改めて、金曜日のレッキから始まったラリーウイークを振り返ってみようと思います。
2019年の全日本ラリーに参戦するにあたり、JN6クラスにトヨタVitz CVTでドライバー:板倉麻美/コ・ドライバー:梅本まどかという体制で参戦すると発表しましたが、わたしも板倉選手も初めての全日本ラリーということで、最初の新城ラリーはお互い別々にベテラン選手と組んで参戦しました。本当は第3戦唐津からの予定が、わたしが骨折のため欠場となってしまったため、この第4戦久万高原ラリーから正式ペアでのラリーとなりました。
そこで、板倉さんがドライビングする新城ラリーのインカー映像を見て、板倉さんがラリー中に求めていること(ペースノートを読むタイミングや読み方)を勉強しようと思っていました。
また、初めてのクルマ、初めてのペアということで、今回はレッキがとても重要だと意気込んでいたところ、いざ金曜朝の参加受付で書類を受け取ってみると、正確にナビゲーションするのが不安になるほど難解なルート指示が書かれていました。クルマの理解や板倉さんとのコミュニケーションをふかめたかったのに、まったく余裕がなくなってしまいました。
ロードブック(編集注:ラリー中にラリーカーが走行するルートやスケジュールが書かれた、主催者から配布される冊子)とレッキの方法が書かれている指示書が配布されるのですが、ここで衝撃な出来事がありました。
通常は、レッキはロードブック(編集中:ラリー中にラリーカーが走行するルートやスケジュールが書かれた、主催者から配布される冊子)のページに従って進めば良いのですが、今回は指示されたページまで進んだらまた前のページに戻ったり、今度はもっと後のページに飛んだり、ときにはページに書かれていない道も通ったりと、かなり複雑でした。
こんなことは初めてで、一気に緊張MAXになってしまいました!!
でも、JN2クラスでTOYOTA GAZOO Racingからコドライバーで参戦している安藤裕一選手が「ロードブックに印をつけたり、紙を車に貼ったりするといい」と教えて下さり、早速チェックを入れることに。
また、今回のレッキはいつもと違ってゼッケン番号順に走るということだったので、しっかりといとうりな選手の40号車についてレッキをしていきました。
レッキは本番を走るためにノートをつくる大切な時間ですが、実際のSSでロスト(編集注:ノートを読むべき場所と実際走る場所がずれたり見失ったりすること)してもすぐ復帰出来るように、レッキ中は自分なりに工夫することが必要です。
でも、板倉選手とのレッキは今回が初めてなので、「板倉選手にはこの言葉を使うんだ!」「このコーナーはこれで・・・ここは・・・」と、自分のこれまでの感覚との違いも書いて、実際SSで読むときにもわかりやすいようにメモしながら、なんとかレッキを終えました。
レッキは1つのSSにつき2回行います。1本はノート作り。もう1本は少しスピードを乗せて読みながら修正します。
でも、1本目はやはり初めてということで上手くいかない部分もあり、インカー動画で確認すべきところが2~3カ所出てしまいました。
午後は少しずつ慣れてきた感じもあったのですが、やはり初めての車、ドライバーとなるとすごく難しいのだなと自分のふがいなさに悔しさを覚えました。
レッキの後は参加確認と車検も行ないます。
車検はいつもメカニックさんが行って下さるのですが、一度見学してみようということになり、今回はみんなで行きました!
ドライバーとコドライバーのヘルメットやハンス、レーシングスーツやグローブや消火器をこの机に置き、全てチェックをしてもらいます。
これは、車両の重量を計っているところです。
他にもウインカーなどの灯火類をチェックします。
最低地上高の計測も行います。
全てチェックが終わり、車検に合格すれば、無事「JAF公認ラリー競技会之証」をウインドウに貼ることができます。
これがないとラリー競技には参加できません。
ゼッケは監督をはじめチームのみなさんがカラーに合わせて丁寧に貼ってくれました。
シートとハーネスの調節も行います。
しっかり身体にフィットさせないと危険なので長さなど調節を行います。
サービスパークでの準備を終え、ホテルに戻り、あとは本番に備えてノートの確認です。
この日の夜は土曜日の分のレッキを見直してノートを確認しながらどう読むか相談しようとしたのですが、動画がまさかの白とび! ほとんど何も見えない状態になってしまっていました。
とりあえず、確認出来ることを一緒に合わせ、板倉選手から「ここはこう呼んでほしい」といったリクエストをもらい、ノートを書き直します。こうして、一日目を終えました。
土曜日のレグ1。
天気は晴れで完全ドライのいいお天気でした♪
みんなでサービスにまず向かい、そこから準備をしてセレモニアルスタートする久万高原の役場まで板倉選手と向かいます!
到着したら、最初に全員の集合写真撮影です!
それからセレモニアルスタートを行い、TC0(編集注:TCゼロ/ティーシーゼロ/タイムコントロールの一番最初。つまりラリーの計測スタート地点となる。通常、ここからタイムアタック区間<SS>に向かって一般道を交通法規に従って移動するリエゾン区間となる)に向かいます。
セレモニアルスタートがTC0だと凄くわかりやすくてやりやすいのですが、今回はTC0までが少し遠く、ここの距離も燃費の計算に入れたり、時間をみたりといつもより不安要素が多かったのですが、これはこれでとても勉強になりました。
それからセレモニアルスタートを行い、TC0(編集注:TCゼロ/ティーシーゼロ/タイムコントロールの一番最初。つまりラリーの計測スタート地点となる。通常、ここからタイムアタック区間<SS>に向かって一般道を交通法規に従って移動するリエゾン区間となる)に向かいます。
セレモニアルスタートがTC0だと凄くわかりやすくてやりやすいのですが、今回はTC0までが少し遠く、ここの距離も燃費の計算に入れたり、時間をみたりといつもより不安要素が多かったのですが、これはこれでとても勉強になりました。
セレモニアルスタートでは地元の子供達が太鼓を叩いて盛り上げてくれていてパワーをもらいましたよ♪
TC0からSS1までは距離がとても短く、あっという間に到着です。
SS1に着いたら少し待ち時間があるので、板倉選手はすかさずタイヤのエアをチェック。
私はメモとカメラのセットをしていたのですが、ここでカメラが作動しないというアクシデント発生!!!
ギリギリまで粘りましたが、諦めてSSに集中することに。
SSはあっという間で、終わった時に距離にしては短く感じる体感。
初めて走るヴィッツCVTの感覚。
でも、板倉選手との息はすぐにピタっと合うイメージは持てず、もう少しタイミングを合わせないと・・・と反省点がたくさんありました。
それでもSSタイムはクラス2番手!!!
体感で良かったのか悪かったのかいまいちわからず、順位をみて一安心でした。
とりあえず、順位を伝えずに次のSSへ向かいます。
そこでは時間が少しあったので外にいるみなさんとお話しタイム。
ドライバーが集まり、SS1について語り合っています。その間コドライバーは他のチームのタイムをメモしたり、タイム差を計算したり。SS終わりのリフュエル(給油)でどれくらい入れるか計算もします。
ドライバーはその後、エアチェックや車をチェックしたり、他の選手の車をチェックを行います。
そうこうしている間にSS2の時間に。
移動して、スタート!!!
ここは景色の綺麗なSS区間ですが、タイトなヘアピンもあるので難しいイメージ。
下りはくねくねしていて、こういうスピードになるのか! などと、やはり感じた事のない体感でした。
一方の板倉選手は、セレモニアルスタートの前が一番緊張していたのではないかというくらい、SS中は1つ1つのコーナーに対して冷静に集中している感じでした。
SSスタート前も人によって雰囲気が違うのですが、板倉選手のリラックスしている雰囲気は、カッコいいなと思いました!
午前のSSが終わり、リフュエルもしてサービスに戻ります。
監督からも「この調子で」とコメントを頂きました。
サービスの時間は30分。
今回はお手洗いまでの距離がサービスから少し遠く、あれこれしているとすぐに時間に!!!
こんなバタバタなサービスは初めてで驚きました。サービス中にメカニックさんがいろいろと車をチェックしたり、補修して下さいました。
さて、午後のSS3です。
明日のレグ2はこの逆走になるのですが、この道を走るのは最後。さっきよりも良い感覚で走り、無理はしない。ということを2人で言いながらSS3に臨みます!
SS3は途中でふと怖いな・・・と思うようなシーンがあったのですが、スピードが乗って怖く感じているのか、私の感覚は判断できず、フィニッシュした時は一安心という感じでした。
ですが、タイムを見るとだいぶ落ちています。
スピードで怖かったわけではなかったんだと思いながらタイヤ回りをチェックしえみると、煙が出ていて変な臭いがしました。
板倉選手が確認するとブレーキキャリパーが燃えている!?
とりあえず、山に入る前に、携帯の電波が通じるうちに監督に電話をして伝えることにしました。
そんな中、次のSSにも向かわなければなりません。板倉選手はいろいろ試しながら走り、とりあえずサービスまで無事に戻ることを考えようと決めました。
監督にブレーキまわりの写真を送りたかったのですが、山奥なので電波がなく送信できません・・・。
SS4の前も、他の選手が集まって情報交換をしたのですが、JN6クラストップを走る大倉選手に見ていただくと「これなら大丈夫だと思うよ」という嬉しいコメント!
不安も若干ありましたが、板倉選手は落ち着いており、「とりあえず丁寧に、無理せず、サービスに帰ろう」と言いあいながらSS4を走りきりました。
タイムを見ると2番手。
一方、前を走る40号車のいとう選手がマシントラブルでSSスタート序盤で失速していました。
この久万高原ラリーの難しさ、長いSSの大変さを感じました。
SS4を終え、電波を拾い、すぐ監督に連絡し、サービスで治してもらう準備をしてもらいサービスイン。
たくさんのトラブルがありましたが、この日を無事に終える事が出来ました!
また私は初めてヴィッツCVTで板倉選手とSSを走り、感じる事、自分への課題をたくさんみつけました。
この日の夜ホテルに戻ってからは、次の日に走るレッキを見て、ノートを作りなおし、この日のリバースの道なので危ないギャップ、跳ねる部分や砂で滑る部分などを要チェックしながらおさらいをしました。
この日は雨予報という噂もあり、もしかしたら最後のSSだけ雨が降るかもという話をしながら、みんなでサービスパークへ向かいます。
今回はタイヤが10本使えるということで毎回フロントには新品タイヤのソフト、リアはずっと同じウェットで走ります。
いつもサービスを出る時はメカニックさんが指示を出し、その指示に従いドライバーはクルマを動かし、みんなに見守られながら出発です。
リフュエル(給油)してからSS5に向かうのですが、ホントに緑が多くて綺麗な景色が多くてリエゾン区間は気持ち良かったです。
SS5もあっという間にスタート時間に。
昨日チェックした危ないポイントも伝え、カウントダウンをし、スタート。
思っていた以上にタイトなコーナーが多くて、途中苦戦した場面もあり、でも昨日より息は合ってきている感覚が少し掴めてきました。
板倉選手はいつもSS中やその前後ではホントに落ち着いています。そして前が良く見えているということに驚きました!
SS6はギャップが多いイメージであることをレグ1で確認していたのですが、走ってみると想像以上に跳ねて驚きました。
このSS中には、ロールケージのカバーが外れてきてしまったのですが、それを走りながら私に渡す板倉選手の落ち着きにも驚きです。
ゴール後、リフュエルを行い、タイヤチェックをしてサービスインです。
板倉さんは、タイヤチェックのたびに「綺麗にタイヤを使うね」と言われます。
唐津では、他チームがミディアムタイヤを選択しているときもソフトを選択しました。ダンロップさんがミディアムを推奨してくるときも、慣れからもあってソフトを選択しました。周囲の方にソフトでいけたの!? と感心されるほどでした。今回の久万高原でも毎回タイヤチェックするたびにタイヤの使い方が綺麗と言われていて、板倉選手の走りのすごさに感心しました。
いよいよ最後の出発です。
SS7に向け気持ちいいリエゾン区間を走り、スタートです。
SS7は凄くタイトなヘアピンがあったり、最初にギャラリーポイントもあります。
最終SSまで来て、SS中に凄く息があってる感じがしてきました。
これまで、板倉選手はコーナーでコ・ドラのコメントを復唱しながら走っていたのですが、最終SSではタイミングが良かったのか復唱がなく、私もいいタイミングで板倉選手が欲しいタイミングで読む事が出来た気がしました。ノートを読んでいるときも楽しく、また終わったときの達成感がありました。
すると、板倉選手が「今、凄く楽しかったね」と言って下さったのです。同じ気持ちだったことにさらにうれしく、また楽しんでドライバーが走れたとともにタイムも悪くはなく、ここにきてようやく板倉選手とヴィッツCVTといい走りができ、とてもホッとしました。
残るはラスト1本。SS8です。
ここは本当にギャップが多く、路面が滑るので抑えるところと加速するコーナーがたくさんあるSS。
ギャップには気をつける! そして無事に帰ろう!と話し、最終SSをスタートしました。
ギャップを上手く交わしタイムアップもしたのですが、個人的には下りの加速とコーナーとが上手くマッチできず、最後の最後にロストしてしまい少し悔しかったです。
それでも、板倉選手はダントツのトップタイムをマークし続けている大倉選手より速く、クラストップタイムを出す事が出来ました!!!
ホントにすごいことです。とても嬉しかったです♪
この後パルクフェルメで車両保管をするのですが、その前に時間を調整するパーキングがあり、そこで大倉選手が板倉選手を待ってくれていました。お互い握手。
なんだかとてもいい光景で、大倉選手も板倉選手もかっこよかったです。
無事、パルクフェルメに車両保管です。
JN6クラスに初めて参戦したのですが、周囲の皆さんとはライバルでもありますが、一緒に参加してる選手です。
そうした感覚を、今回はすごく感じることができ、そこに最初からしっかりと馴染んでいる板倉選手のコミュニケーション能力や落ち着き、速さ、タイヤマネージメントなどなどホントに関心しました。
サービスに戻ると既に帰る準備をして待って下さる皆さんと再会です。
メカニックさんやチームの皆さんは、このトレーラーでクルマとともに帰郷します。ラリーが終わってからももう一仕事なのです。
本当に沢山の方に支えて頂きながらラリーにチャレンジできていることを、身に染みて感じました。
結果はクラス2位!!!
ホントにホントに凄くホッとしました。
正直なところ、怪我はまだ完治しておらず、痛みが残る中、初めてのことばかりで不安でした。でも、たくさんの方に支えられ、チームはもちろん、関係者の方、何より板倉選手に感謝の気持ちでいっぱいです!
初めて板倉選手とヴィッツCVTでいろいろと経験が出来、次に活かしていきたい! もっと大倉選手との差を縮めていきたいぞ!と意気込みたい所ですが・・・
今週末に群馬・嬬恋で開催される「全日本ラリー第5戦 モントレー2019」は残念ながらチームの方針でスキップとなります。
次戦は、7月5日~7日に北海道・ニセコ町などで開催される「全日本ラリー第6戦 2019 ARK ラリー・カムイ」です。
ターマック(舗装路)とグラベル(非舗装路)では、車両の補強をしたり、板倉選手もグラベルは初めてということで変わってくることが多いと思いますが、1つ1つ焦らずレベルアップしていきたいと思います。
今年の目標まであと「完走印4つ」です!
引き続き応援を宜しくお願いします☆+°
(文:梅本まどか 写真:ウェルパインモータースポーツ、梅本まどか)