* 2020年3月現在、トヨタ調べ
本エアレス塗装機の導入により、トヨタグループの塗装工程におけるCO2排出量が7%程度削減できる見込み。加えて、塗装ブース(塗料を吹き付けるエリア)の下部にある未塗着塗料の回収装置を小型化することができるため、今後は塗装ラインのコンパクト化が可能となる。
トヨタは2015年に公表した「トヨタ環境チャレンジ2050」の一つとして「工場CO2ゼロチャレンジ」の実現に向けた取り組みを進めており、この一環として、エアレス塗装機を開発。まず、高岡工場と堤工場に導入を完了し、今後は他工場へ順次展開するとともに、トヨタグループ会社での導入やグループ外への技術供与も検討していく。
従来のエアスプレー式の塗装機は、主に空気の力で塗料を微粒化し、微粒化した粒子を空気で車体に塗着(エアスプレー塗装)する。このため、車体から跳ね返った空気によって塗料の粒子が吹き飛ばされることにより、塗着効率は60~70%程度と留まる。
これに対して新型のエアレス塗装機は、電気で塗料を微粒化(静電微粒化)するとともに、静電気を帯びた粒子が車体に引き寄せられるように塗着(静電塗装)。静電微粒化および静電塗装の技術により、微粒化された粒子の飛び散る量が大幅に減少し、高い塗着効率を達成している。
・塗料の吹き出し量を最適にした塗装機先端の円筒型回転ヘッド
静電微粒化技術は極少量の液体を吹き出す美容器具等で用いられている。今回はそれを車体塗装に応用した。具体的には、塗装機の先端にある塗料の吹き出し口を円筒型にし、その先端に約600本の特殊な溝を作るとともに、円筒型ヘッドの回転で生じる遠心力により、塗料を溝に流れ込ませた上で静電微粒化している。これにより、微粒化された塗料の粒子を静電気で車体に塗着させるという世界初の技術を開発した。
・近接塗装を可能にした高精度な電流制御
車体の凹凸により円筒型ヘッドと車体の距離が変動することで、電流が不安定となるが、本エアレス塗装機は電流のばらつきを常時監視して、電圧を自動に制御することで、円筒型ヘッドと車体の距離を約10cmに保ちながら、一定の電流で静電微粒化と静電塗装ができるようになった。これにより、塗料粒子の大きさのばらつきを回避することができ、高品質な塗装を実現した。