(W3503:曙ブレーキ工業)
そもそもブレーキという装置は運動エネルギーを摩擦による熱エネルギーに変換するものである。最近は回生ブレーキが一般化してきたので物理的接触がない制動装置も荒唐無稽ではなくなってきたが、それでもこのMR流体ブレーキというデバイスはユニークである。
仕組みとしては固定プレート/回転プレートの間に磁性流体が満たされていて、印加するとその流体が半固体状になることでプレート同士が締結される。でも板を何かが直接つかんでいるわけではないのにちゃんとブレーキの役目を果たすの?——と訊いてみたら、トヨタの小型モビリティ「コムス」の4輪にこのMR流体ブレーキを装着し、勾配30%(!)の急坂で停車を試みても不安も違和感もなく止まれたという。さらに、ライニング/パッドが徐々に噛み込んでいくようなじわっとしたブレーキングも可能なんですかと訊いてみると、ブレーキペダルのストロークセンサに呼応した電流制御のみで自然なフィーリングを生み出せたそうだ。
写真で見られるように、ユニットを制御するためのコードは細く、組み込みのためのハードルは高くない。最大電流は写真の状態で最大2A程度だという。
課題は熱。いまは小さな車両で収支が成り立っているが、車重が増してくるとユニットが熱を帯びてくる。行き過ぎてしまうとフルードが蒸発して磁性体のみが残る格好となり、ロックしてしまうこともあるという。