TEXT:安藤 眞(ANDO Makoto)
レクサスブランドにエントリーモデルとして新たに投入された「UX」。2.0ℓの自然吸気ガソリンエンジン仕様とハイブリッド(HV)仕様のふたつのパワートレーンを用意する。エンジンは基本骨格を共用しながら、それぞれの要求性能に見合うよう、バルブタイミングやピストン形状、吸排気系などを専用設計している。
驚かされたのは、シリンダーヘッド本体まで作り分けていること。純エンジン仕様とHV用では、吸気ポートの形状が異なるのだ。
いずれもタンブル流を強化して急速燃焼させるコンセプトだが、タンブル流を強めるには、吸気の流れを意図的に偏らせる必要があり、やりすぎると流量係数が低下して体積効率が悪化し、最高出力が高めにくくなる。そのバランス点が、エンジン単体運用とHVでは異なるため、わざわざ吸気ポート形状を作り分けたというのだ。
具体的には、HV仕様のほうがより高タンブルを発生させるため、ポートの下側をスキーのジャンプ台のように持ち上げている。こうすることで、吸気はバルブの傘面を舐めるように流れて指向性が強まり、流速が高まってタンブルが強化される。それによって犠牲になるパワーは、モーターアシストで補えるからOKだ。
違いは吸気ポートの形状だけなので、金型は共用しながら、ポート部分の中子だけ変えれば良い……のかと思ったら、一目で区別が付かないと製造現場が困るから、外観も変えているのだそうだ。
両エンジンのもうひとつの大きな違いが、バランサーの有無だ。バランサーを付ければ、2次振動が減って振動騒音性能は高まる一方、駆動損失が増すから、燃費には不利になる。だから、燃費重視かつ基本的にアイドリングしないHVにはバランサーは付いておらず、純エンジン仕様のみ装備している……のかと思ったら、UXのそれは反対なのだ。
近年はエンジンの稼働部品の軽量化が進み、起振エネルギーそのものが小さくなっているため、2.0ℓエンジンならバランサーは省略される傾向にある。しかし、モーター駆動とハイブリッド駆動を繰り返しながら走行するHVの場合、双方の振動レベルの差が大きいのは、違和感のもととなる。しかも全開加速時には、上乗せされたモーターのトルクでエンジンマウントがストッパーに当たり、その状態でエンジンの高負荷振動が発生するから、勇ましい音が伝達されやすくなる。だからエンジン本体が発生する振動を、なるべく抑えておく必要があり、HV仕様のみ、バランサーを付けたというわけだ。
こうした作り分けの甲斐もあり、純エンジン車のUX200とHVのUX250hでは、明確にキャラクターが異なる。軽快で加速サウンドもスポーティな前者に対し、後者は重厚かつ静粛で、大排気量エンジン的力強さも併せ持つ。どちらを選ぶかは好みの問題とはいえ、「レクサス」のイメージに合うのは、やはりUX250hではないかと思う。