REPORT●ケニー佐川(SAGAWA Kentaro) PHOTO●渡辺昌彦(MASAHIKO Watanabe)
EVシステムの心臓部に当たる動力源はモバイルパワーパックと呼ばれる48Vリチウムイオンバッテリーを2個直列させて96Ⅴとして使う。これに最高出力4.2kw(定格出力0.98kw)の低速トルクに優れるIPM構造モーターの組み合わせることで、発進からスムーズで力強い走りを実現した。
スタイリングはPCXを踏襲しつつEVらしいブルーを強調した専用カラーを採用。フレームも基本は共通だがパワーユニットまわりを専用設計とし、見た目の差別化とともにEVならではの上質な乗り心地を追求。バッテリー搭載スペースと後輪可動スペースの関係でホイールベースはPCXから65mm延長されているが、ハガータイプのリヤフェンダーとすることで全長はPCXと同等に抑えている。充電は車体内蔵のプラグによる直接充電の他、パワーパックを取り外して専用充電器(オプション)でチャージする2つの方法を設定。ちなみにフル充電にかかる時間は直接充電で約6時間、専用充電器を使った場合で約4時間となっている。
気になる走りの性能だが、最高速度は60km/h強、一充電での走行距離は41km(60km/h定地走行)と原二スクーターとしては控えめなスペックに見えるが、これも投入予定国での調査から浮かび上がった数値だという。ちなみに実際の走行に近いWMTCモードでは50km以上の後続距離を確保でき、リサーチ国における8割以上のユーザーの1日当たりの実用距離をカバーできるそうだ。
僅かな時間だが試乗する機会を得たので第一印象をお伝えしたい。スペックでPCXと見比べると最高出力は半分しかないが、一方で最大トルクは1.5倍という逆転している点が興味深い。実はこれがエレクトリックを読み解くカギだ。
発進加速の力強さはノーマルPCX以上で、試乗会場の狭い敷地内でも想定されているトップスピードにあっという間に達した。そして車重はバッテリーの分で14kg重くなっているにも関わらず、ガソリン車ではエンジン・駆動系とマフラーなどで占められているパワーユニットまわりがEV化によって軽量化されているため、バネ下が圧倒的に軽くハンドリングも軽快だ。これによりリヤサスの吸収性がよくなり、EVの超スムーズな動力フィールに加え乗り心地も一層快適になっている。そして何と言っても静か。モーター音も上品で、まさにクリーンエネルギーを体現したようなライド感が清々しかった。
ちなみにリース価格は現時点では確定してはいないが、車両本体+モバイルパワーパックが2個付いたモデルなど、いくつかのプランから選べるようになりそうだ。なお、バッテリー回収処理などの法規対応も含めてのリース販売価格となり、250台と少ない販売台数とバッテリーコストに加えことも考えると相応の金額となってはしまいそうだ。
そして朗報も。東京や大阪において一般ユーザー向けモニター募集や、2019年からはレンタルやシェアリングサービスの開始も予定されるなど、エレクトリックに乗れる機会は確実に増えるはずなので楽しみだ。これらの収集データを基にさらにアップグレードした製品として、ゆくゆくは市販化されるはずなので楽しみにしたい。
通称名: PCX ELECTRIC
車名・型式: ホンダ・ZAD-EF01
全長×全幅×全高(mm): 1,960×740×1,095
軸距(mm): 1,380
最低地上高(mm): 132
シート高(mm)★: 760
車両重量(kg): 144
乗車定員(人): 2
一充電走行距離※6(km) 国土交通省届出値: 41(60km/h定地走行テスト値)
最小回転半径(m): 2.1
原動機形式・種類: EF01M・交流同期電動機
定格出力(kw): 0.98
最高出力(kW[PS]/rpm): 4.2[5.7]/5,500
最大トルク(N・mt[kgf・m]/rpm): 18[1.8]/500
メインバッテリー種類: リチウムイオン電池
メインバッテリー電圧/容量: 50.4V/20.8Ah×2個
バッテリー充電電源: AC100V(単相)
タイヤ: 前/100/80-14M/C 48P、後/120/70-14M/C 55P
ブレーキ形式: 前/油圧式ディスク、後/機械式リーディング・トレーリング
懸架方式: 前/テレスコピック式、後/ユニットスイング式
フレーム形式: ダブルクレードル
■道路運送車両法による型式認定申請書数値(★の項目はHonda公表諸元)
■製造事業者/本田技研工業株式会社
※6 一充電走行距離は、定められた試験条件のもとでの値です。お客様の使用環境(気象・渋滞等)や運転方法、車両状態(装置、仕様)や整備状況などの諸条件により異なります。一充電走行距離は、車速一定で走行した実測にもとづいた値です。