PHOTO/REPORT●北 秀昭(KITA Hideaki)
日本では、昔から作物やモノの運搬に大活躍してきたリヤカー。終戦直後の都市部では、瓦礫の片づけと復興のための運搬。都市部の下町では、ダンボールや廃品等の運搬。リヤカーは、日本人の生活に無くてはならない存在だった。
昨今の都内では、自転車にリヤカーを装着した宅配便に遭遇することが多い。また、東京・浅草や京都では、昔ながらの“力車(りきしゃ)”を観光用に活用。マッチョでイケメンのオニーサンたちが、観光客たちを乗せて、今日も元気に街を駆け巡っている。
前方にいる人間が、“荷台”を引っ張る構造のリヤカーは、工事現場などで繁用される『手押し車(一輪車タイプは猫車=通称・ネコとも呼ばれる)』に比べ、「荷重が前輪に負荷するため、直進時の安定性が良く、悪路でも走行安定性が高い」のがポイントだ。
筆者は実際に、リヤカー&猫車の両方を使って作業したことがあるが、利便性は圧倒的にリヤカーが上。一方、猫車はとにかく押すのがタイヘン。『体力の消耗具合』と『作業の効率性』を考えれば、圧倒的にリヤカーに軍配が上がった。
結論から言えば、可能。ただし、リヤカー(トレーラー)を牽引するバイクの排気量により、条件が異なるのがポイントだ。
ここでは「東京モーターサイクルショー2018」にも出展した、サイドカー・トライク・バイク用トレーラーのエキスパート『サクマエンジニアリング』のスーパーカブ110改を例に、『リヤカー(トレーラー)を牽引して一般道を走行する方法』を調査してみた。
昭和44年生まれの筆者が幼少の頃、スーパーカブ50に本体が木製のリヤカーを接続し、鉄くずを集める廃品回収業のオジサンを目撃したことがある。
また、ネットで「バイク、リヤカー」のキーワードで検索してみると、スーパーカブ50にリヤカーを接続してツーリングする人、原付スクーターに専用リヤカーを装着してサーフボードを牽引する人など、上手にリヤカーを活用するユーザーに遭遇する。
写真は『サクマエンジニアリング』が製作した、同社の「タイニーワイドトレーラー」を接続したスーパーカブ110改。「タイニーワイドトレーラー」は全長170cm、全幅84cm、全高70cmと、かなりのビッグサイズ。
『サクマエンジニアリング』によると、
「写真のスーパーカブ110を始め、原付1種(50cc未満)と原付2種(51cc以上 125cc未満)で牽引する場合は、タイニーワイドトレーラーにナンバープレートを装着(車両登録)する必要なし(※注1)。牽引免許など、特別な運転免許がなくてもOKです。ただし、牽引するタイニーワイドトレーラー(リヤカー)にも、別途、自賠責保険の加入が必要です」
とのこと。また、リヤカーへの積載重量は、法律で120kg以下に制定。最高速度は、原付1種(50cc未満)と原付2種(51cc以上 125cc未満)ともに、25km/hまでに制限される。
では、125cc以上のバイクで、タイニーワイドトレーラー(リヤカー)を牽引する場合は?『サクマエンジニアリング』の回答を要約すると、
・リヤカー同様、タイニーワイドトレーラー(リヤカー)も、ナンバーを取得しなければいけない
・灯火類の装着が必要(タイニーワイドトレーラーには装着済み)
・自賠責保険の加入が必要
・重量税が発生
・251cc以上の場合、(タイニーワイドトレーラーもリヤカーも)車検が必要
125cc以上のバイクで、タイニーワイドトレーラー(リヤカー)を牽引する場合は、原付1種(50cc未満)と原付2種(51cc以上 125cc未満)に比べて制約が多いのが特徴だ。
写真は『サクマエンジニアリング』が製作した、アドレス125に「タウサイドカー」と「コンパクトトレーラー」を装着したカスタム。「コンパクトトレーラー」は400Lの大容量。サイズは全長185cm、全幅94cm、全高70cm。一般道を走るための決まりごとは、上記のスーパーカブ110改と同じ。
原付1種(50cc未満)と原付2種(51cc以上 125cc未満)でリヤカー(トレーラー)を牽引する場合、都道府県によっては違法となるので注意したい。
例えば神奈川県の条例では、『交通のひんぱんな道路において、他の車両を牽引しないこと』と規定されている。
また、切れやすいロープなどでリヤカー(トレーラー)は接続することは、安全上の問題で不可。整備不良等で違反の対象となるので要注意だ。
もしも走行中に切れてしまい、周囲の交通や歩行者等を巻き込んだ物損事故、または人身事故を引き起こしたら、器物損壊、業務上過失傷害、業務上過失致死などの刑事責任に加え、多額の損害賠償を請求される可能性が高いことを覚えておこう。
●道路交通法
第二十三条 原動機付自転車の法第五十七条第一項 の政令で定める乗車人員又は積載物の重量、大きさ若しくは積載の方法の制限は、次の各号に定めるところによる。
一 乗車人員は、一人をこえないこと。
二 積載物の重量は、積載装置を備える原動機付自転車にあつては三十キログラムを、リヤカーを牽引する場合におけるその牽引されるリヤカーについては百二十キログラムを、それぞれこえないこと。
三 積載物の長さ、幅又は高さは、それぞれ次に掲げる長さ、幅又は高さをこえないこと。
イ 長さ 原動機付自転車の積載装置(リヤカーを牽引する場合にあつては、その牽引されるリヤカーの積載装置。以下この条において同じ。)の長さに〇・三メートルを加えたもの
ロ 幅 原動機付自転車の積載装置の幅に〇・三メートルを加えたもの
ハ 高さ 二メートルからその原動機付自転車の積載をする場所の高さを減じたもの
●道路運送車両の保安基準
(用語の定義)
第一条 この省令における用語の定義は、道路運送車両法 (以下「法」という。)第二条 に定めるもののほか、次の各号の定めるところによる。
十四 「付随車」とは、原動機付自転車によつてけん引されることを目的とし、その目的に適合した構造及び装置を有する道路運送車両をいう。
3 付随車の制動装置は、これを牽引する原動機付自転車の制動装置のみで、前項の基準に適合する場合には、これを省略することができる。
●道路運送車両の保安基準
〈第二節〉第94 条(連結車両の制動装置)
3 最高速度25km/h 以下の牽引自動車により牽引される被牽引自動車にあっては、連結した状態において、牽引する牽引自動車の主制動装置のみで第93 条第5項第2号及び第4号の基準に適合する場合には、主制動装置を省略することができる。
4 最高速度25km/h 以下の牽引自動車及び被牽引自動車の制動装置は、走行中牽引自動車と被牽引自動車とが分離したときに、それぞれを停止させることができる構造でなければならない。ただし、被牽引自動車(第93 条第6項第2号ただし書の規定の適用を受けるもの又は保安基準第12 条第2項若しくは前項に基づき主制動装置を省略したものに限る。)であって、連結装置が分離したときに連結装置の地面への接触を防止し、かつ、牽引自動車と被牽引自動車との連結状態を保つことができるものにあっては、この限りでない。
5 最高速度25km/h 以下の牽引自動車及び被牽引自動車(第93 条第6項第2号ただし書の規定の適用を受けるものを除く。)の主制動装置は、牽引自動車と被牽引自動車とを連結した状態において、別添93「連結車両の制動作動おくれ防止の技術基準」に定める基準に適合しなければならない。
●軽自動車税(軽自動車税に関する用語の意義)
第四百四十二条 軽自動車税について、次の各号に掲げる用語の意義は、それぞれ当該各号に定めるところによる。
一 原動機付自転車 道路運送車両法第二条第三項 に規定する原動機付自転車のうち原動機により陸上を移動させることを目的として製作したものをいう。
(軽自動車税の納税義務者等)
第四百四十二条の二 軽自動車税は、原動機付自転車、軽自動車、小型特殊自動車及び二輪の小型自動車(以下軽自動車税について「軽自動車等」という。)に対し、主たる定置場所在の市町村において、その所有者に課する。
●軽自動車税(軽自動車税の徴収の方法)
第四百四十六条 軽自動車税の徴収については、普通徴収の方法によらなければならない。
2 軽自動車税を徴収しようとする場合において納税者に交付すべき納税通知書は、遅くとも、その納期限前十日までに納税者に交付しなければならない。
3 市町村は、当該市町村の条例で、軽自動車等に当該市町村の交付する標識を附すべき旨を定めている場合においては、第一項の規定にかかわらず、当該市町村の条例の定めるところによつて、当該軽自動車等の所有者に標識を交付する際、証紙徴収の方法によつて、軽自動車税を徴収することができる。
●神奈川県道路交通法施行細則(自動車以外の車両による牽引の制限)
第10条 法第60条の規定により公安委員会が定める自動車及びトロリーバス以外の車両(以下この条において「車両」という。)によつてする牽引の制限は、次に掲げるとおりとする。
(1) 牽引するための装置を有する車両によつて牽引されるための装置を有する車両を牽引する場合を除き、他の車両を牽引しないこと。
(2) 交通のひんぱんな道路において、他の車両を牽引しないこと。ただし、自転車がリヤカーを牽引する場合は、この限りでない。
サクマエンジニアリング
http://www.sakuma-engineering.co.jp/