2018年11月に新色が登場したCBR250RR。デビューは2017年5月だったが、今も同クラスの最高峰として君臨する贅沢な一台だ。試乗車はグランプリレッドのABS。その価格は税込みで806,760円。ライバルと比較すると20万円程高価なモデルである。果たしてその乗り味は?




REPORT⚫️近田 茂(CHIKATA Shigeru)


PHOTO⚫️山田俊輔(YAMADA Shunsuke)

低く身構えたフロントマスクが精悍。エンジン冷却も考慮して空力特性が追求されている。

ホンダ・CBR250RR・・・・・・756,000円〜

2017年5月の発表試乗会で披露されたストリップモデル。美しいフレームワークはカウルで覆ってしまうのが惜しい気もしてくる。

スピードシェイプとうたわれたダイナミックなデザイン。ほぼ最終段階に近いスケッチだ。

エンジン、フレーム、カウルを示す初期のラフスケッチ。余談だがこの絵のリヤサスペンションはプロリンク機構を備えていない。

 八ヶ岳のワインディングロードをメインステージに開催された2017年デビュー当初の試乗会では、アグレッシブで逞しいスタイリングを始め、実にスマートに決まるスポーティなライディングポジション。フットワークの良い前後サスペンションに元気の良いパワフルなエンジン等、上等な出来ばえに驚かされたのを、今でもハッキリと覚えている。


 ただしチョット本音を吐露すると、素直な気持ちとして「良くて当たり前」!と思えてしまったのも正直な感想だった。試乗後の高評価に間違いはないのだが、高価な価格設定故にそれも薄まって感じられてしまう。以前ヤマハがトレールモデルのWR250Rをリリースした時と全く同じ思いにかられた。評価は素晴らしい。本音で欲しい! でも価格がお高いのである。




 コストパフォーマンスについての価値観やお値段についての金銭感覚は人それぞれの事なので一概には明言できないが、あくまで私見を述べると高価な物は選択肢から外れ(外し)てしまう傾向がある。にも関わらず今回CBR250RRに乗ってみると、改めて「良い物は良いな」


という思いにかられたのも正直な感想だ。その乗り味からは高い金額を支払うだけの満足感が得られる事が再認識できたからである。



ハイパフォーマンスと洗練された操縦性

 筋肉質なフォルムは如何にも走ってくれそう。鋭い面構えからヒップアップでフィニッシュするウェッジシェイプに仕上げられた外観デザインは精悍な印象。ラジアルタイヤの標準装備を始め、最新技術が投入されたエンジン。上質な働きぶりを披露する前後サスペンションとブレーキ。跨がると実にスマートにフィットするライディングポジション等、格上の仕上がりが直感できる。




 ライダーの上体は軽い前傾姿勢。適度なバックステップと遠すぎないハンドル位置に無理はなく、下半身の筋力を生かしてごく自然な感じでスポーツする気分になれる。市街地やツーリングでもなかなか快適である。しかも峠道やサーキットでの積極的な体重移動等の操縦がしやすく、スポーツ走行が思いのままに楽しめた。


 ショートストロークのツインエンジンは実に軽やかな噴き上がりを発揮。3500rpmからモリモリとトルクを増す柔軟な出力特性は市街地でも扱いやすい。レッドゾーンは14,000rpmから。その気になれば回転計のグラフは一気にそこまで飛び込むが、REVインジケーターは10,500rpmから点灯を始めて適切なシフトアップを促してくれる。6000、そして8000rpmを超える当たりの小気味よさとパンチ力は侮れないものがあった。トップギヤ100㎞/hクルージング時のエンジン回転数は7000rpmだ。


 


 前後サスペンションは固くシッカリした剛性を確保しながらも決して乗り心地をスポイルしない巧みなフットワークを披露。操舵レスポンスも素直でとても扱いやすい。コーナリング中も旋回ラインがピタリときまる安定性を発揮。バイク自体がキチンと定状円旋回を保つかのような綺麗なラインを描いてくれる点にも感心させられた。




 ラップタイム計測もできるフルデジタルメーターは表示が4パターンから好みに設定できる。エンジンパフォーマンスは3モードの選択が可能で、スロットル操作に対するレスポンスがダイナミックにもなるし、優しく穏やかにもできる。この他ラジアルタイヤの装備も含めて、ライバルには無い自慢できる魅力的要素に溢れている。CBR250RRを構成する部品ひとつひとつとその働き具合に〝こだわり” を持つと、価格差も納得できるだけの価値ある魅力が理解できるだろう。


 


 例えば合理的設計でスリムさを極めたエンジン。ウォーターポンプ位置のカムシャフト直付け方式は、あのRC213Vと同じ。


 ライバルには無いスロットルバイワイヤシステムは、前述のようにライダーのスロットル操作に対するレスポンスが3モードから選べる。ごく自然なレスポンスを発揮するスポーツモードに対してスポーツ+ではよりダイナミックで俊敏なハイパフォーマンスを発揮。逆にコンフォートを選択すれば、穏やかなレスポンスとなり、丁寧で優しい走りを披露するのに良い。雨中走行やタンデムでは好都合である。




 前後サスペンションの仕事ぶりやブレーキタッチの良さもしかり。これまで自分の愛車のサスペンションに何らかの方法でチューニングを試みた経験のある人なら、CBR250RRに見られる作動性の良いサスペンションにも納得できることだろう。ラジアルタイヤもグリップが良いだけではなく、グリップを失った時とその回復具合の挙動にシットリとした落ち着きがある。


 いずれも僅かな違いなのだが、その細部へのこだわりの積み重ねこそ大きな性能差となり、満足のいく価値を感じ取れるのである。

⚫️足つきチェック(ライダー身長170cm)

シート高は790mm。ご覧の通り両足の踵は地面にべったりとつく。若干前傾姿勢となるライディングポジションは適度なバックステップと共に如何にもスポーツバイクらしい。ハンドル位置も低めだが、決して遠くは無く、市街地走行やロングツーリングでも快適だ。


⚫️ディテール解説

摺動抵抗低減化が追求されたSHOWA製フロントフォークはφ37mmの倒立式。ダンパー機構は左側のみに搭載。右側シングル・ディスクブレーキは、ウェーブ形状のφ310mmフローティングローターとNISSIN製ダブルピストン・ピンスライド式キャリパーをマッチ。

スロットルバイワイヤシステムを採用したエンジンは、水冷DOHC4バルブの直(並)列2気筒。右サイドカムチェーン方式。1軸1次バランサーも採用されている。

エンジンの真下を抜ける右側アップマフラー。2本マフラーに見えるが、3室から成る一体構造で排気はデュアルテールパイプへと導かれる。リヤブレーキはφ240mmのディスクローターをリジッドマウント。

ステアリング・トップブリッジの下側でクリップオンされたセパレートハンドル。いかにもスポーティなデザイン。バックミラーはフロントカウルにマウントされている。

多機能をひとつに凝縮されたフルデジタルメーター。上端のREVインジケーターは5つの白色LEDで右側へ流れる様に表示される(点灯数が増える)。時計表示を切り替えるとラップタイムが計測できるストップウォッチにもなる。

各種操作機能は左側スイッチに集約されている。一般的な各種スイッチのほかに、ホーンボタンの右上はラップタイマー用スイッチ。ディマースイッチの上向きを押し込むとパッシングライトが点灯する。
右側スイッチはシンプルに赤いキルスイッチのみ。始動用セルボタンも共用されている。


従来は通常パッシングライト用に位置するスイッチ(人差指で扱う)は各種モード変更に使用。
リヤシートを外すと車載工具の他、ETC機器等を入られる若干のスペースがある。ベルトがあるせいで脱着作業の扱いは少し面倒だった。


段付きのセパレートシート。ライダーが腰を引いた時にはシートストッパーとしても機能する。

樹脂カバーの追加で力強い印象を与えるタンクデザイン。スポーツライディング時、ライダーとのフィット感も良い。

アルミGDCと呼ばれる重力鋳造工法で作られた非対称形状のスイングアーム。ボトムにリンク機構を持つプロリンクサスペンションがマッチされている。白いコイルスプリングのモノショックは5段階のプリロード調節ができる。

ヒップアップでフィニッシュするフレームの後端にはウインカーやライセンスプレートを支持する専用ステーがボルトオンされ、精悍なリヤビューを見せる。
上質なイグニッションキーはコピーが難しそう。


情報提供元: MotorFan
記事名:「 ちょいとお高い。でも走れば納得! CBR250RRの贅沢な乗り味はライバル250ccスポーツを圧倒する。【ホンダ試乗レポート】