それぞれ初代のデビュー年を記すと
1972年 メルセデス・ベンツSクラス初代W116型
1977年 BMW 7シリーズ初代E23型
1989年 レクサスLS初代XF10型
1994年 アウディA8初代D2型
となる。
さて、日本にいると、このカテゴリーの王者はいまも昔もSクラス、と思いがちだが、北米や欧州ではどうなのか、販売データを調べてみた。
データは、A8が登場したあとの1996年(北米)1997年(欧州)からとした。
販売ボリュームはやはり北米がもっとも大きい。まずは北米のデータを見ていこう。
北米ではメルセデス・ベンツSクラスへの絶大な支持は揺らがない。フルモデルチェンジのタイミングでごく一時期を除いては、Sクラスー7シリーズーA8という序列は一貫して変わらない。
このジャーマン3のフラッグシップセダン群にレクサスLSのデータをのせてみよう。
じつは、21世紀に入ってリーマン・ショックで販売台数が激減する前まではレクサスLSが販売でトップを走っていたのだ。
2007年は
レクサスLS:3万5226台
メルセデス・ベンツSクラス:2万6081台
BMW7シリーズ:1万4773台
アウディA8:3826台
でレクサスの圧勝だったのだ。
この時のレクサスは、4代目XF40型。リーマン・ショック後、販売を立て直したSクラスに対してLSは立て直しに失敗。2012年モデルとしてメジャーアップデートが行ない、2013年モデルから、いわゆる「スピンドルグリル」が採用したのだが、販売データから読み解く限り、このスピンドルグリル顔のLSはアメリカ人の嗜好とはズレがあったようだ。
2017年にフルモデルチェンジを受けた現行XF50型もいまのところヒット作にはなっていない。
2018年の販売データでは、Sクラスが約1万5000台だったのに対して新型LSは約9700台と3分の2の台数にとどまっている。新車効果があったはずの2018年でこの数字だから、現行LSは苦戦している、と言わざると得ない。
舞台を北米からヨーロッパに移そう。
まずはグラフを見てもらおう。グラフを読み解くために、それぞれのモデルの変遷を記しておく。
メルセデス・ベンツSクラス
初代W116型(1972-1980年)
2代目W126型(1979-1991年)
3代目W140型(1991-1998年)
4代目W220型(1998-2005年)
5代目W221型(2005-2013年)
6代目W222型(2013-)
BMW 7シリーズ
初代E23型(1977-1986年)
2代目E32型(1986-1994年)
3代目E38型(1994-2001年)
4代目E65/66/67/68型(2001-2009年)
5代目F01/02/03/04型(2009-2015年)
6代目G11/12型(2015-)
アウディA8
初代D2系(1994-2003年)
2代目D3系(2003-2010年)
3代目D4系(2010-2018年)
4代目D5系(2018-)
このLLサイズのプレミアム・セダンの市場は、世界的に見ても縮小傾向だが、欧州も例外ではない。それでも2018年で3万台以上の市場規模があるのだから、自動車メーカーにとって重要なカテゴリーだ。
欧州でも強いのはメルセデス・ベンツSクラスだ。フルモデルチェンジのタイミングで7シリーズがSクラスに接近することもあるが、Sクラスー7シリーズーA8という序列は固定化している。
この3強に、レクサスLSのデータをのせてみる。ご存知のとおり、欧州でのレクサスの存在感はけっして大きくない。アメリカで大成功を収めたLSも欧州では売れていない。2016年は83台、新型に切り替わったあとの2018年でも636台だから、3強のライバルになっていない。
欧州の伝統ブランド、ジャガーのXJはどうだろう? こちらは、レクサスLSよりはだいぶ売れているが、それでも3強を脅かすほどではない。
こうしてみていくと、やはりこのカテゴリーは、北米・欧州(そしてもちろん日本も)ともに、メルセデス・ベンツSクラスが王者として君臨していることがわかる。90年代〜00年代初頭はレクサスLSがトレンドを引っ張ってきたが(つまりライバルのモデルチェンジがLSに影響される)、いまはSクラス1強状態と言える。
バリュー・フォー・マネーが重視される北米でも新参者がのし上るのは難しい。レクサスはいまは30年の歴史を持つブランドだから、このカテゴリーでもかつてのようにLSでSクラスに勝負できるようになってほしいところだ。