REPORT●石川順一
ボールペンはビジネスパーソンにとって身近な相棒であり、その持ち主のキャラクターや趣味を象徴するものである。スーツや作業着の胸元を飾る小粋なアクセサリーにもなるとあって、何気にこだわっている人も多い。
そんなボールペンをメインとしたブースが東京モーターサイクルショー2019会場の一角にあった。それが荒木エフマシン株式会社の「MechaSEA」だ。
ボディはジュラルミンの削りだしで作られており、ヘアライン仕上げも相まって美しいの一言。手に持ってみるとほどよい重さで、長時間ペンを走らせていても疲れにくそう。
それにしても、ボールペンとバイクなんてかなり縁遠い気がするし、モーターサイクルショーでブースを構えていることが不思議だ。メーカーのノベルティやグッズというわけでもないし、いったいどんな関係があるのだろう。
実はボールペンの販売はあくまで資金調達の手段。その売り上げは他のメーカーやカスタムショップではやらないような趣味性の高いカスタムマシンやパーツの製作に回しているのだという。
その一例が現在進行中のビモータSB6のミニサイズレプリカ。スズキGAGのエンジンを始めとする市販部品を使ってはいるものの、フレームやクランクケースなど流用ではすまない部品を3D図面から設計して作成する気合いのいれようだ。
面白いことに、こうした設計データはすべてオープンになっている。工作機械さえあれば、誰でも同じレプリカがつくれてしまうのだ。普通のカスタムメーカーではまず真似できない。「データいつも活用させてもらってます!」という声が全国から飛んでくることもあるのだとか。
大事なデータを公開していいのかと心配になるが、あくまで荒木エフマシン株式会社にとってカスタムは趣味の延長だという。顧客の意見を取り入れたり、トレンドを考え始めると好きなものがつくれなくなるので、あえて商売にしていないのだ。
ものづくりへの面白い姿勢を聞かされるとさらに興味が湧いてくるし、思わずボールペンを購入して支援したくなってしまう。ある種、MechaSEAの販売は夢のマシンをつくるためのクラウドファンディング……と言えなくもないだろう。