ただ、このXXというのが北米市場ではマズかった。アメリカでは成人映画のレートを「X」で表すため、なにやら卑猥な意味で捉えられてしまうのだ。
そんなわけで、日本を除くグローバル市場ではスープラの名が与えられた。スープラとは、ラテン語で「最高の、至上の」を意味する言葉で、セリカにも通じるところがある。
斬新なリトラクタブルヘッドランプを採用した二代目。こちらも海外市場はスープラ、国内試乗はセリカXXと、ふたつのネーミングを使い分けられていた。
ちなみに記者は、逆輸入車だったのか張り替えただけだったのか不明だが、小学生の頃に「SUPRA」というエンブレムをつけた車両を目にし、なんと呼べばいいのかわからず、なんとなく雰囲気で「スーパーだ」と言って、父親に綴りがちょっと違うぞと指摘された記憶がある。
「じゃあなんて読むんだろう?」と問うと、父親も「なんだろうなぁ」とわからなかった模様。それくらい、SUPRAという単語は日本人には馴染みがないものだった。
ところがどっこい、1986年に登場した三代目は、ついにグローバルと同じスープラを襲名。日本人に馴染みのない響きではあったが、それがむしろ特別感、異国情緒を醸し出し、このモデルのスペシャルティカーとしてのキャラクターを引き立てることになったようだ。
そして、つい最近まではこれが「最後のスープラ」ということになっていた四代目がデビュー。もちろんこちらもグローバル共通のスープラを名乗っている。
余談ながらかつてトヨタは、ほとんどのモデルが「C」で始まるネーミングを持っており、その次に多かったのが「S」だった。CELICAもSUPRAもこの法則に当てはまるし、スプリンター・カリブ(SPRINTER CARIB)なんてその象徴的なネーミングだ。
近年ではプリウスやヴィッツやアルファードなど、CやSではない頭文字のネーミングを持つモデルが当たり前のように増殖してきたので、なんとなく寂しさを覚えていた人も少なくないだろう。
伝統のスープラの名の復活は、いろいろな意味でクルマ好きの心を揺さぶることになりそうだ。