パワーステアリングのアシストは電気モーターによって行われ、ステアリングコラム上のステアリングシャフトに直接伝えるか、またはラックに直接伝えることで、アシストする。また電気モーターによるアシスト力はウォームシャフトギアユニットを通して伝達され、このギアユニット付ステアリングシステムで使用する自動調心軸受には、さまざまな要件が同時に存在する。
まず、自動調心軸受は固定側軸受としてウォームシャフトを支持するため、アキシャル方向とラジアル方向で発生する荷重を支えなければならない。次に、自動調心軸受はシステム内の騒音を打ち消す必要がある。これは、ウォームシャフトがはす歯を通して電気モーターのトルクをウォームギアに伝達し、その結果、ウォームシャフトが垂直方向に動いて、自動調心軸受を傾けるため。従来の玉軸受の場合、この条件では走行騒音が大きくなり、摩擦トルクも増大するため、ギアユニットの性能に悪影響を及ぼす可能性がある。
このため、シェフラーは自動調心軸受を最適化し、特別に湾曲した「球面キャップ」(ボールソケット)を備えた。この設計によって、自動調心軸受自体が傾くことで、摩擦トルクや騒音を増大させることなく、ウォームシャフトの回転を補えるようになった。さらにもう一つの利点として、ウォームシャフトとウォームギアの間に隙間が生じないように、ウォームシャフトにラジアル方向にプリロードをかけることができ、これにより、ステアリング方向が変わるたびにウォームシャフトの回転方向が変わって、相対する歯面が接触することで生じる、いわゆる「カチャカチャ音」を低減することができる。また、新しく設計した軸受の回転動作が、ハウジング内のミスアライメントを補正する。
ドライバーは今や、車内が静かであることに慣れており、アシストステアリングが必要な操縦時や駐車時に発生する騒音に対して、わずらわしく思うことがある。これはとりわけ、多くのステアリング動作が矢継ぎ早に実行される自動駐車や、エンジン音で他の騒音や振動をかき消すことのない電気自動車に当てはまる。今回の新しい自動調心軸受によってシェフラーは、幅広く電動モビリティを普及させるために電気駆動システムのような大型のものから、小型部品レベルまで様々なソリューションを提供出来ることを示している。