150ccのスクーターってどうなんだろう? バイク乗りならば一度は考えたことがあるはずだ。ホンダPCXには125と150があるし、ヤマハNMAXやトリシティにも125と155がある。でもなぜ? 150ccにしたところで125ccとたいして性能は変わらないのに、税金が少し高くなり、なにより任意保険のファミリーバイク特約が使えなくなる。だったら125ccでいいのではないか? そんな疑問を抱いていた筆者が、Vespa PRIMAVERA 150に試乗してみた。




REPORT&PHOTO●小泉建治(KOIZUMI Kenji)

125ccでいいじゃない? 150ccは中途半端な感じ……

 スーパースポーツのような高性能なバイクに乗っていると、ときおり気楽にスクーターでノンビリ淡々と走りたくなるときがある。そんなとき、アナタだったら何ccのスクーターを選ぶだろうか?




 最も有力な選択肢は原付二種と呼ばれる125ccまでのクラスだろう。二段階右折や30km/h制限に縛られることがなく、ふたり乗りもできる。それでいて税金は安いし、自動車保険にファミリーバイク特約を付帯させることで任意保険の金額を抑えることができる。




 50ccの原付一種は普通自動車免許でも運転できるのが利点だが、小型以上の二輪免許を持っている人間にとっては魅力に乏しい。前述の二段階右折や30km/h制限によって、フツーに流れに乗って走っているだけで違反切符を切られる可能性があるからだ。




 そしてスポーツバイクと同じようにある程度の運動パフォーマンスを求めるのであれば、250cc以上のビッグスクーターを選ぶだろう。




 そこで最も中途半端に思われるのが、150ccクラスのスクーターだ。動力性能はたいして125ccと変わらないのに税金は少し高くなるし、なによりファミリーバイク特約が使えないのが痛い。125ccと比べるとオトク感がとっても小さい。




 唯一の利点は、高速道路を走れること。




 ただ、多くの150ccスクーターは125ccと車体がほぼ共通だし、どうせ高速道路なんて走れたものじゃないのではないか? 高速を走りたいのだったら素直に250ccを選べば? そう考えているアナタに代わり、スポーツバイクばかりを乗り継いでいる筆者が150ccスクーターを初体験してみたのである。

純正オプションのウインドシールド。小ぶりに見えるが防風効果は思いのほか高く、高速走行にはとてもありがたいパーツだ。

スピードメーターは140km/hまで刻まれ、MPHも併記される。下の液晶パネルには燃料計、距離計、時計が配置されている。

 今回の試乗に供されたのは、ベスパの基幹モデルであるプリマベーラ・シリーズの150(155cc)で、例によって125(124cc)と50(49cc)もラインナップする。




 発進加速は穏やかで、取り立てて平均的な125ccスクーターよりも力強いという印象はない。ただ、125ccスクーターの多くは街中のシグナルグランプリでほとんどの四輪車を置き去りにすることができる発進加速性能を持っているわけで、そういう意味ではプリマベーラ150にも不満を感じることは一切ない。




 で、せっかちな筆者は走り始めて10分と経たないうちに高速入口へと向かった。ゼロ発進ではそれほど力強いとは感じなかった加速力だが、合流時の40km/hくらいからの加速はなかなかのもので、後続車にそれほど気を遣うことなく走行車線に入り込める。

先入観は見事に覆された!

 そして驚いたのは巡航速度の高さで、90km/hくらいだったらエンジンが苦しげに唸ることもなく、ごく快適に走り続けられる。80km/hだと平穏すぎて居眠りできそうなくらい(しないように!)。もちろん公道だからマキシマムを試すようなことはしなかったが、少なくとも100km/hはなんてことなく出せる。




 90km/h巡航ではフレームがワナワナと捩れるような感覚もなく、目地段差の突き上げもしなやかにいなす。どうやらこのあたりがプリマベーラ150にとっての最適な巡航速度ということらしい。




 オプション装着されていたウインドシールドは小ぶりだが防風効果が高く、胸あたりまでの風をうまく遮断してくれるから長距離走行での疲労もほどほどに抑えてくれそうだ。150km/hや200km/hで疾走するようなバイクではないのだから、ウインドシールドはこれくらいがちょうどいい。視界を遮るほど高くはないから、開放感もスポイルされない。




 あくまで道交法で認められているだけで、できれば避けたいものだと想像していた150ccでの高速道路走行だが、そんな思い込みはいい意味で裏切られてしまった。

フロントにはメインキーで開閉できるラゲッジコンパートメントがある。財布、スマートフォン、ウエスなどにピッタリだ。

シート下のラゲッジスペースはこのとおり。筆者が愛用するショウエイのフルフェイスヘルメットは入らなかった。

 思わぬ高速巡航性能に気を良くして一般道へ下りると、なんだかプリマベーラ150のすべての振る舞いが上質で好ましいものに思えてくる。人間というものはつくづく感覚的な生き物である(筆者だけ?)。




 とりわけ感心させられたのは、これだけの高速巡航性能や中間加速の力強さを持っていながら、一般道をゆっくりと走るのも苦にならないということ。世のスクーターには街中での快速っぷりをウリにしているものが少なくなく、それはそれでおおいに魅力的ではあるのだけれど、アグレッシブな性格のバイクは乗り手までアグレッシブに変身させてしまうという弊害を持つ。




 しかしプリマベーラ150であれば、急かされることもなくノンビリ景色を楽しみながら走ることができる。もしかしたら、これも150ccクラスという絶妙な排気量に依るところが大きいのかも知れない。




 125ccであれば、交通の流れをリードできる性能を持たせるためには、やはりある程度はエンジンを高回転型にせざるを得ないだろう。250ccくらいになると、今度は本当に速いバイクになってしまう。




 150ccは、余裕がありながらも必要十分という、町乗り中心にはピッタリの排気量なのかもしれない。




 そして、いざとなれば高速道路に乗れる。これはやはり大きい。「今日は下道でトコトコと楽しもう」なんて言いながらツーリングに出発したものの、出先でゆっくりし過ぎてしまい、結局は帰りに高速に乗りたくなる───そんな経験のある人も多いだろう。雨雲から逃げるように家路を急ぐ、というシーンもバイクに乗っていれば少なくない。




 プリマベーラ150であれば、そんな状況でも心配無用だ。そのうえ大型バイクやスーパースポーツなど、ハイパフォーマンスを知るライダーでも納得できるクオリティと高速スタビリティ、そしてそれらがもたらす高い所有満足度がある。




 150ccのスクーター、おおいにアリでした。

フロントサスペンションはベスパ伝統の片持ちリンク式だ。

155cc空冷エンジンは中間加速の力強さと静かさが印象的だ。

ベスパ・プリマベーラ150


全長×全幅:1852×680mm ホイールベース:1334mm シート高:790mm 車両重量 :130kg エンジン型式:空冷4ストローク 単気筒SOHC 総排気量:155cc 最高出力:9.5kW(12.9ps)/7750rpm 最大トルク:12.8Nm/6500rpm 燃料タンク容量:7L クラッチ形式:自動遠心クラッチ 変速機形式:CVT(連続可変無段変速機) フロントブレーキ:油圧式200mmシングルディスク リヤブレーキ:機械式140mmドラム フロントタイヤサイズ:110/70-12 リヤタイヤサイズ:120/70-12 価格:48万6000円
情報提供元: MotorFan
記事名:「 150ccスクーターはアリなのか? スーパースポーツ乗りの選択〈ベスパ・プリマベーラ150試乗記〉