アルファロメオのSUV・ステルヴィオにディーゼルエンジン仕様が追加されたのはMotor-fan.jpでも既報のとおり。早速試乗の機会があり、都内で運転してみた。果たしてどのようなクルマなのか。


TEXT●萬澤龍太(MANZAWA Ryuta)


PHOTO●小泉建治(KOIZUMI Kenji)

なるほど、キビキビしているな

 こんな仕事に就いていながら、社内/局内でも乗ったことのないクルマが多い立場である。アルファロメオにSUVが出たという報せを聞いたのはいつのことだったか、いずれにせよずいぶん前の話であるのは確かだ。ステルヴィオというそのSUVは、Dセグメントセダンであるジュリアよりも明朗快活で、胸のすくような走りを堪能できるとあちこちから聞かされていた。




 SUVなのにセダンよりキビキビしている。一般的にSUVのほうが重心は高く相対的に重量は増し、だから加減速時のピッチングや旋回時のロール剛性などに劣るというのが、これまでいろんなクルマに乗ってきた自身の経験則だ。もしそれを実現しているのだとすれば電子デバイスに電子制御でシャシをコントロールしているに違いない。




 ——そんなことを思いながら初めてのステルヴィオに対面した。試乗車は20インチと18インチホイール装着車の2種が用意されていてMFjpチームは20インチを選択、もちろん全車ディーゼル仕様である。しかしステルヴィオって言ったらアルファじゃなくてザガートだろう(アレは「ステルビオ」だが)。




 走り出しは編集長KZMの運転で、助手席に乗車してみた。信号待ちとか街中の低速走行とか、そんなシチュエーションでは静粛性が高く、コレほんとうにディーゼルなの?と訊いてしまったくらいである。「ディーゼルだよ、ほら」とKZMが窓を開ければ、なるほど耳慣れたディーゼルノック音が聞こえてくる。キャビンの吸音性能をよほど高めてあるのだろう。しかし室内の会話に不自然さはなく、上手に演出してある印象だ。

縦置きだけに右ハンドルでもペダルレイアウトに違和感はなし。フラットなダッシュパネルが2眼メーターの部分だけ隆起するところが、往時のアルファロメオを偲ばせる。

 いっぽうで街中の停止発進加速を繰り返すようなシーンだと、少々乗り心地が硬いイメージがある。試乗車が履いていたのはピレリ・スコーピオンヴェルデで街乗り用のSUVタイヤ、以前にも硬いと思ったことがあるのを思い出した。なお、タイヤサイズ255/45R20。標準指定空気圧は前230MPa/後250MPaのところ、測ってみたら前後とも270MPa充填されていた。このあたりもゴツゴツする印象を高めているだろう。




 高速道路に入って走り出すとエンジン回転も高まり、さすがにキャビンにディーゼルノックが届いてくるが不快なほどではまったくない。それより横で運転しているKZMの姿を眺めていると、修正舵が少々多そうなのに気がついた。直進状態から少し操舵するとヒュッとクルマの鼻先が動き、なるほどこれは相当「キビキビしている」という印象につながるだろう。しかしドライバーは、同乗者に「グラリ」を感じさせないように気を使うかもしれない。

比較的平面な3座構成の後席。今回は試す機会がなかった。
乗っていて何にも感じなかった前席。ということは自分にとって相性がいいということだ。


これ、ほんとうにSUVなのか?

 運転を交代。発進からテンポの良いシフトチェンジを繰り返して、1820kgの巨体はストレスなく進んでいく。減速時のシフトダウン制御は目の覚めるような……とまではいかないものの、不要なギヤステイや回転残しのような挙動はなく好印象だ。ディーゼルエンジンの振動と騒音は助手席に乗っているときとさして変わりなく、強いて言えばハンドルやペダルなど実際に触れている部分が多いだけに感触が伝わってはくるが、こちらもいい意味で「普通」である。




 そして自身が運転してみて、やはり操舵感覚が気になった。ステアリング中立からの立ち上がりが急で、少し手を動かしただけでクルマがフイッと動くのだ。KZMによればステアリングのギヤ比は12、猛烈な数字である。それに対して、アクセルペダルのガバ開けにしても制動時にしても前後方向の姿勢変化は少なく、重くて背の高いクルマを動かしているという印象は薄い。磐石なピッチに柔軟なロール、なるほどこれはセダンを上回るという多くの意見と共通する感想だ。かといって、他ブランドで時折体験する「デカくて重いクルマが不自然に異様な動きと言えるくらいに曲がる」という人工的な感触はないのが驚きである。




 考えてみれば「ステルヴィオ」というのは彼の地の有名な峠の名称、旋回性能に重きを置いたのもうなずける。果たして前軸重がもっと軽い4気筒ガソリンエンジンではいかがか、スーパーパフォーマンスのV6ではどうか、同じパワートレインのジュリアではどんな感触か。いろいろ機会をみて試してみたい。

新たに追加された2.2リットルのディーゼルエンジン。アルミブロックを用いるのが特徴だ。

いかめしいデザインの多いSUVカテゴリにおいて、比較的つるりとしたプレーンなイメージのステルヴィオ。フロントバンパーのロワレベルが下に巻き込んでいる形状なのが個人的に好印象。

リヤウインドウはかなり寝かせたデザイン。20インチホイールはさすがの迫力をかもし出している。

ALFA ROMEO STELVIO


2.2 TURBO DIESEL Q4




全長 × 全幅 × 全高:4690 × 1905 × 1680mm


ホイールベース:2820mm


トレッド(前/後):1610/1650mm


車両重量:1820kg


エンジン形式:直列4気筒ディーゼル


総排気量:2142cc


ボア × ストローク:83.0 × 99.0mm


圧縮比:15.5


最高出力:154kW(210PS)/3500rpm


最大トルク:470Nm/1750rpm


駆動方式:AWD


変速機:8速AT


ステアリング形式:ラック&ピニオン


サスペンション(前/後):ダブルウィッシュボーン/マルチリンク


ブレーキ(前/後):ベンチレーテッド/ベンチレーテッド


乗車定員:5名


燃料消費率:16.0km/ℓ@WLTC
情報提供元: MotorFan
記事名:「 これ、本当にディーゼルSUVなの?——アルファロメオ・ステルヴィオ