2005年にフォルクスワーゲンが発表した「ダウンサイジング過給」コンセプトは、当時の欧州燃費測定モードNEDCで高い数値を獲得できることからまたたく間に主流となった。それから15年後のジャーマン3のガソリンエンジンの現状と、その未来を探る。

 出力確保だけではなく排ガス対策に必須であることから、現代の自動車用ディーゼルはほぼ100%が過給エンジンとなった。いっぽうで日本/北米自動車メーカーのガソリンエンジンはまだまだ自然吸気ユニットが多数、存在している。しかしフォルクスワーゲン、メルセデス・ベンツ、BMWのジャーマン3のガソリンエンジンはいまや、自然吸気を見つけることが難しいほど「過給ありき」となっている。

フォルクスワーゲン最初のTSIエンジン。ターボに加えてスーパーチャージャーも備える。

 この流れを生んだのは、2005年にゴルフⅤのモデルライフ途中で追加されたTSIエンジンの誕生であることは間違いない。排気量を小さくすることで熱損失や機械的な抵抗を低減し、それによって低下する出力を過給によって車格に見合ったものまで ”補う” という「ダウンサイジングコンセプト」は各社が追従することとなった。



低回転域高負荷域はスーパーチャージャーが過給を担当し、回転数の上昇にともないターボが引き継ぐ制御だった。

 最初のTSIユニットはターボとスーパーチャージャーを併用していたが、このツインチャージャー仕様は比較的早い段階で姿を消す。従来よりも小型のターボを使うことでターボラグをより少なくし、実用上問題のない性能を獲得するシングルチャージャーが登場、現在に至る主流となった。2.0ℓ4気筒自然吸気なら1.5ℓ前後の排気量を過給することで代替が可能。さらに3.0ℓ V型6気筒自然吸気なら2.0ℓ直列4気筒過給でカバーでき、気筒数も減るのでそのメリットはさらに大きくなる。



メルセデス・ベンツE200は1.5ℓ直列4気筒ターボを搭載。

 こうしてジャーマン3はディーゼルだけではなくガソリンエンジンもターボ過給を推し進めた。ターボのサイズと制御の違いで出力バリエーションを生み出しやすいこともあり、自然吸気エンジンはほぼ消滅。日本、そして北米メーカーとは異なる独自の「ガラパゴス化」をしているといってもいいだろう。



 しかしいっぽうで高価格帯のモデルに搭載する大排気量の高性能ユニットも多数取り揃え、純然たるヒエラルキーをパワートレーンのラインナップに見せつけるのもジャーマン3の特徴だ(フォルクスワーゲンはアウディがそのポジションにつく)。速度無制限区間がいまなお残るアウトバーンの存在、そして巨大な北米マーケットを考慮してのことだろう。



2010年と2020年のメルセデス・ベンツの主なエンジンラインナップ比較。直4、V6自然吸気は消滅した。

 しかし、NEDCモードからWLTCモード、そしてRDE試験などによってダウインサイジングコンセプトは曲がり角を迎えつつある。厳格化される排ガス浄化や、避けられない電動化へ向けて「ハイブリッド前提のエンジン」をエンジニアリング会社は提案し始めた。こうした独メーカーのガソリンエンジンの現状、そして未来を2月15日発売のモーターファン・イラストレーテッドvol.161では特集した。ぜひご一読いただきたい。

情報提供元: MotorFan
記事名:「 自然吸気はほぼなくなり、過給ありきで95g/km規制へどう挑むかを探る