日本国内だけ見ていると、販売台数の順番は、ほぼ「E/5er/A6」で固定しているように見える。
では、世界ではどうなのだろうか?
まずは、この3モデルのモデルサイクルを見ておいてほしい。
20世紀の終わりから21世紀の初頭まではEクラスが強かった。1997年には2代目Eクラス(W210)年間18.1万台も売れていた。このW210型は名車の誉高かった初代Eクラス(ミディアムクラス)のW124のあとを継いだモデルだ。楕円形4灯式のヘッドライトが特徴的だった。この2代目Eクラスはライバルを寄せ付けることなくトップを維持し、3代目W211にバトンタッチ。当初は好調なセールスだったが、2005-2008年にアウディA6(3代目C6)にトップを奪われる。
リーマンショックで全モデル、販売台数が激減したあと、2009、10、11年に相次いでモデルチェンジを敢行。この世代は「5er/E/A6」という順番に変わった。
大型SUVが人気を集めるにつれて、このクラスの販売台数は減っている。
現行型の欧州での人気は、再び「E/5er/A6」に落ち着いている。このクラスは、とくにドイツでは「カンパニーカー」としての需要が大きい。企業のある程度の地位についた人が報酬の一部として会社からクルマを貸与される。そこで強いのがメルセデス・ベンツなのだ。
このジャーマン・プレミアム3に挑むチャレンジャーたちの戦いぶりはどうだろうか? グラフをご覧いただこう。
3モデルを取り上げてみた。まずはレクサスGS。レクサスは北米ではSUVを中心に成功を収めているが欧州では苦戦している。年間5000台がやっと、という感じだ。
マセラティ・ギブリもレクサスGSと同じ程度である。
唯一、気を吐くのが新生ジャガーのXFである。2008年からコンスタントに1万5000台を売り上げている。
と言ったものの、ジャーマン・プレミアム3と同じグラフに載せてみると、まったく歯が立っていないことがわかる。欧州では、やはりドイツの3モデルが強いことがわかる。
どのカテゴリーでも北米市場が最重要だ。
北米のセールデータは1980年からグラフにしてみた。
1980年代、北米ではメルセデス・ベンツ(ミディアムクラス)とBMW5シリーズの戦いだった。
80年代前半はW123型が、そのあとはW124型が人気を集めていた。
BMWは初代(E12型)、2代目(E28型)だった。そこへアウディがA6を投入して挑んだかたちになっている。90年代後半は、3モデルとも右肩上がりでセールスを伸ばしたが、北米での販売は、21世紀に入っても、基本は「E/5er/A6」の順が固定されている。
例外は2005-2008年。クリス・バングルの手による5代目E60型は欧州ではともかく、北米では人気を集めたことがわかる。
グラフの縦軸を見て欲しい。2013年のEクラスの販売台数が13万台だったが、その他は4-5万台近辺で推移している。欧州での10万台/1モデルという状況には北米はなっていない。
なぜか?
この答がこのグラフだ。北米では、キャデラックCTS、リンカーンLS/MKZ/Zephyr、レクサスGS、インフィニティQ70、アキュラRL、ボルボS60、ジャガーXF、現代ジェネシスなど、多彩なモデルに人気が分散しているのだ。
縦軸を同じスケールにしてあるから、北米でのこのカテゴリーの競争がいかに厳しいかわかるだろう。
「中国で高級車といえば、それはアウディだ」という時代が長く続いたことがわかるグラフだ。政府の要人、企業の重役、お金持ちがこぞってアウディを選ぶ。アウディは中国市場を非常に重要視し、ロングホイールベースのA6Lを中国のために開発した。
あとを追った形のBMWとメルセデス・ベンツが追い上げている。2018年はほぼ3車拮抗。今後の流れが非常に興味深い。
トヨタ・クラウンの中国での知名度は高い。そのクラウンの販売台数を載せてみた。
クラウンの人気は安定しているが、Eクラス、5シリーズ、A6の販売台数の急増の勢いには乗れていない。