スライドドアを装備するハイトワゴンがユーティリティコンパクトカーだ。いずれも1.7m前後の全高をもち、コンパクトながらも大きな室内空間は使い勝手も良く、7人/6人乗りもラインナップするシエンタには新たに2列シート車も加わりレジャーなどでの活用度が上がった。フリード+/フリードも人気だ。
低床&フラットフロアによる優れた乗降性と居住性が自慢
街中を華やかに彩るカラフルなボディカラーに思わず目がいく、ユニバーサルでクールなトヨタ最小ミニバンがシエンタ。が、実は中身はしっかりマジメ。老若男女を問わずファーストカーとして乗れる超実用的でもある商品力が魅力のプチバンだ。
そんなシエンタは低床&フラットフロアを採用したパッケージングも自慢。両側スライドドア部分のステップ高は330㎜と低く、スライドドアの開口部もプチバンとしては広々。シニアやペットの乗降も楽々だ。テールゲート側も開口部地上高490㎜とこれまた素晴しく低く、重い荷物の出し入れ、ペットの乗降も快適そのものである。
しかも、1.5ℓのガソリン車と、28.8㎞/ℓの燃費性能を誇る1.5ℓ+2モーターのHVで室内、荷室空間に差がほとんどないのもポイント。これはHVバッテリーを2列目床下に配置したことで実現している。さらに、プチバンの3列目席は緊急席で普段は格納して使う……というのが常識だが、3列目席に大人がしっかり座れる居住性、上質なシートの座り心地を与えたのも見どころ。
2018年9月のMCでは2列シート&ブラックルーフのツートーン仕様を追加するとともに、先進安全支援機能が歩行者検知機能(昼間)を備えたトヨタセーフティセンスにグレードアップ。機能は最小限とは言え、プチバンとしての商品性、車中泊も可能な実用性は一段と高まっている。
利便性に優れる上下二段荷室
安全・快適センシングも魅力
フリードプラスは、コンパクトミニバンのフリードをベースに開発された2列シート仕様だ。基本部分はフリードの車いす仕様車(福祉車両)と共通化され、荷室後部の床を低い位置まで掘り込んでいる。リヤゲートを開いた部分の荷室床面地上高は335㎜と低く(一般的には600㎜前後)、重い荷物も積みやすい。
荷室用ユーティリティボードを使うと、荷室を上下に二分割できる。低い位置まで掘り込まれた部分がアンダーボックスになり、荷物を整理しやすい。この状態で後席を畳むと、前席を除いた部分がフラットな空間になり、車内での就寝も可能だ。ボードで区切られた上側を就寝スペース、下側を荷室として便利に使える。
天井が高いために荷室容量は大きく、アンダーボックスを確保した上で後席を畳むと大人用の自転車も積載できる。荷室の側面にはユーティリティナット(M6)が左右に10ヵ所(合計20ヵ所)取り付けられ、棚やネットを装着しやすい。
装備面では安全性を高めるホンダセンシングが注目される。歩行者も検知して緊急自動ブレーキを作動させ、一時停止や速度制限などの標識をマルチインフォメーションディスプレ
イに表示することも可能だ。
運転支援機能として、車間距離を自動調節しながら設定速度で巡航できるクルーズコントロールも備わり、ペダル操作を軽減させる。車線の中央を走れるようにパワーステアリングを制御する機能もある。
3列すべてが快適な広々空間
安定した走りに軽快さも特筆
コンパクトなのに3列シートを備えるフリード。居住性には自ずと限界がありそうなものだが、現行モデルはそこを大いに引き上げたのがポイントだ。
従来に比べると1〜3列目までが約90㎜長くなり、特に2列目シートの居心地が良くなった。キャプテンシート仕様ではロングスライドとなり、大型セダンよりも広々としている。3列目はさすがに広々とまではいかないが、窮屈な感じはなくコンパクトミニバンとしてはかなり使えるレベル。収納が跳ね上げ式なので幾分スマートさは落ちるものの、シート本来の座り心地などは満足できるものになっている。
低燃費なハイブリッドが人気ではあるが、ガソリン車の走りが良くなっていることも見逃せない。自然吸気エンジンながら常用域のトルクが充実していてCVTの制御も自然。スポーティというほどではないが、軽快な走りをみせる。ハイブリッドは有段ギヤゆえのダイレクトな走りが魅力となる。
スライドドアながらボディ剛性も十分以上でシャシー性能も侮れない。街中ではソフトタッチで快適な乗り心地を提供する一方で、高速道路やワインディングではしっかりとした操縦安定性をみせるのだ。
根本的な走りの実力は高いが、それをいたずらにスポーティに振らず、快適・安心に全力投球されているのが良心的。子育て中の家族などにぴったりの性格だろう。