REPORT●遠藤正賢(ENDO Masakatsu) PHOTO●遠藤正賢、Scania
それが本当かウソかは、「ネクストジェネレーションスカニア」のコックピットに昇れば一目瞭然。ドイツやスウェーデンの乗用プレミアムブランドもかくやと思わせる機能的かつ上質なダッシュパネルに、心地良い感触の大ぶりなシート、そしてベッドは、大型自動車免許やけん引免許を取得していない筆者にさえ「乗りたい!」と思わせるほどの魅力を備えていた。
そして実際に、最高出力650hpを1900rpm、最大トルク3300Nmを950-1350rpmという極めて低い回転域で発生する16.35ℓ V8ディーゼルエンジンと、超低速での繊細な走行が要求される時にのみ使用するクラッチペダルを持つ3ペダル式の12速+2速「オプティクルーズ」シングルクラッチ式トランスミッションを組み合わせた6×4トラクターの最上級モデル「S650ハイライン」にトレーラーを装着し重機を載せ、総重量61トンの状態で走らせると、「ネクストジェネレーションスカニア」の魅力がインテリアだけではないことが即座に分かる。
発進こそほぼ目一杯アクセルペダルを踏み込む必要があるものの、ひとたび走り出せばターボラグを一切感じさせないフラットトルクと、デュアルクラッチ式と錯覚するほどスムーズかつ素早いシフトアップで、61トンの質量をあっけないほどに60km/h以上の巡航速度へと導いてくれた。しかもこれが、可変ジオメトリーターボではなく固定式ターボで、さらにEGRを用いずSCRのみで平成28年排出ガス規制をクリアするというのだから、驚くより他にない。
だがコーナーの入口に差し掛かっても、コラムレバーで5段階から効きを調節可能な流体式リターダー(補助ブレーキ)が、新型リーフや欧米のEVよりも強力かつ滑らかに膨大なマスを減速してくれるため、不安は一切感じない。
なお、試しにフットブレーキでも減速してみたが、前後ドラムブレーキながら商用車にありがちな、初期制動力だけむやみに高く、積み荷を前方へ吹っ飛ばしてしまいかねない非コントローラブルな特性とは真逆の、極めてリニアなフィーリングだった。
そして圧巻は、走りである。筆者は15~20年前に4トンクラスの車載車を公道で何度か運転した経験があり、その際に前述の非コントローラブルなブレーキと、中立付近の遊びが極めて大きく不正確なハンドリング、フル積載の状態でもリヤから強烈に突き上げる乗り心地、というイメージを商用車に抱いてしまっていた。
しかし「ネクストジェネレーションスカニア」は、そうした偏見を根本から覆す、極めて正確かつ頼もしい手応えと挙動、フラットな乗り心地をドライバーに返してくれる。世代交代に伴い安全性向上のためキャビンの剛性が高められ、燃費改善のため空力特性が全面的に見直されたというが、その効果は走りにもプラスの効果をもたらしているようだ。
この走行フィールは、500hp/1900rpm&2550Nm/1000-1300rpm仕様の12.742ℓ直6ディーゼルエンジンと2ペダル式の12速+2速「オプティクルーズ」を搭載する4×2トラクターの上級グレード「R500ハイライン」に、総重量44トンの状態で試乗すると、より一層強く感じられる。「S650ハイライン」でも余裕に満ち溢れているいうのに、17トンも軽い状態の「R500ハイライン」に不足を覚えるはずもなく、高級背高ミニバンからスポーツセダンに乗り換えたかのように軽快で意のままの走りを味わうことができた。
これが、360hp/1900rpm&1700Nm/1050-1350rpm仕様の9.29ℓ直5ディーゼルエンジンと2ペダル式の12速+2速「オプティクルーズ」、荷台に日本トレクス製の完成ウイングを搭載する6×2リジッドトラック「P360」へ10tの荷物を載せた車両になると、体感できる運転感覚は同じスポーツセダンでも、LセグメントからDセグメントに乗り換えた時に近いものとなる。
そしてさらに、同じ仕様の車両に空荷の状態で試乗すると、体感できる軽快感とコントロール性は最早“大型トラックのピュアスポーツカー”と言っても過言ではないレベル。しかも、岡山国際サーキットはバックストレートが上り坂となっているが、この区間でも難なく加速できるうえ、コーナーで縁石に乗り上げても、空荷にもかかわらずエア式のサスペンションやシートがその凹凸をキレイに吸収し、ドライバーに不快なショックを感じさせることはなかった。
乗用車でもそう多くの車種では得られない、上質かつ快適装備満載のインテリアと極めてコントローラブルな走りを備えた「ネクストジェネレーションスカニア」、これならば複数泊の長距離輸送業務もさほど苦にならないだろう。そして、ドライバーの就労意欲を大いに高めてくれることは間違いない。