REPORT●北 秀昭(KITA Hideaki)
PHOTO●月刊モト・チャンプ/4MINIチャンプ
排気ガス規制により、1999年モデルをもって、ストリートはもちろん、ミニバイクレース『SP12クラス』の人気モデル「ホンダ NSR50」が生産終了。その代替モデルとして1999年(平成11年)11月に登場したのが、レース専用の「ホンダ NSR Mini」。
2001年(平成13年)にCB50系の血統を継ぐ、シリンダーヘッド&シリンダーを上方にレイアウトした、通称“縦型”の4ストローク50ccエンジンを搭載した「エイプ」が衝撃的にデビュー。
翌年の2002年(平成14年)、縦型4ストローク100ccエンジンを積んだ「エイプ100」が登場。国際サーキット『ツインリンクもてぎ』本コースでは、エイプ100をメインにした7時間耐久レース『DE耐』が大人気。仲間でワイワイと楽しく走れるこのレースは、レースに馴染みのない一般ユーザーにも、ミニバイクレースを身近なものとした。
2005年(平成17年)には、NSR50系の前後ディスクブレーキや、6本型キャストホイールを装備した縦型4ストエンジン搭載モデル「XR50モタード」「XR100モタード」がデビューし、『DF耐』の人気はさらに加速化。
また、同年には国際サーキット『鈴鹿サーキット』本コースで、4ストの排気量~124ccエンジンを対象にした『鈴鹿Mini-Moto 4時間耐久ロードレース』が開催。NSR50/80用フレームに加工を施し、縦型エンジンを搭載するカスタムも定番となるなど(RCV-miniというキットも登場)、ミニバイクレース=縦型4ストエンジンという図式が、徐々に浸透していった。
こういった時世を踏まえ、2005年(平成17年)12月、空冷4ストローク100ccエンジンを搭載したレース専用モデル「ホンダ NSF100」が“満を持して”デビュー。
手の込んだダクトを設けた、シャープなイメージのフロントカウルやシートカウルは、軽量で頑丈なFRP製。当時のホンダMotoGPワークスマシン「RC211V(ライダーはニッキー・ヘイデン)」のフォルムを踏襲しているのがポイントだ(ノーマルのカウル類は無塗装のホワイト)。
フレームはNSR Mini用をベースとしながら、ヘッドパイプ周り等に補強を実施し、2003年(平成15年)9月に発売されたモトクロスレーサー「CRF100F」 ベースの99.2ccエンジンを搭載。
エキパイにステンレスを採用したマフラーは、バンク角&エキパイ長を稼げる、レーサーならではのアップ型後方センター出しタイプを採用。NSF100のキャブレターは、CRF100Fと同じPDΦ22だが、最高出力は8.4馬力(CRF100Fは9.8馬力)に抑えられている。
NSF100は、レース専用ならではのオイルキャッチタンクを標準装備。キックスターターは省かれ、エンジン始動は押し掛けとなっているのもポイントだ。
乾燥重量は、2ストエンジンに比べて部品点数の多い4ストエンジンながら、73.6kg(2ストのNSR Miniは73kg)という軽量を実現。NSR Miniと同じく、狭いカートコースのタイトなコーナーでも、素早い切り替えしが可能だ。
イニシャルアジャスター付きのΦ30正立フロントフォーク、前後ディスクブレーキはNSR Miniと共通だが、前後ホイールは、1993年モデル以降のNSR50/80に採用された、6本スポーク型を装備。
赤いスプリングを採用したリアショックは、NSR Miniでも定評のあるリザーブタンク付きで、減衰圧調整とプリロード調整が可能だ。
シンプルなメーターは、RS125RやRS250Rに採用されている電気式タコメーター(1万4000rpm表示)を採用し、エンジン回転数をリニアに表示する。
NSF100は、“兄貴分”となる2ストレーサーのNSR Miniと並行発売されていたが、2009年(平成21年)にNSR Miniの販売が終了。現在、ミニバイクレースの12インチクラスでは、2ストのNSR50やNSR Miniから、4ストのNSF100が主流となっている。
NSF100はNSR Miniのフレームをベースとしながら、ヘッドパイプ周りに「さすがメーカーの仕事!」と納得させられる補強が随所に施されているのがポイント。
キャブレターは、見慣れた縦型エンジンに、ベースエンジンのCRF100Fにも採用の、PDΦ22を組み合わせ。レーサーなので、もちろんエアクリーナーは装着されていない(エアファンネル仕様)。
シートレールはエンド部分を太めのパイプで結合し、サイレンサーステーを固定する部分にもセンターステーを施している。
1999年(平成11年)、「NSR50は1999年モデルをもって生産終了」のアナウンスに続いて登場したのが、NSR50をベースにしたレース専用モデル「NSR Mini」。当初は「NSR50R」の名称で発売される予定だったが、最終的には「NSR Mini」となった。
NSR Miniのベースは、1995年型以降のNSR50。ただし12インチの前後ホイールは6本スポーク型ではなく、強度の高さからミニバイクレースでも人気のある3本スポーク型(NSR50には1992年モデルまで採用)を装備。詳細は写真をクリック!
●NSR Miniの主要スペック
型式:RS50 全長:1580mm/全幅:590mm/全高:935mm/乾燥重量:73kg/燃料タンク容量:7.5L/エンジン形式:水冷2サイクル単気筒49cc/ボア×ストローク:39.0mm×41.4mm/圧縮比:7.2/最大出力:7.2ps/10,000rpm/最大トルク:0.65kgm/7,500rpm/変速機:6速リターン/点火方式:CDI/タイヤサイズ:前100/90-12 後120/80-12/初期型(1999年モデル)の価格:26万5000円
CRF100Fは、前身モデルであるXR100Rのフレームを強化し、サスペンションのセッティングを変更した市販のオフロードレーサー。
パワフルな9.8psエンジンや、中口径のPD22φキャブレターはXR100Rと同じ仕様。
フロントサスペンションは、新設計のクッションストローク150mmテレスコピック式、リアサスペンションは、アクスルトラベル148mmのプロリンクを採用。 ホイールはXR100Rと同様、フロント19インチ、リア16インチに設定。
●ホンダ CRF100Fの主要スペック(2005年モデル)
全長:1853mm/全幅:786mm/全幅:1046mm/ホイールベース:1249mm/乾燥重量:73kg/燃料タンク容量:5.5L/エンジン形式:空冷4サイクルOHC単気筒99.2cc/ボア×ストローク:53.0mm×45.0mm/圧縮比:9.4/最大出力:9.8ps/9000rpm/最大トルク: 0.81kgm/7000rpm/点火方式:CDI式マグネット点火/変速機:5速リターン/クラッチ:手動式/タイヤサイズ:前70/100-19 後90/100-16/当時の価格:24万1500円
“ヨシムラジャパン”といえば、鈴鹿8耐を始め、数々のロードレースを制してきたバイクパーツメーカー。写真は2007年に開催された『鈴鹿Mini-Moto 4時間耐久レース』のオープンクラスを制した、ヨシムラジャパンが手掛けたフルチューン仕様のNSF100改(カウルを取り外した状態)。
パーツは125ccボア&ストロークアップキット、ヨシムラミクニTMR-MJN28キャブレター、レーシングチタンサイクロンマフラー、強化クラッチキットなど、すべてヨシムラジャパン製で構成。フロント部にダクトを装着してラムエアを導入するなど、独自のカスタムも施されている。
モデル名:NSF100
型式:HR01
全長×全幅×全高:1,556mm×595mm×911mm
ホイールベース:1,074mm
最低地上高:123mm
シート高:681mm
キャスター:23°36′度
乾燥重量:73.6kg
エンジン形式:空冷4サイクル 単気筒
総排気量:99.2cc(cm3)
ボア×ストローク:53mm×45mm
最高出力:6.2kw/9,500rpm(8.4ps/9,500rpm)
最大トルク:7.4N・m/7,000rpm(0.75kgf・m/7,000rpm)
キャブレター:22mm
始動方式:押し掛け式
点火方式:CDI
変速機:5速
ブレーキ:
前 シングルディスク
後 シングルディスク
タイヤサイズ:
前 100/90-12 48J
後 120/80-12 54J
サスペンション:
前 テレスコピック
後 スイングアーム式