TEXT●小泉建治(KOIZUMI Kenji)
PHOTO●平野 陽(HIRANO Akio)
まずは東京都新宿区の編集部でカメラマンと合流する。さすがはヴァリアントだけあって、ミドルサイズのスーツケースと同じくらいのカメラバッグ、三脚、脚立、半畳分くらいの大きさのあるレフ版やディフーザーを数枚、そして大人ふたり分の一泊二日の荷物がラゲッジスペースにすべて収まり、なにごともなかったかのようにトノカバーが閉まった。
乗員はドライバーである筆者とカメラマンの2名で、ふたりとも体重は75kgだ。カメラ機材を含む荷物の総重量は約35kg である。エアコン設定温度は23℃とした。
初台南インターチェンジから首都高速に乗り、そのまま東名高速に入る。往路はエンジンのフィーリングを味わう目的もあって、なるべくクルーズコントロールを使用せずに走る。基本的に燃費は意識せず、ごく普通に流れをリードする走りを心掛けるようにする。
御殿場ジャンクションから新東名に入る。高速走行を得意とするドイツ製サルーンだけに日本での遵法走行は平穏無事すぎて退屈極まりないが、カメラマンと撮影の段取りなどの話をしているうちにどんどん距離が伸びていく。
豊田東ジャンクションから東海環状自動車道を経て美濃関ジャンクションへ。そこから東海北陸自動車道を北上し、白鳥インターチェンジで一般道に降りる。ここまで506kmを走り、平均速度は87km/h、燃費は19.8km/Lだった。
白鳥インターチェンジを降りてからは国道158号線を西へ向かう。しばしワインディングロードを堪能した後、古き佳き城下町の面影を色濃く残す越前大野へ到着する。
しばし大野の街中で撮影し、再び国道158線で福井へ。市内のホテルに投宿した。
翌日は県道115号線と183号線で日本海へ出て、国道305号線を海岸沿いに南下する。ここでも撮影のために何度か同じルートを往復するなどしつつ、敦賀インターチェンジへと到着する。
自動車専門媒体の撮影は燃費に厳しい。光や背景との関係で、撮影場所が決まるまでにはちょっと動かしては停め、また動かしては停め、の繰り返しとなる。
走行シーンの撮影時の場合、今度はカメラマンの指示にアクセル操作だけで即座に対応するため、低めのギヤに固定して走ることが多い。そして何度かカメラマンの前を通過するためには、当然ながらUターンの繰り返しとなる。すなわちストップ&ゴーの繰り返しというわけだ。
撮影時には、平均燃費計の数字がみるみる悪化していくのが通例なのである。
そうした状況のなか、山坂、市街地、そして流れのいい海岸沿いを含めて一般道を197km走り、平均速度は34km/h、燃費は17.8km/Lをマークした。
ドイツ車もディーゼル車も「高速燃費が得意」というのが一般的な認識のはずだが、それにしてはパサートTDIは高速道路に対する一般道での落ち込みが少ない。高速道路をガンガン走る人こそディーゼルに向いていると言われるが、フォルクスワーゲンの新世代ディーゼルは意外や日本の道路環境にこそ向いているのかも知れない。
敦賀インターチェンジからは北陸自動車道を南下し、米原ジャンクションから名神高速へ。そのまま東名高速に入り、豊田ジャンクションから伊勢湾岸道、豊田東ジャンクションから新東名とつなぎ、御殿場ジャンクションから再び東名高速で東京へ帰着する。
復路はアダプティブ・クルーズコントロールを積極的に使い、終始リラックスしながらの高速巡航となった。首都高速の初台南インターチェンジを降りた時点で、敦賀インターチェンジからの距離は468km、平均速度は91km/h、燃費は20.5km/Lだった。
その結果、総走行距離は1171kmで、平均速度は70km/h、平均燃費は19.7km/Lとなった。JC08モード燃費が20.6km/Lだから、カタログデータ達成率は96%となった。
その高い達成率もさることながら、一般道での落ち込みが少ないことが印象的だった。もちろん都市部の大渋滞などにはまれば話は別だろう。ただ、ドイツ車やディーゼルが高速燃費だけではなく、もっと低い速度レンジでも優れた燃費性能を発揮することは興味深い発見だったといえるだろう。
フォルクスワーゲン・パサート・ヴァリアント TDI ハイライン
全長×全幅×全高:4785×1830×1470mm ホイールベース:2790mm 車両重量:1560kg エンジン形式:直列4気筒DOHCディーゼルターボ 総排気量:1968cc ボア×ストローク:81.0×95.5mm 最高出力:140kW(190ps)/3500-4000rpm 最大トルク:300Nm/1900-3300rpm トランスミッション:6速DCT タイヤサイズ:235/45R18 車両価格:509万9000円