZDA6ワゴンは全長×全幅×全高:4805mm×1840mm×1480mm、ホイールベース:2750mmとなかなか堂々たるボディサイズだ。
現行BMW 3シリーズツーリングが全長4715mm、ボルボV60が全長4760mmm、VWパサートヴァリアントが全長4775mmと書けばMAZDA6ワゴンのサイズがわかるだろう。それでもセダンと比べると全長で60mm、ホイールベースで80mmワゴンの方が短いのだ。MAZDA6セダン、とても気に入ったのだが、「もう少し小さければなぁ」と思ったのがワゴンを選んだ理由のひとつだ。
セダンとワゴンでホイールベースを変えて作り分けるこだわりがマツダらしいが、このMAZDA6もデビューは2012年だからずいぶんとモデルライフが長くなっている。その間、何度か大きな改良を受けていて、とくに内装はデビュー時とはまったく違うクオリティへと文字通り「改良」されている。
今回、再びMAZDA6に乗せていただこうと思ったもうひとつの理由は、2019年8月の「アテンザ→MAZDA6」への改名時にラインアップに加わった2.5ℓ直4ガソリンターボを試してみたかったからだ。こちらについては後述する。
セダンと比べると短くなったボディ(とホイールベース)だが、伸びやかで美しいプロポーションはさすがマツダ。最小回転半径はセダンが5.6mなのに対してワゴンは5.5mと違いはわずか。ホイールベースが80mmもセダンより短いが、175cmのドライバーが前後に座っても後席膝まわりには握り拳1個分の余裕があった。セダンより少しアップライトに座らせるパッケージだ。
通常、リヤの開口部が大きいワゴンはセダンよりもボディ剛性の面で不利だと言われる。MAZDA6はどうか? 街中〜高速道路、郊外路を350kmほど走ったが、ワインディングやサーキットを「激走」していないので、剛性面でワゴンが劣るとはまったく感じなかった。
トランクスペースはセダンでも充分だったが、ワゴンは容量よりも、より使い勝手がよくなっていると感じだ。とはいえ、リヤゲートの電動開閉が装備されていない(されていなくても個人的にはまったく不自由しないのだが)のは最上級モデルとしては他社のライバル車に対して不利なところかもしれない。ボンネットフードを開けた際にも、ボンネットダンパーがついていない(これまた、多くの人はきっとボンネットを開ける機会がほとんどないだろうから実際に不自由なことはないのだが)のもちょっとマイナス。なんといっても、MAZDA6はマツダの最上級モデルなのだから。
「やっぱりガソリンエンジンはいいな」と感じさせてくれるが、その代償として燃費はそれなりだ。
WLTCモード燃費:12.4km/ℓ
市街地モード 9.3km/ℓ
郊外モード 12.6km/ℓ
高速道路モード 14.3km/ℓ
がモード燃費の数値で、試乗を通してモード燃費の85-90%の達成率だった。
今回の試乗では350km走って総合燃費は10.5km/ℓ(達成率約85%)だった。都内をうろうろすると8-9km/ℓ、高速道路を淡々と走れば13-14km/ℓである。4.0ℓV8エンジンと思えば充分すぎる燃費だが、MAZDA6には、世界最高レベルのSKYACTIV-D2.2がある。4.0ℓV8エンジンを欲しがるのはアメリカ人だけで、日本人(と欧州の人たち)は、SKYACTIV-D2.2の方を好むのではないかと思う。
NV(ノイズ・バイブレーション)は、もちろんこの2.5ℓターボの方が優れている。朝、自宅ガレージでイグニッションをONにしてエンジンをかける時は、「ああ、やっぱりディーゼルよりガソリンだよな」と思うが、逆にいえばそう思うシチュエーションは存外少ない。
価格が2.5ガソリンNA<2.5ガソリンターボ<2.2ディーゼルになっているなら納得できるが、この2.5ターボはディーゼルより高い価格設定になっているのだ、
ということで、2.5ℓガソリンターボはとてもいいのだが、ディーゼル嫌いでなければ、SKYACTIV-D2.2を選んだ方がいいと思う。少なくとも私ならそうする。
MAZDA6のデビューは2012年だ。2020年春に、マツダのフラッグシップとしての競争力はあるか?と問われたら、まだある。が、そろそろ次が登場してもいいな、というのが正直な感想だ。
ボディデザイン、インテリアの質感は依然として素晴らしい。とくにインテリアの質感は2012年デビューのほかのモデルと比べたら驚異的に良い。
しかし、いつも指摘せざるとえないナビやコネクティビティは、もうフラッグシップとして完全に物足りない。MAZDA3やCX-30が次の世代に移行しているのをみるとなおさらそう感じる。
MAZDA6 WAGON 25T S Package
全長×全幅×全高:4805mm×1840mm×1480mm
ホイールベース:2750mm
車重:1590kg
サスペンション:Fマクファーソンストラット式 Rマルチリンク式
エンジン形式:直列4気筒DOHCターボ
エンジン型式:PY-VPTS型
排気量:2488cc
ボア×ストローク:89.0mm×100.0mm
圧縮比:10.5
最高出力:230ps(169kW)/4250rpm
最大トルク:420Nm/2000rpm
過給機:ターボチャージャー
燃料供給:筒内燃料直接噴射(DI)
使用燃料:レギュラー
燃料タンク容量:62ℓ
WLTCモード燃費:12.4km/ℓ
市街地モード 9.3km/ℓ
郊外モード 12.6km/ℓ
高速道路モード 14.3km/ℓ
車両価格○431万7500円