これに対してGRヤリスは
RZ First Editionが396万円
RZ High-performance・First Editionが456万円だ
である。この価格を見て「ヤリスなのに高い!」と思った人はいるだろうか?
まず、「ヤリスなのに」の前提が間違っている。「ヤリス・ベースなのに」でもまだ正しいとは言えない。
GRヤリスは、ヤリスとはまったく別のモデルだと考えたほうがいい。
ヤリスは、ヤリスが初出となるTNGAのGA-Bプラットフォームを使うが、GRヤリスは「フロントは新型ヤリスで初登場したGA-BでリヤはGA-Cプラットフォームを使う」のだ。
しかも、サスペンションはフロントこそマクファーソン・ストラット式を踏襲するがリヤはGA-Cがトーションビーム式なのに対してダブルウィッシュボーン式をGRヤリス用に開発している。
つまり、GRヤリスのプラットフォームは「専用設計」なのだ。
ボディは、ボンネット、ドア、トランクリッドをアルミ合金製とし、ルーフはCFRP(カーボン)素材を使う。
トヨタは、SMC製法のCFRPについては、これまでもプリウスPHEVのトランクリッドやレクサスLCのドアインナーなどで実績を積んでいる。どちらも三菱ケミカルの素材を使っているが、今回のヤリスGRのルーフがどのサプライヤーの素材を使っているかは不明だ。いずれにせよ、SMCはオートクレーブで成形するものと違ってハイサイクル成形が可能。これおヤリスGRの「低価格」に貢献しているはずだ。とはいえ、通常のスチール製ルーフと比較すれば「非常にハイコスト」なことは間違いない。
1.6ℓの直列3気筒ターボは、トヨタの新エンジンシリーズ「ダイナミックフォース」エンジンの1.5ℓ直3(M15A型)のボアアップ+過給版かと思ったら、「まったくの専用設計」だという。
ちなみに、GRヤリス(欧州仕様)の性能は
0-100km/h加速が5.5秒以内
トップスピードは230km/hでリミッター作動
と発表されている。
パワーウェイトレシオは
GRヤリス:4.71kg/ps(車重1280kgに対して274ps)
ヤリス1.5X(FF 6MT):8.17kg/ps(車重980kgに対して120ps)
トルクウェイトレシオ
GRヤリス:3.46kg/ps(車重1280kgに対して370Nm)
ヤリス1.5X(FF 6MT):6.76kg/ps(車重980kgに対して145Nm)
となっている。
4WDシステムの詳細については、また別にレポートするが、じつに凝ったシステムを開発した。
トランスミッションは、基本はアイシン製6速MT。東京オートサロン会場には「GRヤリスCVTコンセプト」なるクルマも展示してあった。中をみると2ペダル仕様になっていた。いずれはCVTモデルも追加されるのだろう。おそらく、ここでも「普通のCVT」ではないGRらしいCVTを載せてくるはずだ。
というように、GRヤリスの
RZ First Editionが396万円
RZ High-performance・First Editionが456万円だ
というのは、爆安と言っていい。
とくにFirst Editionは、GRヤリスが「モータースポーツ用のホモロゲーションモデル」であることにも関係して、あえてリーズナブルな価格設定にしてある可能性もある。
WRカーのホモロゲーションを取得するには、ベース車となるモデルが連続した12カ月間に2500台以上車種全体で2万5000台以上の生産台数が必要だ。GRヤリスが「ヤリス」ならまったく問題ないが、「GRヤリス」として2万5000台となるとやはりある程度量販したい。今回のGRヤリスの国内での販売目標は年間1万2000台だという情報もある。
そういうことを勘案すると、もしかしたらFirst Editionはお買い得なのかもしれない。
RZ First EditionにするかRZ High-performance・First Editionにするか? High-performance・First Editionには、トルセンLSD、冷却スプレー機能付き空冷インタークーラー、BBS製鍛造アルミがつく。冷却スプレー機能付き空冷インタークーラーは、より「競技向け」の装備といえる。60万円の価格差はかなりあるから、ここは「バーゲン価格の396万円の「RZ First Edition」を筆者なら選ぶと言っておこう。