ちなみに、この標章を受ける資格は次の通り。当然、普通車を運転することが出来る免許保持者であることが、前提条件だ。
・標章交付申請資格
1. 70歳以上であること。
2. 聴覚障害であることを理由に免許に条件を付されていること。
3. 肢体不自由であることを理由に免許に条件を付されていること。
4. 妊娠中又は出産後8週間以内であること。
※「駐車禁止除外標章」保持者の申請は不要
というわけで、今後、ますます進行する高齢化社会にぴったしの制度であるということは間違いない。が、制度はあってもちゃんと運用できなければ、まさに絵に描いた餅。施行以来、まもなく10年が経とうとしているだけに、さぞかし多くの高齢ドライバーが恩恵を受けている…と思いきや、なんと、全国に設置されている「高齢運転者等専用駐車区間」は、2018年度末時点でたったの1,428台分だというからびっくり! 47都道府県で割れば、1都道府県あたり30台分ちょっとということになる。さらに、現時点での標章発行枚数は64,500枚(内高齢者は62,400枚)と、こちらは1都道府県あたり1,400人弱。国民の3人にひとりが高齢者と言われ、この世代は免許保持率も高いはずにも関わらずだ。つまり、制度の認知度の低さはもとより標章を掲示し駐車しているクルマすらめったに見かけないのは当然のことだったのだ。
ちなみに、主要都道府県の「高齢運転者等専用駐車区間」数は、以下の通り。
と、1都道府県あたり多くても20~40ヵ所、この表だけでも1桁台が1/3を占めているという悲惨な状況であることがわかる。施行間もない時期なら仕方がないが、9年以上経ってもこの状況では「名ばかりの制度」と言われてもしかたがないのでは?
確かに、「高齢ドライバーが日常的によく利用する場所」というのは官公庁や福祉施設、そして病院など、市区の中心街であることが多く、交通の邪魔にならない「専用駐車スペース」を確保することが難しい。区画を区切ったり標識を立てたりと、ある程度予算も必要だ。また、この制度には「原則的に法定駐(停)車禁止場所には設置しないこと」「駐車規制が敷かれている道路に設置する場合は、駐車ベイや導流帯の設置などの安全対策を講じること」「歩道と車道が区別されている道路に設置すること」というガイドラインがあり、それに従うとすれば、めったやたらに作れるものでもない。9年経ってもなかなか普及しないのは、こんな理由があるからだ。
いずれにしてもこの制度は明らかに行政が「高齢者ドライバー」の運転を支援するというものであるにもかかわらず、返す刀で高齢者の交通事故が急増していることを理由に、「運転免許返納」を推奨するなど、ある意味、二律背反の様相を呈しているというのも事実。高齢者による悲惨な事故が立て続けに起きている今、いきあたりばったりの制度制定ではなく、自家用車の代替えとなる公共交通の充実化など、抜本的対策が必要なのではないだろうか?