まずは、マツダが直6エンジン+FRプラットフォームを開発するわけを探っていこう。
マツダの2018年4月〜2019年3月期の実績は次の通りだ。
世界販売:117万台
売上高:2兆6226億円
営業利益:596億円
ちなみに、同期のスバルの実績はこうだ(項目が違うので参考程度に)。
世界生産:98万9000台
売上高:3兆3100億円
営業利益:2600億円
である。
自動車メーカーの売上高には、自動車販売以外にも特許収入やサービス、不動産収入などもあるだろうから非常に大雑把にしかいえない。が、販売台数に対する売上でスバルに水をあけられているのは事実。また、マツダの営業利益率は自動車メーカーのなかでも低いのも事実だ。
これを上げていくには、商品を高価格帯へ移行させる、販売台数を増やすという方法が考えられる。両方を組み合わせるのが一般的だろう。
発表になった中期経営方針で2025年3月期指標が発表されている。
売上:約4兆5000億円
販売台数:約180万台
とある。
117万台/2兆6226億円
から
180万台/4兆5000億円
へ
ということである。これを乱暴に純粋に1台あたりの売上で比較すると
2019年3月期:1台=約224万円
2025年3月期:1台=約250万円
で、クルマ1台あたり約15%の価格アップということになる。現行ラインアップの車両価格を15%上げたうえで、プラス63万台さらに売らなければ達成できない目標だ。これは非常に難しい。なぜなら、低価格なAセグ、Bセグ、一般的なCセグメントでは、コスト競争力に優れた中国などの新興国メーカーの存在感が増していくからだ。
ではマツダはどうするか?
その答えが「Largeアーキテクチャー」の投入だ。
マツダは、
Smallアーキテクチャー:
◎マツダ2(デミオ。次期モデルから)
●マツダ3(発表済み)
●CX-30(発表済み)
◎CX-3(次期モデルから)
△CX-4(中国向け。次期モデルを開発するかは不明)
◎CX-5(次期モデルから)
までをSmallアーキテクチャーで造る計画なのだろう。
Smallアーキテクチャー
=エンジン横置き(前輪駆動ベース)
SKYACTIV-Gのアップグレード版(G1.5/G.2.0/G2.5/G2.5ターボ)とそれに24Vマイルドハイブリッド(競争力次第では時期を見て48V化すると予想する。なぜなら、Largeアーキテクチャーのマイルドハイブリッドには当初から「48V」と記されているからだ)
SKYACITV-X
SKYACTIV-Dのアップグレード版(D1.8/D2.2)
そして独自のEV
でいくのだろう。
では、Largeアーキテクチャーは?
Largeアーキテクチャーは
=エンジン縦置き(後輪駆動ベース)でAWD化も含む
直列6気筒SKYACTIV-X
直列6気筒SKYACTIV-D GEN.2
48Vマイルドハイブリッド
プラグインハイブリッド
と記されている。もちろん、アライアンスを組むトヨタのFRプラットフォーム(TNGA GA-Lプラットフォーム)を使うのではなくマツダ独自開発だ。
このLargeアーキテクチャーを採用するモデルは
◎マツダ6(おそらく今年のLAショーでお披露目)
◎CX-8(次期モデルから)
◎CX-9(次期モデルから)
という既存モデルのフルモデルチェンジでLargeアーキテクチャーが採用されるはずだ。
そして、
VISION COUPEの名前で前回の東京モーターショーでコンセプトカーを披露した
◎フラッグシップ4ドアクーペ
に直列6気筒エンジンを搭載することになるだろう。マツダ100周年に合わせて2020年には姿を見せるはずだ。
マツダが思い描くプレミアム路線に絶対必要なのが、「Largeアーキテクチャー」なのだ。
そして、マツダファン、カーマニアの夢と言っていいロータリーエンジン搭載のスポーツカーについてはどうだろう?
今回の決算説明会では言及されなかったようだ。一部報道では、ロータリーエンジン搭載のレンジエクステンダーの発売を先延ばしにした、とあった。これもSmallアーキテクチャーの説明に、「レンジエクステンダー」の文字がなかったことから事実なのだろう。
すべてを情報を決算説明会で開示するわけではないから、ロータリーエンジン搭載搭載の「RX-VISION=RX-7?」の可能性が消えたわけではないと思う。2020年の100周年記念のサプライズで登場という可能性もないわけではない……。いずれいせよ、鍵を握るのは、ロータリーエンジンの開発状況なのは間違いない。
また、FRのロードスター(とフィアット124スパイダー)の行方とこのLargeアーキテクチャーとの関連も気になるところだ。