サスペンションは、ZF製の電子制御連続可変ダンパーのセンサーサンプリング周波数を従来の2kHzから20kHzへと10倍に高めた。前後サスペンションのロワボールジョイントやブッシュ見直しとの相乗効果で、特に荒れた路面での接地性や制振性が向上しており、TYPE Rが目標としてきた「クルマとの一体感/ダイレクト感」がいっそう増しているのも新型のポイントだ。
インテリアではステアリングホイール表皮を全面アルカンターラに刷新。そしてシフトノブ形状は長らく使われてきた球状からティアドロップ型へ回帰し、ノブ傾きを瞬時に認識しやすくしている、これは高い旋回Gがかかっているときの操作ミスを防ぐことが目的だ。
これら改良が施された新型シビックTYPE Rは今夏発売に向けティザーサイトが公開中だが、さらに国内向けは200台限定となる軽量化仕様Limited Editionが今秋、販売されることも同時に発表された。
〈ANATOMY 01〉エンジン冷却性能向上を目的とした変更
フロントグリル内Hエンブレム左右の黒い部分の形状をモディファイして開口面積を拡大し、同時にラジエーターのフィン構造も変更して連続高負荷時のエンジン冷却水温度を大幅に下げることに成功。右のグラフを見ると、車速が同等まで上がっても冷却水温度は現行モデルよりも大幅に低下していることがわかる。〈ANATOMY 02〉最小限のモディファイで大きな効果を実現
前述の開口面積拡大はフロントダウンフォース減少を引き起こす。そこでエアスポイラーを下方向に拡大し(赤で示した部分)、左右両端にリブを追加して空力特性をコントロール。エクステリア担当の坂本氏は「風の抵抗で倒れないこと、また縁石接触時に破損せず倒れることを両立する剛性を厚み/形状で調整するなど苦労しましたが、この部品だけで狙った性能を確保したのはうまくできたと思います」と語る。〈ANATOMY 03〉操舵追従性を高めるためのサスペンションの改良
フロントサスのロワボールジョイントのフリクションを低減したほか、現行型と比べてわずかにキャンバーをネガティブ方向にするようロワアームを形状変更。ダンパーのセンサーサンプリング周波数を上げたことで減衰力制御がよりきめ細かくなり、うねった路面でのタイヤ接地荷重抜けが低減された。制振性も向上するため乗り心地にも貢献する。〈ANATOMY 04〉厳しい条件下での正確な操作性を追求したノブ形状
従来の球状からディアドロップ形状へと変更。柿沼氏のリクエストのもとインテリア担当の大胡氏が3Dプリンターで試作品を何種類も作成し、サーキットでのテストを繰り返した。同時にシフトフィールのさらなる向上を目指してノブ側にスチールウェイトを内蔵。「重量軽減を徹底するTYPE Rですが、ここだけは操る喜びの象徴であるMTフィールの進化に使いました」と柿沼氏。〈ANATOMY 05〉握り心地に配慮し内部構造も同時に変更
従来の本革巻きからアルカンターラ巻きへと変更するだけでなく、ウレタン素材の基部に巻きつける裏地を2枚追加。これは本革に比べてアルカンターラは厚みが半分程度となり、そのままではグリップ径が微妙に小さく違和感が出るのを防ぐため。巻込む工程が増えるためコストはアップするが、操作性を重視した。■Specifications(マイナーチェンジ前モデルの参考値)
全長×全幅×全高:4560mm×1875mm×1435mm
ホイールベース:2700mm
車両重量:1390kg
エンジン:K20C
排気量:1995cc
ボア×ストローク:86.0×85.9mm
圧縮比:9.8
最高出力:235kW/6500rpm
最大トルク:400Nm/2500-4500rpm
トランスミッション:6速MT
サスペンション:Fストラット/Rマルチリンク
タイヤ:F245/30ZR20 R245/30ZR20
JC08モード燃費:12.8km/ℓ