REPORT●ケニー佐川(SAGAWA Kentaro)
昨年末に発表された「S22」はBATTLAX 35周年のメモリアルイヤーに相応しい先進技術が注がれたモデルであり、高い評価を受けた従来の「S21」の後継モデルとして全方位的に性能が高められている。「ライバルは自分自身。S21のすべてを凌駕する」という目標を掲げて開発に挑んだS22はストリートにおけるドライグリップ、軽快性、ウェット性能すべてにおいて妥協のない性能を備えたブリヂストンの自信作だ。
技術的なポイントとしては、まず新設計のトレッドパタンに注目したい。トレッドパタンとは平たく言えば溝模様のこと。ショルダー部分(中間バンク部分)の溝/ブロック比率を高めて、つまり溝の面積を増やすことで排水性を高めてウェット性能を向上させているのが特徴だ。同時にパタン剛性を最適化することで軽快性も高めている。特にフロントの軽快性はブリヂストンの高速テストコースでも体感できたことは以前のインプレッションでもお伝えしたとおり。見た目も「日本刀」をイメージしたデコレーショングルーブ(デザインのための模様)をS21から継承しつつ、さらに洗練されてスマートな印象になっている。ちなみにS22はS21に比べてブロックのピッチを細くすることで、トレッド面を動かして早く発熱するようにチューニングされているそうだ。
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今回、ゴムにも新設計コンパウンドが採用されている。フロントのセンターゴムとリアのショルダー部分に使われるトラクションゴムに含まれる樹脂の配合を最適化することで、低温域を含む幅広い温度領域でのドライグリップ性能向上に貢献しているとのこと。つまり、ブレーキングにおけるフロントの踏ん張り感とコーナー立ち上がりでのリアのトラクション(路面を蹴る力)だ。
また、リアのセンター部分には2輪タイヤ初の「微粒径シリカ」が採用されたこともトピックだ。シリカは水との親和性が高く、細かいシリカ粒が路面と接触する面積を増やしたことで、路面との凝着力が高まりウェット性能も向上している。
さらにFIM世界耐久選手権(EWC)のタイヤ開発で培われたブリヂストン独自の開発技術「ULTIMAT EYE(アルティメット アイ)」を活用して、接地面におけるタイヤの動きを細かく把握することで、S21対比で接地後方の滑り域を減少。グリップ性能と軽快性を向上させながらライフ性能も維持している。開発者の話では、究極の耐久性が試されるEWC用タイヤの開発で得られた知見はストリート用タイヤ開発にも活かせる部分が大きいそうだ。
二輪用タイヤとして後発だったブリヂストンは、もともと国内をメインマーケットと定めてタイヤ作りを目指してきたという。自分自身、22年前に発売されたBT22の始祖に当たるBT-56から試乗してきた経験があるが、歴代のブリヂストンタイヤは総じて剛性感が高く比較的乗り味がカチッとしている印象を受ける。それもやはり日本の道路環境と関係があるのかもしれない。
開発者によると、ブリヂストンでは平坦でキメ細かいアスファルト路面が普及した日本の道路を想定して、空気をしっかりと入れて接地圧を高める方向でのタイヤ作りをしてきたそうだ。そのためサイドウォールの剛性をいたずらに下げることなく、逆にトレッド面はしなやかに作られているという。
一方、海外ブランドの場合はたとえば超高速道路のドイツ・アウトバーンでも路面にはけっこうな凹凸があったり、市街地は石畳が多く残っていたりと路面状況が日本に比べて複雑で多様である。それを前提にタイヤも空気圧を下げて接地面積を広げる方向性でチューニングされていたり、ダンピングを稼ぐためにサイドウォールを軟らかめに作っているケースも目立つようだ。その話を聞いて他ブランドを思い浮かべると、フィーリング的にも腑に落ちる部分がある。これは良い悪いではなく、そういう味付けがされているということで、走る場所やライダーの好みによっても評価は分かれるところだろう。
「S22はドライグリップ、軽快性、トラクション、ウェット性能などすべての性能において、S21を上回るパフォーマンスを備えたタイヤ」と開発者が豪語するだけのことはある。前回お伝えしたインプレッションでの好印象は、そこに投入されたテクノロジーによっても証明されているのだ。
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