ホンダは、その固定観念を潔く捨て去り、軽バンにFFレイアウトを採用するという新たな領域に挑戦した。
そして、ホンダ技術陣が投入した新たな技術や創意工夫により、積載性やトラクションといった難題を解決し、乗り心地や疲労軽減など、軽商用車には無縁と思われた、新たな価値観をもたらした。
レポート●安藤 眞(ANDO Makoto)
図版解説●安藤 眞(ANDO Makoto)/編集部
フォト●井上 誠(INOUE Makoto)
ホンダ四輪の始まりが商用軽トラック「T360」だというのは、カーマニアの間では知る人も多い。2ストロークの360㏄2気筒エンジンが全盛だった当時の軽トラック界に、なんと4 気筒DOHCエンジンを搭載していたというのがホンダらしい。そして、今日のN-VANの始祖とも言えるのがFFレイアウトのステップバンだ。
FFプラットフォームの工夫によって創出した大空間
スムーズな乗降と自然な着座姿勢を実現
破れの発生しにくい運転席シート
乗降の際にお尻や太ももにかけて、体重が掛かりつつ擦れるシート座面側部は、シートの縫製部をきっかけとして破れが起こりやすい。縫製ありとなしで比較したホンダの耐摩耗テストでも同様の結果となり、その知見から当該部分の縫製をなくすことで、シートのタフネスを向上した。
ブレーキペダルは疲れにくいリンク式に
CVT、MTともにシフトレバーを移設
衝撃吸収機構ハンドブレーキバー
ドライバーに優しい空調
荷室内を最大限に活用するワイパー配置
一般的なリヤウインドウ下に配置されるワイパーでは、モーターユニットが荷室内に張り出して積載時にデッドスペースをつくってしまう。N-VANではモーターが荷物と干渉しない配置のリヤワイパー上置きとされ、荷室が最大限活用できる。
空間を使い切るルーフリクライニング
荷物の積載に配慮した電装品配置
6速MTのシフトケーブル配策の関係から床面に配置されたSRSエアバッグのユニットだが、ウォークスルーやフルフラット時にユニット周囲を踏んだり荷物の荷重が加わって損傷しないようにプロテクトブラケットを装着した。
最小限のスペースに配置
適切に収納された三角表示板と車載工具
停止表示板やパンタグラフジャッキは、ラゲッジルームの右壁に収納。荷物を全部降ろすことなく、緊急時に対応できる。
高強度ハイテン材を広範囲に採用
効率よく施したN-VAN専用設計
シーム溶接と構造用接着剤
左右の剛性差を最小化
左側衝突の安全性を高めるフック構造
キャビンを強固にするドアインピラ—
ドア取り付けシートベルトの衝突対応
頭部保護インテリア
内圧保持式エアバッグ
S07B型 直列3気筒660ccエンジン
エンジン型式:S07B
排気量(㏄):658
種類・気筒数:直列3気筒
弁機構:DOHC12バルブ
ボア×ストローク(㎜):60.0×77.6
圧縮比:12.0
最高出力(kW[㎰]/rpm):39[53]/6800
最大トルク(Nm[㎏m]/rpm):64[6.5]/4800
使用燃料:レギュラー
燃料タンク容量(ℓ):27(FF) 25(4WD)
よりハイパワーなターボエンジン
エンジン型式:S07B
排気量(㏄):658
種類・気筒数:直列3気筒ターボ
弁機構:DOHC12バルブ
ボア×ストローク(㎜):60.0×77.6
圧縮比:9.8
最高出力(kW[㎰]/rpm):47[64]/6000
最大トルク(Nm[㎏m]/rpm):104[10.6]/2600
使用燃料:レギュラー
燃料タンク容量(ℓ):27(FF) 25(4WD)
高効率エンジンを商用バンに最適化
停止アイドルストップ対応スターター
自然呼気エンジンのVTEC機構を廃止
ロングストロークによるタンブル強化
流動強化を促進する燃焼室
6速MT搭載への対応
耐久信頼性を向上させる強化対策が施された。チェーンケース形状の変更による剛性アップと、エンジンマウント用スタッドボルトのサイズアップ。排気バルブの細軸化の廃止やバルブスプリングの荷重アップなど。
商用向けに開発されたCVT
S660用ベースの贅沢6速MT
フィットサイズのCVT用ディファレンシャル
トルク容量と応答性が高まり登板性能も向上
MTのファイナルも強化
CVTも強化
ドライブシャフトにも強度と静粛性対策
12インチタイヤの採用に伴いドラシャの等速ジョイントの使用角度が高まる。耐久性確保としてインナーの強度向上を図った。ブーツに関しては材料と形状を見直し、操舵時のブーツの樹脂同士が擦れる音を抑制。
商用用途対応で各部を徹底強化
新工法の採用で強度・耐久性を強化
シャシーもN-VAN用に専用設計
快適な乗り心地のサスペンション
アクティと比較してシャシー最大の変更ポイントはリヤサス形式の変更だ。板バネのリーフリジッドからプログレッシブスプリングを採用したトーションビーム式となり、乗り心地は圧倒的に良くなっている。
板厚アップで強化
リニアに高まるバネ定数
高性能ダンパーを商用車として初採用
バンプタッチのショックを軽減するための変更
バッファクリアランスを使い切ってバンプラバーとダンパーが接触するバンプタッチした際も、アクティのゴム製からウレタン製への素材変更と形状の見直しで、荷重の立ち上がりを和らげショックを軽減している。
前後入力ショックを上方にいなす
エンジンマウントの最適化
ハイドロリックブレーキブーストシステム
夜間の歩行者認識に対応
安心感があり、意のままのハンドリングをもたらす
車線維持支援システム(LKAS)と路外逸脱抑制機能を搭載
N-BOX 同様に、高速道路などで車線の中央に沿って走れる用にステアリングをアシストし、車線を外れそうになると警告音とディスプレイの表示で注意を喚起するLKASを搭載。警告後さらに車線を外れそうな際にはクルマを車線内に戻すためにステアリングを制御してくれる。業務で長時間運転するドライバーにはありがたい機能だ。
ACCの制御も商用車に最適化
モーターファン別冊ニューモデル速報 Vol.575 ホンダN-VANのすべて
詰める遊べる大開口空間
左側センターピラーレス&助手席ダイブダウン。実用性マックスの新提案「軽バン」
ドライビングインプレッション
ライバル車比較試乗
開発ストーリー
メカニズム詳密解説
デザインインタビュー
使い勝手徹底チェック
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