日本を守る陸・海・空自衛隊には、テクノロジーの粋を集めた最新兵器が配備されている。普段はなかなかじっくり見る機会がない最新兵器たち。本連載では、ここでは、そのなかからいくつかを紹介しよう。今回は陸上自衛隊の最新戦車、10式戦車だ。


TEXT&PHOTO◎貝方士英樹(KAIHOSHI Hideki)

従来の戦車では不可能だった射撃が正確に行なえる

車体を左右に激しく振り回しながら走行し主砲を射撃する10式戦車。通称スラローム射撃は10式だけが実行できる。富士総合火力演習での実弾射撃だ。写真/貝方士英樹

 陸上自衛隊の10式戦車は最新の国産戦車で、新世代の機甲戦力だ。製造メーカーは三菱重工。10式戦車は「攻・走・守」が高いレベルで具現化している戦闘車両だが、本車最大の特徴は攻撃力、射撃性能の高さにある。




 高精度な射撃統制装置により、左右にスラローム走行しながら射撃する蛇行射撃、砲塔を後ろ向きにして射撃する背面行進射撃など、従来の戦車では不可能だった射撃が正確に行なえる。しかも最初の一発、初弾の命中率が高い。射撃統制装置も三菱重工が開発したものだ。これは照準装置や主砲の安定装置などから構成されるシステムが高性能な証だ。メカニズムが相互に連携し効果的にコントロールする能力が高いことを示す。

10式戦車は情報共有力に優れる。たとえば1両の10式が索敵した位置情報を他車へ送り、別の10式がその情報を基に攻撃するなどのネットワーク戦闘が行なえる。写真/貝方士英樹

 脚周りも高性能だ。車体がどんな姿勢であっても照準をキープしたまま走行し続け、射撃できる。たとえるなら、ラリーカーのように最速・最適ラインで高速進入し旋回、立ち上がりながら主砲を射撃、目標に当てることができる。急発進や急制動、急旋回も可能だ。それぞれの車体姿勢で射撃し、命中させる。




 こうした高精度射撃の一端を、毎年夏に行なわれる富士総合火力演習で披露している。90式戦車より軽量とはいえ、総重量44トンの10式戦車が前後左右、自由自在に車体を振り回し、その間、主砲は目標を捉えたまま微動だにしない。正確に言えば車体が縦横無尽に動いている間、照準は目標を捉え続け、細かく変化し続けている。そして射撃すれば当てるのだ。メカニズムが高性能な上に、それを操る「戦車乗り(機甲科隊員)」の練度も高いといえる。

陸上自衛隊第1師団隷下の機甲科部隊、第1戦車大隊(静岡県駒門駐屯地)に配備された10式戦車。写真/貝方士英樹

 国産戦車として初めてC4Iシステムを搭載したのも本車だ。C4Iとは「Command Control Communication Computer Intelligence」を指し、司令部・指揮官の意思決定を支援するための情報取得、作戦を計画・指揮・統制するための情報処理システムのこと。車両用の広帯域多目的無線機を搭載し、指揮所や味方部隊とリアルタイムで情報共有が可能になった。絶えず変化する戦場の状況を、常時多角的に把握することができ、戦闘を有利に進めることができる。また、1両の10式戦車が索敵した敵の位置情報を共有した他の10式戦車が、その位置情報をもとに攻勢・射撃することも可能だ。

情報提供元: MotorFan
記事名:「 背面行進射撃もできる! 自衛隊最新国産戦車「10式戦車」の実力