(W4110:ミツバ)
求められるトルクは確保しながらモーターを小さく軽くしたい。モーター自体の性能追求と同時並行して「ギヤのマニアがいたんです」というミツバの技術者が見つけ出してきたのが「1枚歯ピニオンギヤ」である。試作機として組み込まれていたのはワイパードライブユニット。通常のユニットではウォームギヤを用いるところ、この1枚歯ピニオンギヤを組み込んだ試作機の駆動トルクは驚くほどにスルスルと小さかった。
ウォームギヤ&ホイールでは直行してしまう軸が、1枚歯ピニオンギヤでは並行軸にできるのも特徴。これにより、装置に仕立てたときにより小さくできる。
小トルクを実現できたのは、歯車のかみ合い部が転がり接触であるため。ウォームギヤ&ホイールは滑り接触のためどうしてもフリクションが生じてしまう。グラフからも、とくに動き始めの効率がいいことが見て取れる。
大減速比が小さいサイズで実現できるのも1枚歯ピニオンギヤの特長だ。下の写真は、同じ減速比とした場合の2段減速平歯車とのサイズ比較。模型ではピニオンギヤが組み込まれていないのだが、著しく小型化できることが一目でわかる。
課題はどうやって作るか、である。いかにも複雑な形状をしているピニオンギヤの歯を切る工具もまだなく、手探りの状態だ。「見た目が弱そう」という感想を技術者の口から聞いたのも印象的だ。
とはいうものの、大きな減速比をこれだけの小さな機構で生み出せるのは期待が大きい。ぜひ実現を望みたいメカニズムである。