ハーフ形の半キャップヘルメットは、大型バイクにも使用可能? もし被っても、道路交通法違反にはならない? 半キャップを被って高速道路を走っても問題ない? 等々、バイクパーツ&用品店の店員さんに、アレコレ聞いてみました!


PHOTO/REPORT:北秀昭(KITA Hideaki)

パーツショップの店員さんに質問「125cc以下用のヘルメット(半キャップ)で、オーバー125ccモデルに乗ってはダメ?」

今回訪れた、千葉県某所にあるバイク用品店のヘルメットコーナー。

 市販のバイク用ヘルメットには、「125cc以下限定」と「排気量無制限」の2種類が存在する。でも、公道を走っているライダーの中には、125cc以下限定の半キャップヘルメットで、大型バイクに乗っている人もいる。




 今回は、「125cc以下限定の半キャップヘルメットで、オーバー125ccモデルに乗ってはダメなのか?」という素朴な疑問を抱き、「悩んだ時はプロに聞け!」というわけで、近所のバイクパーツショップへGO!




 お客さんが少なく、しかも商品の入荷作業がないと思われる、平日の金曜日を選び(一般的に、商品の入荷は、休日明けの月曜日が多いと聞いたことがある)、ヘルメットコーナーの店員さんにアレコレ教えてもらいました。




筆者:半キャップでアメリカンタイプの400ccのバイクに乗りたいんですけど……道路交通法違反に問われることもないですし(※注1)。問題ありますかね。




店員さん:おっしゃる通り、走行中に白バイに停められるなど、道交法違反になることはありません。「125cc以下限定」や「排気量無制限」は、『JIS規格(日本工業規格)』や、『(PSC)消費生活用製品安全法時術基準』が定めている、いわゆる“メーカーや販売店の決め事”ですから。




筆者:半キャップで、125cc超のバイクに乗っている人は結構いますよね。特に暑い夏などは。




店員さん:結構います。『JIS規格』や『PSC』が定める「125cc以下限定」のヘルメットは、ハーフ形(半キャップ形)やスリークォーターズ形(耳までカバーされたタイプ)。一方、「排気量無制限」のヘルメットは、オープンフェイス形(ジェット形)やフルフェイス形。国内販売されている「125cc以下限定」のヘルメットには、分かりやすいようにステッカーも貼られています(下記参照)。

※注1:


●道路交通法 第七十一条の四


1. 大型自動二輪車又は普通自動二輪車の運転者は、乗車用ヘルメットをかぶらないで大型自動二輪車若しくは普通自動二輪車を運転し、又は乗車用ヘルメットをかぶらない者を乗車させて大型自動二輪車若しくは普通自動二輪車を運転してはならない。


2. 原動機付自転車の運転者は、乗車用ヘルメットをかぶらないで原動機付自転車を運転してはならない。


(3〜5.省略)


6. 第1項及び第2項の乗車用ヘルメットの基準は、内閣府令で定める。




●内閣府令(道路交通法施行規則第九条の五)乗車用ヘルメットの基準


1. 左右、上下の視野が十分とれること。


2. 風圧によりひさしが垂れて視野を妨げることのない構造であること。


3. 著しく聴力を損ねない構造であること。


4. 衝撃吸収性があり、かつ、帽体が耐貫通性を有すること。


5. 衝撃により容易に脱げないように固定できるあごひもを有すること。


6. 重量が二キログラム以下であること。


7. 体を傷つけるおそれがある構造でないこと。



 上記の「内閣府令(道路交通法施行規則第九条の五)乗車用ヘルメットの基準」を満たしているヘルメットであれば、基本的に125cc超のバイクに乗っても、道路交通法違反には問われない。




 ただし日本のバイク用ヘルメットは、『消費生活用製品安全法』によって特定製品に指定されているため、PSC規定をクリアした「PSCマーク」を付けることが義務付けられている。「PSCマーク」のないヘルメットは、国産品・輸入品にかかわらず、国内ではバイク乗車用ヘルメットとして販売不可。




 詳細は下記リンクをクリック。

■自転車用や工事用ヘルメットでバイクを運転!はナニ違反?【安全規格や道路交通法のオハナシ】

ヘルメットに貼られた「125cc以下用」のシールをチェック!

▲「125cc以下用」のシールが貼付された半キャップヘルメット。

筆者:確かに、この半キャップヘルメットには、「125cc以下用」のシールが貼られていますね。




店員さん:半キャップヘルメットは、フルフェイスなどに比べ、手軽で、しかも夏場は涼しい。しかし、“125ccまでの車両を想定した強度”しかありません。「排気量無制限」のヘルメットに比べて、気軽に被れる半面、強度が低く、露出も大きいので、スピードの出る125cc超のバイクで使用するのは、極めて危険です。私(店員さん)はバイク歴15年ほどになりますが、安全性を考えて、50ccに乗る時でも、フルフェイスのヘルメットを被っています。

高速道路で半キャップは極めて危険!その理由は?

▲時速80km/hで走行する高速道路は、公道とは違う危険が潜んでいる。

筆者:ハーレーなどのビッグバイクユーザーの中には、半キャップで高速道路を走る人もいますが……。




店員さん:仮に半キャップで高速道路を走行しても、道路交通法違反にはなりません。ただし100km/hで転倒した時のことを考えて、ほとんどのメーカーや販売店では、125cc超の使用を不可としています。




筆者:筆者の経験上、風圧が高まる高速域では、半キャップよりも、フィット感が高くてシールドの付いたジェット形やフルフェイス形の方が快適。高速域での半キャップは、風切り音が凄い。また、風圧によって“凧のように”上方へ持ち上がってしまい、アゴ紐によって喉元を締め付けられます。高速域での半キャップは、「不快感」「運転に集中できない」「露出が多くて危険」。




店員さん:「排気量無制限」のヘルメットは、整流効果で疲れづらく、風切り音も少ないので快適ですよ。高速道路を半キャップで走る=個人(店員さん)的には「自傷行為」だと感じます。私(店員さん)なら、怖くてできませんね(半笑)。自分の身を守るためにも、125cc超のバイクには、やはり「排気量無制限」のヘルメットを被っていただきたいです。

「半キャップで125cc超のバイク」は、“PL法”や、事故時の保険金の受取額等にも影響あり

▲任意保険の証書。

店員さん:「125cc以下限定」のヘルメットで、125cc超のバイクに乗った時に厄介なのが、事故に遭い、“ヘルメットが原因で大事に至った時”です。




筆者:具体的には、どういうこと?




店員さん:保険会社に、「排気量無制限のヘルメットを被っていなかったから、大事に至ったんじゃないか?」と、“痛いところ”を突っ込まれる可能性があります。




筆者:保険会社も商売ですから、保険金の支払いは、少ない方がいい……。




店員さん:「JIS規格やPSCでは認められていない」125cc以下限定のヘルメットを被り、125cc超のバイクに乗った場合、事故時の保険金の査定額や、実際の受け取り額はもちろん、『PL法(※注2)』でも不利になる、なんてことが起こり得ます。




筆者:なるほど。アドバイスをありがとうございました!






 店員さんによれば、バイクの事故による死亡理由は、頭部の損傷が多いという。真偽を確かめるべく、早速調べてみた。

※注2:PL法とは?


製品の欠陥によって生命・身体・財産などに損害を被ったことを証明した場合、被害者は製造会社や販売店などに対し、損害賠償を求めることができる法律。

都内のバイク死亡事故の約半数が、何と頭部の損傷。ヘルメットは正しく選び、正しく被ろう!

▲グラフは警視庁HPより。https://www.keishicho.metro.tokyo.jp/kotsu/jikoboshi/nirinsha/2rin_jiko.html

 上のグラフは、警視庁が調べた、都内で起きたバイク事故の損傷主部位を示したもの(平成30年及び、平成26~30年の5年間の平均)。




 死亡事故を招いた原因となる損傷主部位は、頭部が大部分を占めているのがポイントだ。


 なお、平成30年中に発生したバイク乗車中の死者のうち、40.9%が事故時にヘルメットが脱落していたという。




 事故の際に被害を軽減させるには、ヘルメットのアゴ紐をしっかり締めることに加え、排気量に適応したヘルメットを選ぶことが重要だといえる。

情報提供元: MotorFan
記事名:「 高速道路での使用はNG?事故時の保険金の受け取りに問題あり!?