PHOTO&REPORT⚫️近田 茂(CHIKATA Shigeru)
かつてのスズキ油冷エンジンは、潤滑油の量と流速を高めることで冷却性の向上を図ったのが特徴だった。当時、真夏に水道の蛇口から流れる水を両手に浴びて冷たかったのをヒントに、という逸話が語られた事も話題に登ったが、古くは航空機エンジンに活用例がある。
今回、空冷では冷却力不足となる高性能を追求。しかし水冷のウォータージャケットを着せる程のレベルではないと言う。ハイパワーの追求はほどほどにし、何よりもコンパクト設計を優先することで考案されたのが、進化系の油冷方式だったと言う。
動弁系にはSOHC4バルブを採用。センタープラグ周辺からシリンダーヘッド、そしてシリンダーヘッドに近いシリンダー頭頂部付近の冷却効率を高めるために、一筆書きを描くようにオイルラインを通し、縦置きのオイルクーラーを採用したのが特徴。
つまりヘッド水冷(液冷)をオイルでやってのけているのが今回の特徴である。アイデアはあっても、これを実現するのは、簡単ではなかった。シリンダー等の鋳造技術の中で、φ7mm程度のオイルラインを高い安定精度で綺麗に製造するのは難しい。量産製造技術の中でそれを達成した結果が、今回の進化系油冷エンジンの搭載に帰結したと言う。
森さんのお話を伺っていると、追求された程よい出力特性が如何なるものなのか、そしてコンパクト軽量なユニットから発揮されるであろう軽快な操縦性も楽しみ。試乗し、それを報告できる日が待ち遠しいのである。