REPORT◉島下泰久(SHIMASHITA Yasuhisa)
PHOTO◉田村 弥(TAMURA Wataru)
※本記事は『GENROQ』2019年6月号の記事を再編集・再構成したものです。
国内では初となるメルセデスAMG GT 4ドアクーペの試乗の舞台は富士スピードウェイ。しかし朝、目覚めると生憎の雨だった。時間が経つにつれて徐々に空は明るくなってきたが、完全なドライコンディションは望み薄だ。
用意されていたのは、欧州仕様数値で全長5054㎜×全幅1953㎜×全高1455㎜、ホイールベース2951㎜という体躯を誇る4枚のドアとテールゲートを持つボディに、最高出力639㎰、最大トルク900Nmを発生する4ℓV型8気筒ツインターボエンジンを搭載するメルセデスAMG GT 63 S 4マティック+。車名からはAMG GTのストレッチ版を想像するが、こちらはスチール製モノコックで、またトランスアクスルでもない。
それでも車体は各部に軽量、高剛性のアルミダイキャスト製パーツが奢られ、これでもかというほどの補強が施されることで徹底的に剛性が高められている。また、電子制御LSDにリヤホイールステア、4輪エアサスペンションにアクティブエアロシステムと、まさに走りに関わるハイテクもてんこ盛りとされる。
それだけにウエット路面も、悲観する必要はない。実際、ドライでの圧倒的なパフォーマンス、そしてコントロール性の高さはテキサス州にあるサーキット・オブ・ジ・アメリカ(COTA)での国際試乗会ですでに経験済み。ウエットは、むしろ良いチャンスになる。そう気持ちを切り替え、コースに飛び出した。
気をつけなければいけないのが、ターンインでブレーキを残し過ぎないようにすることだ。あまり前に荷重が寄っていると、リヤがあっけなく流れてしまう。
思い返せばCOTAでのドライでの走行でも、その気配はあった。しかもGT63 S 4マティック+の日本仕様は、本国でもオプションの後席背後のCFRP製バルクヘッドが備わらないから、余計にそうした傾向が強調された面もありそうだ。
そうは言いつつもトータルで見れば、パフォーマンスとコントロール性の高さに十二分に満足できたと自信を持って言うことができる。ボディサイズのこともドアの数のこともすぐに忘れて、ひたすら走りに没頭してしまったほどである。
このメルセデスAMG GT 4ドアクーペ、きっとステアリングを握った誰もが、これほどまでの走りができることに驚くに違いない。ある意味、今のメルセデスAMGの実力、そして勢いがもっとも色濃く感じられる1台だと、改めて感心させられる試乗となったのだ。
メルセデスAMG GT 63 S 4マティック+
■ボディサイズ:全長5054×全幅1953×全高1447㎜ ホイールベース:2951㎜
■車両重量:―㎏
■エンジン:V型8気筒DOHCツインターボ ボア×ストローク:83×92㎜ 総排気量:3982㏄ 最高出力:470kW(639㎰)/5500~6500rpm 最大トルク:900Nm(91.8㎏m)/2500~4500rpm
■トランスミッション:9速AT
■駆動方式:AWD
■サスペンション形式:Ⓕ4リンク Ⓡマルチリンク
■ブレーキ:Ⓕ&Ⓡベンチレーテッドディスク
■タイヤサイズ:Ⓕ265/40R20 Ⓡ295/35R20
■車両本体価格:2353万円