REPORT●北秀昭(KITA Hideaki)
頑張っていれば、いつか報われる。
持ち続ければ、夢はかなう。
そんなのは幻想だ。
たいてい、努力は報われない。
たいてい、正義は勝てやしない。
たいてい、夢はかなわない。
そんなこと、現実の世の中ではよくあることだ。
けれど、それがどうした。
スタートはそこからだ。
新しいことをやれば、必ずしくじる。腹が立つ。
だから、寝る時間、食う時間を惜しんで、何度でもやる。
さあ、きのうまでの自分を超えろ。
きのうまでのHondaを超えろ。
(ホンダのテレビCM「負けるもんか」より)
マン島TTレースへの出場と優勝、FIへの出場と優勝、四輪車の市販化…。ホンダはこれまで、周りの人々が「そんなの無理だよ」ということを実現させてきた、日本のメーカーの中でも“ちょっと変わった”存在だ。
12月14日に発売された「スーパーカブは、なぜ売れる」は、1958年(昭和33年)に登場し、2017年に累計1億台を突破! 今でも世界中で愛され続ける超ロングセラーモデル・スーパーカブをテーマに、直接開発に携わった“負けず嫌いでやんちゃな社長”だった創業者の本田宗一郎氏のエピソードなど、スーパーカブにまつわる事実がユニークな視点が語られている。
本書では、ホンダの創業者・本田宗一郎と藤澤武夫が臨んだ、初の世界戦略車であるスーパーカブの開発と戦略構築のプロセスなど、生誕60周年の超ロングセラー商品の誕生秘話を紹介。
また、海外進出における“尖兵”として、ホンダ初の世界戦略車となったスーパーカブの海外展開方法を詳しく解説。文化や地勢、物価、政情の異なる国々で、ホンダはどのような販売戦略を採ってきたのか? コピー商品の台頭でホンダが採った奇策とは? などなど、世界各国での異なる販売戦略や対策も紹介しているのが興味深いところ。スーパーカブに関わるビジネスの全貌を解き明かすべく、日本はもちろん、世界各国のスーパーカブ事情を徹底取材しているのがポイントだ。
本書を読み終えた後、冒頭の「負けるもんか」のテレビCMが頭をよぎった。スーパーカブはもちろん、戦後、下町の中小企業だったホンダが、わずか20年余りで世界的に躍進した理由は、根っからの負けず嫌いだった本田宗一郎だけでなく、「きのうまでの自分を超えろ=誰もやったことのないことをやる=負けるもんか」という社員たちのホンダイムズ以外の何物でもない。
著者は四輪&二輪ビジネスに精通し、かつて本田宗一郎を徹底取材した経験を持つ中部 博氏。カブフリークはもちろん、ホンダファン、ヒット商品の仕組みに興味のあるビジネスパーソンは、ズバリ必読。全国の書店やネット書店で発売中です!
【著者プロフィール】
中部 博(なかべ・ひろし)
1953年生まれ。週刊誌記者、テレビ司会者などジャーナリスト時代を経てノンフィクションの書き手となる。主な著書に『HONDA F1 1000馬力のエクスタシー』(集英社)、『いのちの遺伝子・北海道大学遺伝子治療2000日』(集英社)、『ホンダ式』(東洋経済新報社)、『定本 本田宗一郎伝』(三樹書房)、『炎上―1974年富士・史上最大のレース事故』(文藝春秋)などがある。日本映画大学「人間総合研究」非常勤講師。