REPORT●青木タカオ(AOKI Takao)
ハーレーダビッドソンの各モデルは「●●●●●ファミリー」という具合にカテゴライズされ、それぞれが異なるシャシーとVツインエンジンを持ちます。
「ビッグツイン」と呼ばれる大排気量エンジンを積むシリーズが、長距離走行の得意な「ツーリングファミリー」、そしてカスタムテイストとスポーティさを合わせ持つ「ソフテイルファミリー」です。
ほかに「スポーツスターファミリー」や「ストリートファミリー」「トライクファミリー」などもありますが、ここでは割愛しましょう。
じつは2017年モデルまでは「ダイナファミリー」もありましたが、18年式からダイナとソフテイルが統合し、「ニュー・ソフテイルファミリー」として生まれ変わったのでした。
「ニュー・ソフテイルファミリー」はメインフレームが完全新設計となり、搭載されるVツインエンジンも最新の「ミルウォーキーエイト」という空冷OHV4バルブとなっています。
最大の特徴はシート下でスイングアームとリンクレスで装着されたモノショック式のサスペンションシステムで、パーツ点数も50%つまり半減させて溶接箇所を22%減少。フレーム単体で65%、シャシー全体で34%の剛性アップを果たしました。
軽量化も徹底追求され、各モデルの車両重量は15〜20%低減。最大の重量減を達成した「デラックス」の車体車重は17kgも減り、軽量化と剛性という相反する要素を高次元で実現しているから見事としか言いようがありません。
17年式までのソフテイルフレームはミッションケース下に2本のショックアブソーバを路面と水平配置し、引きバネという特殊な構造としていました。サスペンションを車体の下に隠すことで、リアショックを持たない「リジッドフレーム」のフォルムを再現していますが、じつは1957年までのハーレーダビッドソンがそうだったのです。
写真は1952年のEL ハイドラグライドですが、サスペンションはフロントのみでリアにはありません。フレームネックから後輪軸までが真っ直ぐなこの美しいシルエットがコアなファンにたいへん人気で、それをサスペンションを隠し持ちながら再現しようとソフテイルフレームは1984年に登場したのでした。
つまり、リジッドフレームの“ハードテイル”に対して、衝撃をサスペンションで吸収するソフトなテールなので“ソフテイル”というネーミングとなったのです。1990年に発売された「ファットボーイ」は、映画「ターミネーター2」に登場し一躍人気モデルに。現代の技術でスプリンガーフォークを復活させた「ソフテイルスプリンガークラシック」などもファンから熱心線を浴び続けています。
リアサスペンションをモノショック化した新設計ソフテイルフレームもまた、リアサスペンションは外から見えないよう配置されています。なので、クラシックテイストを強調したモデルでは昔ながらのスタイルも受け継ぐことが可能となっています。
しかし、最大の魅力は軽量化されたシャシーと強化された足まわりによって飛躍的に向上したスポーツ性能です。従来では期待できなかった旋回性能や高速走行でのコンフォート性など、“走り”において生まれ変わったソフテイルは卓越したポテンシャルを誇っているのです。
刷新されたのはシャシーだけでなく、心臓部も新パワーユニットを獲得しています。エンジンはツーリングファミリーも搭載する「ミルウォーキーエイト」ですが、これをラバーを介さずフレームへダイレクトマウントしています。
リジッドマウントによってエンジンを剛性メンバーとして取り入れ、シャシー全体の強度をより高め、ライダーの操作に対してクイックに反応するという利点をもたらしました。
コンフォート性を重視するツーリングファミリーはエンジンをラバーマウントし、ソフテイルファミリーでは味わい深くダイレクトに鼓動感が伝わるリジッドマウントという違いを持たせています。
そして振動対策として、ツーリングファミリーに積むミルウォーキーエイトエンジンはシングルカウンターバランサーに、ソフテイル用ではバランサーをデュアル化し、乗り味でも差別化を図っているのです。
ちなみに2017年までラインナップされていたダイナファミリーは、リアサスペンションをオーソドックスなツインショックとし、剛性の高い骨格であることからスポーティな走りで人気を誇っていました。ローライダー、ファットボブ、ストリートボブといった人気機種は、18年式以降はソフテイルファミリーとなって生まれ変わっています。
いかがでしょうか、最新のソフテイルファミリー。なんだか乗りたくなってきませんでしょうか。筆者は最新モデルである「スポーツグライド」に乗ってみることにします。その模様はまた次回に!!