REPORT●ケニー佐川(SAGAWA Kentaro)
PHOTO●山田俊輔(YAMADA Shunsuke)
E-Vinoは原付1種免許で乗れる電動スクーターだ。つまり、50ccスクーターと同じで16歳から免許も取れるしクルマの免許を持っていれば誰でも乗れる。免許が必要な乗り物の中で最も敷居の低い乗り物と言えるかもしれない。
実際に乗ってみると、まずあまりの扱いやすさに驚くはず。同じ原1の50ccスクーターと比べても圧倒的に軽量(E-Vino:68kg、Vino:81kg)だし、モーター音も静かで実にフレンドリー。特別なスキルやバイクに乗った経験がなくても、たぶん自転車に乗れる人なら跨った瞬間に「あ、コレなら乗れる」と直感するはずだ。自分の小学生の娘がバイクに乗りたいと言ったときに、最初に試乗させてあげたいとマジメに思っているぐらいである。可愛らしいデザインも含め、そういったE-Vinoの平和でほのぼのした感じが人々の心のガードを下げ、暮らしの中にもすっと入っていけるのだろう。だから商店街の人混みや子供の多い住宅街でも受け入れてもらいやすいのだと思う。
反面、バイクとしては物足りない感じも。公道ではいつも煽られ役になってしまう50ccスクーターよりさらに非力でスピードもあまり出ない。ちなみにE-Vinoには3つの走行モードがあるのだが、省エネの「スタンダード」ではメーター読みで35km/h程度。少し強めの「パワー」で40km/h超、坂道や追い越し用の最強「ブースト」でも50km/hまでは届かず。電動ならではの出足の良さはあるのだが、正直もう少し強い加速が欲しいところ。
そういうこともあって、ついついブーストを使いまくってしまうのだが、すると今度は凄い勢いでバッテリーが減っていく。残電計にはフル充電100%から1%刻みで表示されるのだが、信号で止まるごとに数パーセントずつ削られていき、編集部の周辺を10km程度走っただけで残電量は半分以下になっていた。気温が低かたったことも影響していると思うが、30%を切ると明らかに加速も鈍くなってくる。カタログには航続距離はフル充電で29kmとあるが実質的にはその半分ぐらいと思っていいだろう。
特にヤバいのが上り坂。編集部の地下駐車場からの出口がけっこうな勾配のスロープになっていて、バッテリーが元気なうちは苦もなく登れても残電計が点滅し出すと苦しくなる。車重68kgと軽いのが救いで押し歩くこともできなくはないが、それは筋ではない。というわけで、実用を考えればバッテリー2個積みをおすすめしたい。バッテリー交換はものの30秒〜1分程度でできるので簡単だ、とフォローしておこう。
まとめると、扱いやすさ馴染みやすさは最強だが、遠出はできずスピードやエキサイティングを求める乗り物ではないということ。通信や物流で使われている「ラスト・ワンマイル」という言葉があるが、これは“最後に残った短いがやっかいな距離”という意味で、そこの効率をいかに上げるかが今の課題になっている。これをモビリティに当てはめて考えた場合、通勤・通学における駅から会社や学校まで、あるいは自宅までのワンマイルを電スクでつなげればとても便利だと思う。シェアリングとの親和性も高いだろう。もちろん、駐輪スペースや充電の問題はあるが、そういう使い方こそE-Vinoを活かせると思うのだがいかがだろう。
認定型式/原動機打刻型式 ZAD-SY11J/Y809E
全長/全幅/全高 1,675mm/660mm/1,005mm
シート高 715mm
軸間距離 1,160mm
最低地上高 95mm
車両重量(バッテリー装着) 68kg
1充電走行距離 29km(30km/h 定地走行テスト値〈標準モード〉)※1
最小回転半径 1.8m
原動機種類 交流同期電動機
定格出力 0.58kW
最高出力 1.2kW(1.6PS)/3,760r/min
最大トルク 7.8N・m(0.80kgf・m)/330r/min
バッテリー種類/型式 リチウムイオン電池/ESB4-0
バッテリー電圧/容量 50V,10AH(10H)
バッテリー充電電源 定電流・定電圧充電
充電時間 約3時間 ※2
駆動方式 ギア
1次減速比 9.400
フレーム形式 バックボーン
キャスター/トレール 24°05′/70mm
タイヤサイズ(前/後) 90/90-10 41J(チューブレス)/90/90-10 41J(チューブレス)
制動装置形式(前/後) 機械式リーディング・トレーリング(ドラム)/機械式リーディング・トレーリング(ドラム)
懸架方式(前/後) テレスコピック/ユニットスイング
ヘッドランプバルブ種類/ヘッドランプ ハロゲンバルブ/12V,35/35W×1
乗車定員 1名