REPORT &PHOTO⚫️近田 茂(CHIKATA Shigeru)
2018年の復活以後も、好調な販売実績をキープするセロー250。それぞれの自分スタイルで気軽に扱える事に加えて、自然の懐に入り込める機能的な魅力を持つ。いわゆるマウンテントレールとして根強い人気を誇っている。
そんなセロー250も今回のマイナーチェンジ、2020年1月15日の発売をもって最終仕様となった。当モデルをもって生産を終了すると公表されたのである。通常生産の終了報告は人知れずが一般的。ひっそりと、いつの間にか行われるのが常だが、流石に多くのユーザーを魅了してきたロングセラーモデルだけに、最後の需要喚起も含めて多くのセローファンへ、新車購入できる機会が残り少なくなったことを真摯にお知らせした形となった。
生産終了の真意を尋ねると、今後訪れるさらに厳しい規制の数々に対応するには現状に手を加える程度の熟成進化ではクリアすることが困難と判断したとの事。レギュレーション上、販売が許される限り、またユーザーニーズが有る限りは生産されるが、次のモデルは現在用意されていないというのが本当のところだ。
ユーザー側としては、これほど多くの人に愛されたセローが消えゆくとは信じられない気持ちである。ただ、冷静に考えてみれば、セローが長きにわたって売れ続けた事実と、その要因を熟知しているヤマハが、セローで培ってきたノウハウが捨て去る訳はないのである。
ヤマハ関係者から次期モデルについての情報が漏らされることはない。しかしセローに限らず、常々商品開発に励んでいることは事実。今バイクが人気上昇中として話題の東南アジア市場では、125ccから250ccクラスに多くの魅力的モデルが投入されている。
かつての日本を思わせるそんな活況ぶりを横目で睨めば、こういった海外市場のモデルと協調すれば、セローを継投する新製品の開発は決して夢物語では無いと思えてくる。例えば原点回帰の軽量モデル。新世代セロー、あるいは別のブランニューで投入する戦略も悪く無い。可能性としては十分に有り得る話ではないだろうか。!? ……と尋ねてみると、何かしら検討中であることは間違いと答えてくれた。
もちろんそれが何かは判然としないし、ましてや次期セローなんてまだ影も形も無いのは間違いない。ただ筆者は、ヤマハならまた何かやってくれると確信した。当たり障りのないそんな回答の背景に、新機種開発への新たな情熱が、垣間見れる思いがしたからである。
セロー人気の中でも侮れない存在がツーリングセローである。ワイズギアで用意されている多くのアクセサリーをセットでオプション装備したものだが、軽〜くアドベンチャーツアラー風に変身できるアイテム一式は、一般的なツーリング用途で欲しい思える程よい高機能ぶりを発揮してくれる点が見逃せない魅力である。
もちろんアクセサリーの装備は個別(単品)でも可能なので個人の好みやニーズに合わせて購入すれば良いが、ツーリングセローは、ヘビーデューティな旅バイクとしての個性を気軽に主張できるところが人気のようだ。
初代セロー225のコンセプトには、なんと『転ぶ事』もキーワードに入れられていた。不整地を走れば当然転ぶ機会も多くなる、そんな時に転んでも笑って再スタートできるように、堅牢に作る。引き起こししやすいよう、グリップ(持ち手)を前後に設置。また、51°と言う大きなハンドル切れ角を確保。切れ角は現在にも引き継がれ、最小回転半径はわずか1.9mに過ぎないのである。
初代モデルはほぼ4年毎に熟成を重ね、セルスターターの装備、リアチューブレス化、ディスクブレーキや明るいハロゲンライトの採用等、しっかりと手が入れられていった。ライバルを寄せ付けないロングセラーへの礎は、度重なる真摯なマイナーチェンジで培われていったわけだ。
そして、『変化を求めず、深化を追求』したセロー250へのフルモデルチェンジ。セミダブルクレードルフレームの基本とエンジンをトリッカーと共用しながらも、ステアリングヘッド&スイングアームピボット回りや、リヤフレームはセロー専用の設計が施され、初代の基本機能をキープしながら、総合的なパフォーマンス向上を果たす。
2008年には燃料噴射の採用やフロントフォークの変更、2018年には排出ガス規制に対応、ロングリアフェンダーを採用。そして2020年にファイナルエディションの投入となったのである。
初代を彷彿とさせる「懐かしさ」とファイナルに相応しい「特別感」を取り入れたカラーデザインを採用。赤と緑の2色を設定し、フレームも含めてグレードの高い塗装が施された。
認定型式/原動機打刻型式:2BK-DG31J/G3J9E
全長/全幅/全高:2,100mm/805mm/1,160mm
シート高:830mm
軸間距離 :1,360mm
最低地上高:285mm
車両重量:133kg
燃料消費率*1:
国土交通省届出値、定地燃費値(*2) 48.4km/L 2名乗車時
WMTCモード値 (*3) 38.7km/L(クラス2, サブクラス2-1) 1名乗車時
原動機種類:空冷・4ストローク・SOHC・2バルブ
気筒数配列:単気筒
総排気量:249cm3
内径×行程:74.0mm×58.0mm
圧縮比:9.7:1
最高出力 :14kW(20PS)/7,500r/min
最大トルク:20N・m(2.1kgf・m)/8,000r/min
始動方式 :セルフ式
潤滑方式 :ウェットサンプ
エンジンオイル容量:1.40L
燃料タンク容量:9.3L(無鉛レギュラーガソリン指定)
吸気・燃料装置/燃料供給方式:フューエルインジェクション
点火方式:TCI(トランジスタ式)
バッテリー容量/型式:12V, 6.0Ah(10HR)/YTZ7S
1次減速比/2次減速比:3.083/3.200
クラッチ形式:湿式, 多板
変速装置/変速方式:常時噛合式5速/リターン式
変速比:
1速:2.846
2速:1.812
3速:1.318
4速:1.035
5速:0.821
フレーム形式:セミダブルクレードル
キャスター/トレール:26°40′/105mm
タイヤサイズ(前/後):
2.75-21 45P(チューブタイプ)/
120/80-18M/C 62P(チューブレス)
制動装置形式(前/後):
油圧式シングルディスクブレーキ/
油圧式シングルディスクブレーキ
懸架方式(前/後):テレスコピック/スイングアーム(リンク式)
ヘッドランプバルブ種類/ヘッドランプ:ハロゲンバルブ/12V, 60/55W×1
乗車定員 :2名