スポーティな雰囲気も魅力だが、使い勝手で何より注目したいのは広くて快適な後席。さらに「ハイブリッドだから」という言い訳不要の広さとアレンジを変えたラゲッジスペースだ。大人のセダンとしての魅力急上昇である。




REPORT●工藤 貴宏(KUDO Takahiro)


PHOTO●中野 幸次(NAKANO Koji)/平野 陽(HIRANO Akio)


ASSISTANT●大須賀 あみ(OSUGA Ami)(身長163㎝)


※本稿は2020年3月発売の「新型アコードのすべて」に掲載されたものを転載したものです。

〈取材車のプロフィール〉EX

ホンダ・アコードEX

ボディカラー:ブリリアントスポーティブルー・メタリック


インテリアカラー:アイボリー 




※一部のカットは別の車両を撮影しています。
走行用バッテリー搭載の都合上、従来モデルはガソリン車に対して広さとアレンジが犠牲になっていた。しかしパッケージングが進化した新型は573ℓという文句なしの広さを確保。トランクスルーやアームレストスルーも備える。

運転席まわりの操作系では、ホンダ独自のボタン式シフトセレクターを組み込む。エアコンの温度調整は従来のボタン式からダイヤル式となり、一見逆戻りのようだが操作性は格段に向上した。見た目の先進性より扱いやすさを優先。

〈運転席まわり〉7インチ画面を組み合わせるメーター

アッパー面を低くして厚みを抑えたダッシュボードが開放的。ナビ画面は流行のタブレット風とする。センター部は空調とシートヒーターのスイッチだけとしてシンプルに。その下のリッド付き小物入れは、七代目オーナーだった筆者には懐かしい。

コントラストが大きくてクッキリと見えるメーター。右側の速度計をアナログ、 左側のパワー/チャージメーターとその中のマルチディスプレイを液晶とした独特 の仕掛けだ。液晶は7インチ高精細フルカラー液晶で、表示は切り替え可能。



右側はヘッドアップディスプレイと運転支援システム関係。ダイヤル併設の左はオーディオとメーター内画面切り替えだ。



ライトスイッチはオフ操作をしても手を離すと「AUTO」位置となるデフォルトオート式。オートライト義務化への対応だ。

シフトセレクターはホンダ独自の方式で、上級ハイブリッド車では定番化しているボタン式。「後退」は後方へ引くなど慣れると扱いやすい。

ヘッドアップディスプレイも採用。速度やシフトポジションに加え、パワー/チャージ計や道路標識、ナビの道案内なども表示できる。

一般車でいうエンジンブレーキに相当する、アクセルオフ時の減速度を4段階に調整できる減速セレクター。ハンドルを握ったまま操作できる。

運転席ドアポケットの前方にトランクリッドオープナーが組み込まれている。プッシュ式でひと押しするとリッドが開く。

2名分のシートポジションを保存できるメモリー機能。ドライバーごとにキーを使い分けることを前提に、キーごとに別の設定を保存可能だ。

助手席は4ウェイ、運転席にはさらに高さ調整とランバーサポートも加えた8ウェイの電動調整が可能だ。

インパネ右端に起動スイッチがあり、その下にはソナーなど運転支援装備や計器系の調整スイッチが並ぶ。

ドライブモードは「ノーマル」に加えて「SPORT」と「COMFORT」の3タイプ。他に「ECONモード」と「EV優先」も選べる。

パーキングブレーキは電動式。信号待ちでブレーキペダルから足を離しても停止状態を保持するホールドモード付だ。

【ECONモード】低燃費運転をサポートするモードで、エンジン、モーター、エアコンが能力控えめな低燃費重視の制御となる。

【COMFORT】快適性重視のコンフォートモード。パワーユニットやパワーステアリングのほか、ダンパーの味付けも変化する。

【SPORT】動力系はハイレスポンス、サスペンションはダイレクトで軽快な味付けとなり、音もスポーティに変化。

【安全支援情報】衝突軽減ブレーキを始め安全支援デバイスの作動状況が確認でき、設定も行なえる。
【注意力モニター】ハンドル操作に応じて居眠りや不注意運転を検知。音やハンドルの振動で注意喚起する。


【EVモード】できる限りエンジンを始動せず、バッテリーに貯めた電力でモーターを使って走るモード。
【カーナビ道案内】目的地を設定している場合は、矢印を基本とする簡易的な図形で進路を教えてくれる。


【燃費履歴】ドライブごとの平均燃費の記録を過去3回分表示し、走行状況や運転者による違いを表す。
【エコドライブ】急加速など運転操作に応じて車両アイコンが前後に移動し、省燃費運転をサポート。


〈ナビ・AV・空調〉無料で永年利用できる通信機能を内蔵したナビを標準装備

カーナビは全車に標準採用で、ダッシュボード中央に8インチと大きめの静電式タッチパネルディスプレイが設置される。通信端末を内蔵したコネクテッドカーで、詳細な渋滞情報の取得やそれを活用した高度なルート案内も可能。通信システムは通信料まで永年無料で使えるのも注目トピックだ。

ステアリングのボタンを押すと発話モードとなり、コマンドを音声入力することで一部機能のコントロールが可能。ヒット率も悪くない。
ナビに留まらず、オーディオなど多様な機能が組み込まれている。内蔵した通信機能を活用し、ロードサービスの依頼も行なえる。


オーディオはBluetoothやUSBでの再生にも対応し、スマホ内のコンテンツも再生可能。ただし、CD/DVDスロットは非搭載だ。
省燃費運転をサポートするアドバイスも内蔵されている。燃費向上には運転方法が重要で、具体的なアドバイスはとても参考になる。


緊急時に救急車や警察の手配をサポートする機能も搭載。エアバッグ展開時などは自動的に状況や位置情報が通信センターへ発報される。
車両の情報を表示できるのも特徴。写真は中央がハイブリッドシステムの作動状況、左右は平均燃費と航続可能距離のバーグラフだ。


表示できる燃費情報も充実している。平均燃費と評価を今回と前回のドライブにわけて示すほか、5分ごとに遡った燃費情報も確認できる。
リヤカメラの画角(見え方)は3段階に切り替え可能。これは最も広い範囲を映す状態で、左右から近付く人やクルマを確認しやすい。


こちらは真上から見下ろすような画像に変換したもの。障害物との距離を把握しやすいのが特徴だ。センサーで障害物を検知し注意喚起。

ノイズキャンセリングイヤホンの原理で静粛性を高めるアクティブノイズコントロール。ドライバー近くにもマイクを新設し精度をアップ。

空調は左右独立温度調整式のフルオート。温度調整をダイヤル式として操作時に手元を注視する必要をなくし、操作性をアップさせている。しかもそのダイヤルは絶妙なクリック感が心地良い。周囲のリングには温度を上げると赤、下げると青に発光する演出も盛り込んでいる。

インパネ中央下部には、「Qi(チー)」と呼ぶ規格の非接触充電器を搭載。置くだけで充電対応するスマホを充電可能だ。

インパネ中央下部にあるUSB端子は、充電のほかオーディオへの入力にも活用する。12Vシガーソケットも装備

センターコンソールボックス内にもUSB端子を装備。こちらもオーディオにつながっている。

センターコンソール後部には後席用のUSBアウトレットを内蔵。左右席それぞれで使えるように2個あるのが便利。

〈居住性&乗降性〉前席はスポーティなポジション。後席は格段に広くなり快適に



背もたれの張り出したサイドサポートが脇腹付近をしっかりサポートして姿勢を保持するシート。腰付近は高硬度高減衰ウレタン、お尻付近は高密度高反発ウレタンとして骨盤をしっかり支え、腿の裏(座面前部)はペダル操作性に配慮した低硬度ウレタンを採用。ビタッと姿勢が安定する。

シート高:500mm ステップ高:385mm

スポーティさに驚くほどの、低い着座位置。そのため乗り込む際は沈み込む感覚が強い。運転席は乗り降りの際に、自動的にシートが後方にスライドし足元を広げる。



とにかく広さに驚かされる。それもそのはずで、先代に対して足元で70㎜、膝まわりで50㎜も空間が拡大しているのだ。背もたれの角度も寝かせ気味にし、リラックス感を追及している。パッドのチューニングが絶妙で着座感も心地いい。

シート高:580mm ステップ高:385mm

前席に比べると着座位置が高くてその分乗降姿勢は楽になる。開口幅は広く、Bピラーと座面前端の距離も300㎜を超えるので足の出し入れがしやすい。

背もたれが大きい(従来比約50㎜も背が高い)ことを活かしたのがセンターアームレスト。全長が長い大型サイズで、よりリラックスできる。

後席にもシートヒーターを内蔵。背もたれ上部までしっかり温めてくれるのが自慢だ。

助手席は背もたれ右側にもシート調整スイッチが設置され、ドライバーや後席からも操作可能。

〈注目装備〉

【バニティミラー】運転席と助手席の両方にバニティミラーが組み込まれている。リッドを開けると鏡の横にあるライトが点灯する。

【スマートウエルカムランプ】乗降時に点灯するランプをドアハンドルの内側(フロント/リヤ)に内蔵。夜の乗り降りをサポートする。

【ドアロック連動給油口リッド】給油口リッドは運転席のオープナーで開けるのではなく、手で押すと開く仕掛けセルフ給油時に便利。

〈室内の収納スペース〉グローブボックスやセンターコンソールボックスはゆとりの大容量

❶保湿系の大型ボックスティッシュが収まるグローブボックス。全幅にゆとりのある車体だけあって、横幅も十分に確保されている。
❷ インパネ中央下部(センターコンソール最前部)にはリッド付きのボックスを用意。底面はワイヤレス充電器になっている。


❸ 頭上にある、メガネやサングラスの収納に便利なスペース。比較的大きめのサングラスも入る設計なのがうれしい。
❹ サンバイザーのカードホルダーはベルト式。一般的な裏側ではなく、使いやすいようにあえて表側に用意されている。


❺ センターコンソールのドリンクホルダーはアジャスター付きで細缶やカップもしっかりホールド。溝でつながりスマホも置ける設計。



❻ センターコンソールボックスはボックスティッシュが2個も収まるほどの大容量が自慢。スライド可能なトレーも内蔵している。

❼ 大きめのボトルも置けるフロントドアのポケット。収納スペースには厚みがあり、A5サイズの冊子も収納可能だ。
❽ 運転席と助手席の後ろに備わるシートバックポケット。A4サイズの本を入れても余裕がある大型サイズだ。


❾ 後席のドリンクホルダーはアームレストの前方に組み込まれる。姿勢を変えず手を伸ばすだけで飲み物に手が届く。
❿ 後席としてはドアポケットが大きめで、ボトルに加えてスマホなどの小物も収納できる。厚みがあり、収納力は大きい。


⓫ 後席アシストグリップ脇にはフックが組み込まれていて、コートやジャケットなどを、シワになりにくい状態で吊れる。

〈注目装備〉

【リヤドアサンシェード】強い日差しを和らげるためだけではなく、車内を見えにくくする効果もあるアイテム。引き上げて使うロール式だ。

【サンルーフ】なんと、サンルーフも標準装備。紫外線カットのスモークガラスで、スライドとチルトアップが電動で行える。

【ISO-FIXバー】後席に組み込まれるISO-FIXチャイルドシート取り付けバーは、覆っているカバーを外すと金具がよく見える。



【非接触式キー】キーは箱型でトランクリッドオープナーも備わる。2個付属し、それぞれに異なるシート調整位置設定を紐付けできる。

〈ラゲッジルーム〉ハイブリッドセダンを感じさせない573ℓの大容量スペースを実現

高さ:550mm 奥行き:1150mm

ハイブリッドだから狭くても仕方がない、というのが先代までのハイブリッドセダンの常識だった。しかし新型はそんな常識と決別。奥行きも深さも、通常のガソリン車と変わらない広さを実現したのだ。9.5インチサイズのゴルフバッグを4個積載可能。

最小幅:880mm 最大奥行き:2110mm

トランクスペース内部の設計は左右もいっぱいに広げてあり、とにかく容量を大きくするという狙いがよくわかる。さらに開口部の広いトランクスルーもあって便利だ。ただし後席格納は左右一体で、倒した後席部


は水平ではない。

トランクリッド開口部の大きさも自慢。先代に比べると幅は40㎜、下方向に25㎜も拡大されているのだ。開口部下端の地面からの高さは660㎜。リッドのアームは閉じた際に荷室内に張り出す形状だが、これは荷室容量を最優先したため。

後席アームレスト部分だけを貫通させる機能も採用。4名乗車と長尺物積載を両立でき、スキー板や釣りのロッドなどを室内に積む人に便利な機能だ。

ラゲッジルームの左右にフックがあり、耐荷重は3kg。ちょっとした小物を吊るすのにちょうどいい。

床下にはパンク修理キットやジャッキなど車載ツールが収まっているほか、三角表示板などちょっとした小物を置けるスペースが用意されている。

後席を倒すノブはトランク内にある。大きな荷物を積む時は、倒すためにわざわざ車内にまわる必要はない。このノブを引くとロックが解除され、背もたれを前に押せばシートバックが倒れる。

情報提供元: MotorFan
記事名:「 ホンダ・アコードの使い勝手を徹底チェック! ハイブリッド車の常識を覆す実用性能