TEXT◎貝方士 英樹(KAIHOSHI Hideki)
マイクロソフト社共同創業者のポール・ガードナー・アレンは、ビジネス界の巨人でもあり同時に投資家、研究者、人道主義者、慈善家でもあった。とくにマイクロソフト退社後は約2兆円を超えるとされる巨額資産を財団で運用し様々な慈善事業に出資や寄付してきた。そのうちのひとつが兵器遺産収集への出資で、海底調査の専門家チームを率いて、沈没した軍艦の深海探査を続けてきた。
ポール・アレンの調査チームが日本で最初に注目を集めたのは、なんといっても戦艦「武蔵」の発見だろう。2015 年3月3日、8年の歳月をかけて捜索を続けてきた武蔵をフィリピンレイテ島のシブヤン海で発見したと発表。その後も発見成果は続々と続き、直近10月18日ミッドウェーの水深5400mの海底で空母「加賀」を、20日には空母「赤城」を発見する快挙を成し遂げている。ポール・アレンは2018年10月15日に亡くなり、現在は財団がその志を継いでいる。
実際に製造されたことが確認される世界最古の潜水艦は、1620年、オランダ人がイギリス海軍向けに発明した人力推進潜水艇だが、潜水艦を実戦で初めて使ったのはアメリカだった。1776年、コネチカット州のデヴィッド・ブッシュネルが開発した一人乗りタートル潜水艇がアメリカ独立戦争時で使われた。タートルは敵艦艇撃沈には至らなかったものの、これ以降、アメリカは潜水艦技術と海底探査への飽くなき挑戦を続け、世界をリードしていくことになる。
1954年、世界初の原子力潜水艦「ノーチラス」を就役させたのもアメリカだ。翌1955年には 史上初めて原子力を使ってテムズ川を渡り「本艦、原子力にて航行中」という有名な打電を残している。潜航状態で北極点を最初に通過することに成功したのもノーチラスだ。1958年のことで、このときの「ノーチラス、北90度」の打電も有名だ。
1960年、地球上で最も深い海底、マリアナ 海溝南部の最深域チャレンジャー海淵の海底に世界で初めて到達したのもアメリカだ。困難に挑み、勝ち取る開拓者魂。フロンティアスピリットはここにも息づいている。
これまで中国の海洋調査、観測などを担ってきたのは国家海洋局だったが、2018年、全国人民代表大会で国土資源部・国家海洋局・国家測量地理情報局と統合され「自然資源部」に組織改編。土地利用政策、資源政策を担うことと なった。それに伴い、これまで「海洋権益の維護(維持と擁護)」を担当してきた海上法執行機関「中国海監総隊(=中国海警局)」の任務は人民武装警察部隊に移管されている。