短期的に見ると、販売台数の減少で元気のないように見えるが、マツダが描く近未来像はなかなか魅力的だ。
2019年5月に発表された中期経営方針によると2025年3月期の指標は次の通りだった。
売上:約4.5兆円
収益性:ROS(売上高営業利益率)5%以上/ROE(自己資本利益率)10%以上
販売台数:約180万台
中期経営方針は、2030-2040年にありたい姿を目指す「今期からの6年間」(2020年3月期〜2025年3月期)と新世代商品群完遂までの「今期からの6年間」のマツダの方針を示したものだ。
現在のマツダの課題は質的成長とブランド価値向上である。そのために、電動化を含むパワートレーンのバリエーション拡大、先進技術の拡大などを進めていく。価格帯で言えば、現行世代から新世代への移行で従来の商品の価格はやや上がり、その上により高価格なモデルを新たに投入する戦略だ。
とはいえ、ブランド価値向上、プレミアム路線をひと口に「高価格化」と括られるのマツダはよしとしていない。
藤原清志副社長執行役員は、
「電動化を含むさまざまなパワートレインにより幅広くカバーしていく考え方は、決してマツダを高級路線へ導こうとしているのではありません」
という。
ポイントは、Largeアーキテクチャーにある。エンジン縦置の後輪駆動ベースの上級モデルに搭載するのは、新開発の直列6気筒エンジンだ。これについては、少し導入時期が後ろにずれる。
またSKYACTIV-Dの第二世代も2021年以降の登場になった。
決算の資料を読み解くと、新世代のLargeアーキテクチャーの新型モデルがデビューするのは、「2022年」になりそうだ。2023年3月期の販売台数で一定の割合を占めるためには2022年前半〜中盤には市場に投入しなければならないからだ。
「今一度、Large商品群の挑戦についてお話します。 私たちは、未だブランドポジションが確立されていない、挑戦し続けているブランドです。 マツダブランドで成功を続けるためには、『非常に高い商品価値に対して、納得感のある価格』が重要であると認識しています。つまり、高い商品力を生み出すデザインを含む開発力、それを適切なコストで創り出す技術力・調達力があること。この抜群に高い商品競合力を得るための技術が、エンジンの 縦置き化、直列6気筒化、プラグインハイブリッド化技術であり、すなわちこれらがLarge商品群に必要な技術です。 そして、その「価値と納得感」をお客様にお届けするコミュニケーション・販売力が必須であるということも理解しています」(藤原副社長)
藤原副社長が強調するように、『非常に高い商品価値に対して、納得感のある価格』がマツダの後輪駆動(Largeアーキテクチャー)モデルになる。
当初の計画では、2025年には新世代Smallと新世代Largeで販売台数のほとんどを占める計画だったが、今回の発表では現行世代のアップデートが2025年も全体の25%を占めることになりそうだ。「一気にLarge商品群を拡大するのではなく、商品競合力を維持した現行世代商品群の資産を最大活用し、step by stepで世代の移行を進めていく」考えだ。
「台数の推移で説明すると、前半3年は、新世代Small商品群と、現行世代商品群の改良モデルを中心に構成し、後半3年から、Large商品群が入り、最終年度まで徐々に増加させていく計画です」(藤原副社長)
マツダが当初描いていたよりゆっくりしたペースでLargeアーキテクチャーの商品群が増えていくことになりそうだ。
マツダの中期経営計画の6年間(2020年3月期~2025年3月期)の前半3年間はCASEに代表される新しい要求への対応と新世代商品群への投資を先行させる。後半3年間はLarge商品群の投入で先行した投資の刈り取りをしていく。
結果2025年3月期には180万台のメーカーへ成長している、というのがマツダの描く近未来像だ。