東京オートサロンでワールドプレミアされたトヨタGRヤリス。期待を上回るスペックと期待通りの「低価格」で登場した。「396万円が低価格?」と思う人もいるだろうが、GRヤリス、スペックを読み解けば読み解くほど「バーゲンプライス」だとわかってくる。

価格以上の価値がありそう! GRヤリス

フロントマスクを見ただけでまったく違うモデルであることは一目瞭然。全幅はGRヤリスが1805mmヤリスが1695mm。トレッドはGRヤリスはフロントトレッド:1530mm リヤトレッド:1560mm、ヤリス(1.5X)が1490mm×1485mm

 トヨタ新型ヤリスの価格は、1.5ℓエンジン搭載の6MTモデルならXで154万3000円で買える。4WDモデルがいいならハイブリッドXグレードで224万1000円だ。


 これに対してGRヤリスは


RZ First Editionが396万円


RZ High-performance・First Editionが456万円だ


 である。この価格を見て「ヤリスなのに高い!」と思った人はいるだろうか?


 まず、「ヤリスなのに」の前提が間違っている。「ヤリス・ベースなのに」でもまだ正しいとは言えない。


 GRヤリスは、ヤリスとはまったく別のモデルだと考えたほうがいい。

サイドビュー比較。GRヤリス全長×全幅×全高…3995×1805×1460mm ホイールベース…2558mm ヤリス全長×全幅×全高…3940×1695×1500mm ホイールベース…2550mm

重ね合わせてみると、両モデルがまったく違うことがわかる。

プラットフォームからして違う

GRヤリスのベアシャシー

 ヤリスは、ヤリスが初出となるTNGAのGA-Bプラットフォームを使うが、GRヤリスは「フロントは新型ヤリスで初登場したGA-BでリヤはGA-Cプラットフォームを使う」のだ。


 しかも、サスペンションはフロントこそマクファーソン・ストラット式を踏襲するがリヤはGA-Cがトーションビーム式なのに対してダブルウィッシュボーン式をGRヤリス用に開発している。


 つまり、GRヤリスのプラットフォームは「専用設計」なのだ。




 ボディは、ボンネット、ドア、トランクリッドをアルミ合金製とし、ルーフはCFRP(カーボン)素材を使う。

ルーフはSMC製法によるCFRP

 トヨタは、SMC製法のCFRPについては、これまでもプリウスPHEVのトランクリッドやレクサスLCのドアインナーなどで実績を積んでいる。どちらも三菱ケミカルの素材を使っているが、今回のヤリスGRのルーフがどのサプライヤーの素材を使っているかは不明だ。いずれにせよ、SMCはオートクレーブで成形するものと違ってハイサイクル成形が可能。これおヤリスGRの「低価格」に貢献しているはずだ。とはいえ、通常のスチール製ルーフと比較すれば「非常にハイコスト」なことは間違いない。

エンジン形式:直列3気筒DOHCターボ エンジン型式:G16E-GTS 排気量:1618cc ボア×ストローク:87.5mm×89.7mm 圧縮比:10.5 最高出力:272ps(DIN表示で261hp) 最大トルク:370Nm

 1.6ℓの直列3気筒ターボは、トヨタの新エンジンシリーズ「ダイナミックフォース」エンジンの1.5ℓ直3(M15A型)のボアアップ+過給版かと思ったら、「まったくの専用設計」だという。




 ちなみに、GRヤリス(欧州仕様)の性能は




0-100km/h加速が5.5秒以内


トップスピードは230km/hでリミッター作動




 と発表されている。




パワーウェイトレシオは


GRヤリス:4.71kg/ps(車重1280kgに対して274ps)


ヤリス1.5X(FF 6MT):8.17kg/ps(車重980kgに対して120ps)




トルクウェイトレシオ


GRヤリス:3.46kg/ps(車重1280kgに対して370Nm)


ヤリス1.5X(FF 6MT):6.76kg/ps(車重980kgに対して145Nm)




 となっている。




 4WDシステムの詳細については、また別にレポートするが、じつに凝ったシステムを開発した。




 トランスミッションは、基本はアイシン製6速MT。東京オートサロン会場には「GRヤリスCVTコンセプト」なるクルマも展示してあった。中をみると2ペダル仕様になっていた。いずれはCVTモデルも追加されるのだろう。おそらく、ここでも「普通のCVT」ではないGRらしいCVTを載せてくるはずだ。



フロントブレーキ径は356mmで4pot リヤは297mmで2pot

 というように、GRヤリスの


RZ First Editionが396万円


RZ High-performance・First Editionが456万円だ


 というのは、爆安と言っていい。




 とくにFirst Editionは、GRヤリスが「モータースポーツ用のホモロゲーションモデル」であることにも関係して、あえてリーズナブルな価格設定にしてある可能性もある。


 WRカーのホモロゲーションを取得するには、ベース車となるモデルが連続した12カ月間に2500台以上車種全体で2万5000台以上の生産台数が必要だ。GRヤリスが「ヤリス」ならまったく問題ないが、「GRヤリス」として2万5000台となるとやはりある程度量販したい。今回のGRヤリスの国内での販売目標は年間1万2000台だという情報もある。


 そういうことを勘案すると、もしかしたらFirst Editionはお買い得なのかもしれない。




 RZ First EditionにするかRZ High-performance・First Editionにするか? High-performance・First Editionには、トルセンLSD、冷却スプレー機能付き空冷インタークーラー、BBS製鍛造アルミがつく。冷却スプレー機能付き空冷インタークーラーは、より「競技向け」の装備といえる。60万円の価格差はかなりあるから、ここは「バーゲン価格の396万円の「RZ First Edition」を筆者なら選ぶと言っておこう。







情報提供元: MotorFan
記事名:「 知れば知るほど爆安価格。トヨタGRヤリスはヤリスとはまったく違うクルマ