インテリアも今までの雰囲気を受け継いでいるが、新型ではさらに原点回帰を意識したようだ。5連の丸型メーターは空冷時代をイメージさせるデザインとなり、メーターバイザーもクラシックなテイスト。中央のタコメーターはアナログのままであることも、911ファンには歓迎されるだろう。
そしてメカニズムも大きく進化している。まずエンジンはボア×ストロークはそのままながら、ふたつの吸気バルブのリフト量に差をつけてスワールを発生させ燃焼効率をアップ。またピエゾインジェクターの採用、新型ターボチャージャーの採用、インタークーラーの移動による効率改善など、様々な改良が加えられている。
具体的にいうとターボチャージャーはタービン径を3mm拡大して48mmに、コンプレッサー側を4mm拡大して55mmとなり、エキマニの形状は左右で完全に対称となった。またインタークーラーの位置は先代はリヤタイヤの後ろだったが、新型ではエンジンの上に移動。これにより面積は14%拡大したという。出力としては今回のカレラSで450ps/6500rpm、530Nm/2300〜5000rpmを達成している。これは先代よりも30ps、30Nmアップしている数字だ。
PDKは新たに8速となった。レシオカバレッジを広げ、各ギヤをより近づけている。7速と8速は実質クルージング用で、最高速には6速で到達するという。ボディはアルミの使用率を大幅に上げた結果、スチールの使用比率は先代の63%から30%まで減少。外板パネルはほぼすべてアルミ製となっている。
走り出した瞬間、ボディのしっかり感が伝わってきた。フロアやステアリングまわりの剛性の高さにより、各部の動きの精度が非常に高い感触だ。クルマ全体のグレードが大きく上がったという印象を受ける。エンジンはどの回転からでも即座に分厚いトルクを生み出してくれるので、ストレスのない走りが可能で、街中での乗り心地も非常に快適だ。
ペースを上げていくと、まず感じるのはステアリングのリニアリティの高さ。特に中立付近における感覚が優れていて、路面と前輪の感触がしっかりと把握でき、またわずかな操舵に対しても素早く、素直にクルマが反応する。試乗車はリヤアクスルステアリング付きだったこともあり、ボディの大きさをまったく感じさせない、俊敏な反応が楽しい。
エンジンのフィールやレスポンスはまるでターボを感じさせず、まるでNA時代に戻ったかのようだ。その性能を引き出す8速PDKの制御も素晴らしい。複数のデータから判断した先読み制御も行う機能もあり、ドライバーの意図を見透かしたかのようなシフトチェンジを行なってくれるので、オートモードでも十分だ。
次はサーキットに移動し、よりハイスピードでの走りを試してみた。まず驚くのはコーナーでの安定感だ。まるで4輪が路面に張り付いているかのようなので、安心してアクセルを開けていける。フロントのトレッドが先代より46mm広がっている効果は相当に大きい。高速コーナーからタイトコーナーまで、ステアリングの動きに対する反応は狙い通りで、遅れや過敏さはまったくない。これはステアリングのギヤ比が先代に対して6%(リヤステアありの場合。無しは10%)ダイレクトになっていることも大きな効果を生んでいるのだろう。
ところで新型911にはウエット・モードが装備されたことも話題となっている。これはホイールハウス内のマイクロフォンが路面の水を検知するシステムで、ステアリング上のロータリースイッチを左に回せばセットできる。
水を撒いたショートコースで走ってみたが、多少ラフにアクセルを踏み込んでも、まるで挙動は乱れないし何事も起きない。ステアリングもどっしりと安定している。思い切り踏んでみるとわずかにテールが滑るが、それも一瞬で収まる。450ps、530Nmのリヤエンジン車でこれは驚きだ。
まずはカレラSとカレラ4Sがデビューした新型911。つい最近は同じくS/4Sのカブリオレも登場するなど、そのバリエーションはこれからどんどん広がっていくのだろう。
次は素のカレラ、そして7速MTの登場だろうか。そしてタイプ992はモデルライフ中にモーターの搭載も噂されている。911のハイブリッドがどのような世界を見せてくれるのか、それも大いに楽しみだ。
SPECIFICATIONS
ポルシェ911カレラS
■ ボディサイズ:全長4519×全幅1852×全高1300mm ホイールベース:2450mm ■車両重量:1515kg ■エンジン:水平対向6気筒DOHCツインターボ 総排気量:2981cc 最高出力:331kW(450ps)/6500rpm 最大トルク:530Nm(54.0kgm)/2300-5000rpm ■トランスミッション:8速DCT ■駆動方式:RWD ■サスペンション形式:Fマクファーソンストラット Rマルチリンク ■ブレーキ:F&Rベンチレーテッドディスク ■タイヤサイズ:F245/35R20 R305/30ZR21 ■パフォーマンス最高速度:308km/h 0→100km/h加速:3.7秒 ■車両本体価格:1660万円
GENROQ 4月号
2月26日(火)発売 定価980円(税込)
●SUPER SPORT2019
ポルシェ911、ランボルギーニ・ウラカンEVO、マクラーレン600LTスパイダーなど、最新マシンを徹底解剖
●アストンマーティン 最新事情:DBSスーパーレッジェーラ試乗/本国ファクトリー取材
●SUV NOW:ポルシェ・カイエンターボvsマセラティ・レヴァンテトロフェオvsアルファロメオ・ステルヴィオQ4/ランボルギーニ・ウルスとLM002
●ジャガーFタイプSVRとアウディA8で行くスノードライブ1600kn