(W3302:ヨロズ)
サスペンションメンバーやアーム類を壁にたくさん展示、圧巻のヨロズブース。ここ最近のクルマの部品だな、なるほどこうなっているのか——などと眺めていたら、技術者の方がいろいろ見所を教えてくれた。
日産デイズ/三菱自eKワゴンフロントメンバーでは、アーム部の構造の特異さが際立つ。上下合わせのメンバーを下まで縦貫する三次元形状のアームは一体構造。一枚板をくるりとCの字に巻いている形状で、従来構造では複数個になっているここの部位を本構造によってシンプルで軽く作ることができた。
続いてモナカ合わせ構造の工夫。通常、モナカ合わせの溶接といえば接続部を入れ子にして(上蓋/下箱の構造を想像してもらうとわかりやすいかも)、その重なっている部分を溶接する。その「重なっている部分」の削減を図り、端部の突き合わせで溶接を施したのが本構造だ。
「載せて」と書くと簡単に思えるが、当然ながら部品形状としては三次元。端面同士がきちんと合わさる精度を確保できないとできない芸当である。しかし効果はてきめん、軽量化と剛性確保の両立に成功している。
技術者の方がおっしゃるには、新型車への移行にあたっては「先代より15%軽量化してほしい」という要望がメーカーから寄せられるそう。途方もない数字だが、こうした地道な積み重ねによって毎度クリアしているというのだが恐れ入る。
少々ユニークな例をひとつ。サスペンションアームでクルマとしての最終的なNVH対策を施したという例である。生産間近まで進むクルマの開発において「あとちょっと」というところがどうしても出てくる。ここに紹介する日産デイズ/三菱自eKワゴンの場合も、どうしても取りきれない振動騒音が生じたらしい。そこで、左のトレーリングアーム付け根のウェイト付与+右のスプリングマウントのリブ追加という手段をとったという。左右に完全バランスしているわけではないクルマで、「ここに対策を施せば収まる」という最終的なチューニングが目に見える形で示されるのは非常に興味深い。
こちらは構造の簡素化による軽量化実現の例。フロントロワアームは、通常アーム端部に鋼管を溶接し、その内側にブッシュを圧入する。しかし万一の衝突時にその鋼管部が外れてしまうことがあり、さらに軽量化を図るために新しい構造を考案した。
ロワアーム単体としては打ち抜きの丸穴にフランジを設けるだけとし、そこに鋼管一体型のブッシュアセンブリをセットするという構造。展示品にブッシュがはめられていないので想像がつきにくいのだが、これにより衝突時の破損回避と軽量化を両立、溶接がなくなったのでコストも圧縮できたという。