2019年に実用化・製品化された技術で、いままでにない視点で開発された技術、実用化され自動車業界に多大な影響を与えたと思われる技術を選考対象しています。
選考過程はMFi 編集部と選考委員が2019年中に発表された自動車技術のなかからノミネートに値する15の技術を選出しました。
その、15のノミネート技術について紹介しますので、あなたの、もっとも評価する技術をひとつ選んで投票ください。
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新型タント、ロッキーに採用されたギヤ駆動モードを備える独創的発想のCVT
後退用の遊星歯車機構を利用し、クラッチでエンジン軸との締結をコントロールするスプリットギヤを用いて状況に応じベルト+ギヤ駆動モードに移行する世界初の技術を採用した画期的なCVT。発進から低速域ではベルトとプーリーによる通常のCVTと同じ変速を行ない、エンジン軸と駆動軸の回転数が一致したタイミングでスプリットギヤのクラッチを締結してベルト+ギヤ駆動モードに移行。駆動力の約40~90%が歯車伝達されるため、高速域での伝達ロスは約8%も低減され、レシオカバレッジも従来の5.3から7.3まで拡大した。
センター部分と両サイド側でビーム径を変えた独自の構造を新工法で実現
先代までのマルチリンク式からトーションビーム式に変更された新型MAZDA3のリヤサスペンションに採用。横曲げ剛性を高めるためにパイプ径を大きくしたい両端とロール剛性のためにある程度のサイズの径に留めたいセンター部分を両立させるために、工法を改めて理想の形状を実現した。両端は広くセンター部は狭い平板を最初にU字型にプレスして曲げ、その後にパイプ状に溶接することで従来工法では難しかった“ラッパ状”の形状を実現。操作に対する応答性向上に効果的なタイヤ取付部の剛性を効率よく高めることに成功した。
日産が初めて開発した軽自動車用パワートレーン
三菱自動車との合弁会社NMKVでマネジメントが行なわれる両社の軽自動車はこれまで開発を三菱が行なってきたが、2019年3月に発表された新型デイズ/eKワゴン・eKクロスでは日産が初めて開発を担当。ルノーグループが新興国向け小型車用として開発したBR08系の流れを生汲んでおり、660ccより排気量が大きなエンジンをベースとするため重量的には不利だが高い骨格剛性を生かしNVH性能向上に留意。ツインインジェクターやピストン裏のヒートシンク状リブなどで耐ノッキング性を高め、自然吸気では12.0という高圧縮比を得ている。
超高性能のストッピングパワーと一般道の低G域で扱いやすい特性を両立
フロント410mm、リヤ390mmという世界最大級のサイズのローター径を誇るGT-R NISMO 2020年モデル用ブレーキシステム。サーキットなどでの高速域、高負荷では従来よりもペダルストロークあたりの減速度を大きく高め絶対的な効きを向上させている。そのうえでローター温度が低くペダルストロークも浅い一般道でのコントロール性も犠牲にしない特性を目指し、パッドの摩擦材見直しも合わせて新開発された。キャリパーはピストン配置を最適化したうえで、1000度を超えるローター温度の影響による退色が少ないイエローに塗装される。
後輪トルクを左右独立で制御し旋回性アップ、FF時はディスコネクト機構で損失を低減
オンデマンド式4WDの“曲がりにくい”“燃費が悪い”という弱点を解消するために、走行状況に応じて前後トルクの配分だけでなく後輪左右のトルクを別々に制御する「トルクベクタリング機構」と、4WD走行が不要と判断したときには後輪への動力伝達系を切り離す「ディスコネクト機構」を採用。後輪への駆動力切り離しはラチェット式ドッグクラッチで行なっており、この機構が世界初となる。新型RAV4のガソリンエンジン搭載車に設定されており、オンロードでの快適なコーナリング、低μ路のテールスライド減少などの効果を発揮。
高速道路の同一車線内でハンズオフでの運転が可能に
2016年に発表された同一車線維持のためのドライバーサポート機能プロパイロットを大幅にアップデートし、定められた条件下ではステアリングから完全に手を離した状態の「ハンズオフ」を実現。3つのカメラを組み合わせたトライカムやレーダー、ソナーを用いて車両周辺360度をセンシングし、3D高精細地図データも併用して正確な自車位置を把握する。前方に遅い車両が走行していて追い越しが可能とシステムが判断すると音と表示で提案、ステアリングに手を添えてスイッチ操作を行なうと車線変更→追い越し→車線復帰も行なう。
三角形にすることでカムカバーを廃止しエンジン幅を狭めて重量を低減
一般的なエンジンではヘッド部分の合わせ面は4つあるが、これをひとつ減らしてシリンダーヘッドを三角形とした独創的な設計。高さ方向のサイズは大きくなるものの吸気側-排気側の幅は大幅に小さくすることができ、カムシャフト支持面を斜めにすることでそれぞれのポートが短くなってヘッド全体がコンパクトになって重量低減も可能。ダイムラーとルノーが共同開発した1.3l4気筒ターボエンジンの採用技術でメルセデス・ベンツAクラス/Bクラスや、まもなく日本市場に上陸予定の新型ルノー・ルーテシアに搭載される。
LEDからの光を回転するブレードミラーに照射し配光をより細かく制御
レクサスRXのマイナーチェンジで採用された、光源となるLEDからの光を高速で回転する2枚のブレードミラー(リフレクター)に照射し、光の残像効果を利用して前方を照射するという世界初のシステム。12個のLEDの点灯/消灯を適切なタイミングでコントロールしてしてブレードミラーと組み合わせることで、300個のLEDを使用するのと同等の高精細な配光を実現できるとしている。ハイビームの照射範囲を拡大しつつ対向車や前走車への遮光範囲をきわめて小さくできるため、夜間の歩行者などの早期認識に効果を発揮する。
鋳造用砂型をデータから直接製造し従来では不可能だった複雑な冷却水経路を実現
車体内装/外装の小型部品などに積極的に3Dプリンター製造によるパーツを採用しているBMWが、新たな分野にこの技術を導入。新型X3M/X4Mに搭載されるS58型直列6気筒ターボエンジンの、ウォータージャケットを鋳造する際に使う砂型中子(コア)を3Dプリンターを用いて設計データからダイレクトに製造している。従来の木型を使う工法では実現することができなかった複雑な形状のコア製作が可能となり、冷却性能を高めつつ重量も低減。375kW/600Nmという高いS58型エンジンの動力性能を側面から支えている。
車速や位置情報、運転操作記録だけでなくインカー動画との自動同期など多彩な機能を装備
新型スープラの販売店オプションとして設定されたこのレコーダーは装着時に新設する専用ライン経由で多くの情報を記録。アクセル/ブレーキ/ステアリング操作や、エンジン回転数、シフトポジション、車速、加速度などの各種センサーの値、車両の位置/方位情報をSDカードに書き出すことができる。さらに専用アプリを使えば、推奨アクションカムで録画したインカー動画などとデータを簡単に同期させ、ひとつの画面で視聴できる。スポーツ走行だけでなく、コネクテッドカーの新しい可能性も感じさせるユニットだ。
安定燃焼領域を拡大させる複数回点火のプラグ放電を1/1000秒レベルでコントロール
新型タントに搭載されるKF型エンジンは、日本初のマルチスパーク(複数回点火)によってシリンダー内での燃焼速度を早めノッキングを抑制。1発目のプラグ放電で発生した火炎核に2発目の放電でさらにエネルギーを供給することで火炎伝播への早期移行を促している。小型で高いエネルギーを発生させるためのコイルはダイヤモンド電機によるもの。高密度構造と、巻線仕様/スイッチング素子の最適化によってサイズ拡大を抑制し、体積あたりの出力エネルギーは世界トップクラスを誇っている。
温めたウォッシャー液を魔法瓶構造で保温してウインドウの霜取り時間を短縮
エンジン稼働中にヒーターでウインドウォッシャー液を加熱し、エンジン停止後は独自の保温構造によって温度低下を抑制。融雪に必要な温度を約12時間保つことで、翌朝の運転開始時のフロントウインドウの霜を短時間で取り除くことができアイドリング時間短縮などのメリットも生み出す。ウォッシャータンクとノズルの間に設置し、保温部分の容量は250cc。新型カローラにオプション設定される装備で、自動車用バックミラーの国内トップメーカー、村上開明堂が開発、生産を担当する。
ドイツのベンチャー企業と共同開発したコンパクトなEVトラックを導入
ヤマト運輸はCO2削減や住宅街での騒音低減が実現できる電気自動車の優位性に着目し、ドイツのアーヘン工科大学の教授によって2010年に設立されたEVベンチャー企業「ストリートスクーター」と日本での宅配業務に特化した小型トラックを共同開発、2019年度中に500台を稼働させると発表した。最大積載量は600kgで車体にはサビや傷にも強い着色プラスチックを使用し、システムオフで自動的にパーキングに入る安全装備、リアルタイムで運転状況や故障情報をクラウドに反映できるといった新技術も数多く盛り込まれている。
縁石側面に独自の形状を採用することでバス亭のバリアフリー化をさらに向上
ブリヂストンはバスを縁石に寄せやすく、タイヤとの接触時の影響を緩和する形状を備えたバス停バリアレス縁石を開発、岡山市内のバス停に配備した。適度に傾斜させた路肩スロープで縁石に安定して寄せやすい形状とするだけでなく、タイヤ以外の車体部品が接触しにくくする縁石の段差や、大型・小型バスどちらでも効果の大きい形状を採用。この形状の開発には公益社団法人日本交通計画協会の知見も融合されている。ブリヂストンはタイヤのサイド部分が縁石との接触で摩耗した場合、ゴムを追加接着できるバス用タイヤ技術も研究中だ。
高出力密度をより高めることで電気自動車の動力性能アップに貢献
昨年3月に欧州で販売がスタートしたアウディ初の量産電気自動車e-tronに、日立オートモティブシステムズが新開発したインバーターが採用された。新世代のIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor:絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ)を用い、小型かつ高効率の両面冷却タイプのパワーモジュールを内蔵することで、同社の従来型インバーターと比較して出力密度は約160%にまで高められている。さらに同社は昨年10月、800V対応の高電圧・高出力インバーターの量産も開始。電動パワートレーン製品のさらなる強化を推進中だ。