記憶に間違いはなく、車両本体価格は304万9000円(消費税込)だった。308 Allure BlueHDiについては、VWゴルフを競合に位置づけ、意識しながら運転をした。ゴルフにはディーゼルエンジンの設定はなく、ガソリンターボのみの設定だ。価格とパワートレーンのスペックを整理してみよう。
308 Allure BlueHDiの価格は、ゴルフTSIハイラインとコンフォートラインの中間に位置する。車両本体価格という最初に目に飛び込んでくる価格で比較すると、ゴルフのハイラインより27万円も安く、だいぶお買い得に感じる。
では、動力性能面ではどうだろう。最高出力はゴルフ・ハイラインが搭載する1.4ℓ直4ガソリンターボの方が上だが、最大トルクは308 Allure BlueHDiの方が上で、体感上は数字以上の力強さを感じる。308 Allure BlueHDiが搭載するのは、「DV5」と呼ぶプジョーの新世代ディーゼルエンジンだ。DV系は1998年にデビューしているので、時間経過だけに着目すれば古さを感じるかもしれないが、受け継いでいるのはボアピッチ(隣り合うシリンダー中心間の距離)のみと言っていい。
2018年に旧世代のDV6からDV5にアップデートするにあたっては、シリンダーヘッド、ピストン、コンロッド、クランクシャフトなどを新設計。排気量は62cc減り、1.5ℓになった(1560cc→1498cc)。排気量が1.5ℓ以下になったのは、自動車税の区分上、とても大きい。1.6ℓから1.5ℓになることで、年間5000円安くなる(39,500円→34,500円)。しかも、308 Allure BlueHDiはエコカー減税が100%適用される。本稿執筆時点での減税額は最大で13万8600円になる。
ゴルフはハイラインもコンフォートラインもエコカー減税の対象になっていない。減税額を勘案すると、308 Allure BlueHDiはゴルフTSIハイラインではなく、中間グレードのTSIコンフォートラインと価格的に競合するようになる。税負担を勘案すると、308 Allure BlueHDiのお買い得感は一段と高くなる。
排気量を落としたからといって、性能が落ちているわけではもちろんない。1.6ℓだったDV6の最高出力は88kW/3500rpm、最大トルクは300Nm/1750rpmだった。1.5ℓになったDV5の最高出力は96kW、最大トルクは300Nm/1750rpmである。最大トルクの数値は新旧で変わりないが、特性は異なる。回転数ごとにDV5とDV6の性能を比較してみると、次のようになる。
1750rpm 300Nm(DV5)/300Nm(DV6)
3500rpm 260Nm(DV5)/240Nm(DV6)
4500rpm 190Nm(DV5)/165Nm(DV6)
2000rpm 63kW(DV5)/55kW(DV6)
3750rpm 96kW(DV5)/88kW(DV6)
4500rpm 87kW(DV5)/75kW(DV6)
新世代ディーゼルのDV5は、旧世代のDV6に比べ、高回転域でのトルクの落ち込みが少なく、全回転域で出力が上回っていることがわかる。308 Allure BlueHDiのJC08モード燃費は24.3km/ ℓで、従来型比で15.7%向上している。つまり、出力/トルクと引き換えに燃費性能を落としたわけではない。小田原厚木道路の小田原西IC〜厚木IC間31.7km(制限速度70km/h)を、走行車線を中心に走行した際の燃費は27.7km/ℓだった。同じルートを同じようにゴルフTSIトレンドライン(パワートレーンはTSIコンフォートラインと同じ)で走った際の燃費は、23.7km/ℓだったことを報告しておく。
発進〜微低速走行の繰り返し、あるいは発進から巡航速度への加速で頼もしいまでの力強さを感じるのが308 Allure BlueHDiの魅力だが、走りの気持ち良さを増長するのにひと役買っているのが、DV5へのアップグレードとともに組み合わせられた8速AT(アイシン・エィ・ダブリュ製EAT8)だ。制御が良くなったとはいえ、乾式クラッチで動力の断接を行なうVWのDCTは、発進時のクラッチ接続にギクシャク感をともなう。そのとき発生するトルクが小さいため、ストレスを感じることが少なくない。
一方、発進デバイスにトルクコンバーターを用いる308 Allure BlueHDiは発進がスムーズだし、力強い。市街地幹線道路での速度の変動や、高速道路で速度が変動した際の変速制御は、ドライバーの意図を先回りしたように行なうし、スムーズで、素早い。DV5とEAT8は鬼に金棒の組み合わせだ。
フランス車のドイツ車化が指摘されるようになって久しいが、プジョー308も多分にドイツ車、具体的にはVWゴルフを意識したのは間違いない。プロポーションにクセはなく、Cセグメントの正統派2ボックススタイルをしている。ところが、ドアを開けて運転席に腰を落ち着けると、フランス車らしいというかプジョーらしいというか、クセを感じることになる。メーターは、小径ステアリングの上から覗き込む格好。エンジン回転計は右端に0があり、針は反時計回りに動く。判読性製に優れているとは言いがたい。
シートはかつてのフランス車のように体をすっぽり包み込んではくれないが、近郊型電車のクロスシートのように長時間の着座を拒絶する存在ではなく、積極的に身を任せたくなる装備として室内にある。ステアリングを切り込んだときの動きに関しても、やはりかつてのフランス車のような露骨なまでのしなやかさを感じるわけではないが、雰囲気は残っており、ドイツ車(もっとはっきり言うと、競合するVWゴルフ)とはひと味もふた味も違う。
外だけ見ると多分にドイツ車的だが、室内のムードやクルマの動きはフランス的で、動力性能面でも燃費の面でも、イニシャルコストやランニングコストの面でも非常にお買い得なのが、プジョー308 Allure BlueHDiである。という結論としたい。
プジョー308 アリュール BlueHDi
全長×全幅×全高:4275×1805×1470mm
ホイールベース:2620mm
サスペンション:Fマクファーソンストラット式 Rトーションビーム
エンジン
形式:直列4気筒DOHCディーゼルターボ 1.5ℓBlueHDi
ボア×ストローク:75.0×84.8mm
圧縮比:16.4
最高出力:130ps(96kW)/3750rpm
最大トルク:300Nm/1750rpm
燃料タンク:52ℓ
燃費:JC08モード 24.3km/ℓ
車両本体価格:304万9000円
同じくDV51.5ℓディーゼル搭載のSW(ワゴン)の試乗記はこちら
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