では、警察庁が移動オービスの導入を決めた時点で採用候補に挙がっていたレーダー式移動オービス、MSSSの稼働状況はどうなっているのか、というと、今のところ導入されているのは埼玉県と岐阜県のみ。つまり、多くの都道府県警がLSM-300にメリットを感じていると言うことになる。メーカーが長きにわたって固定式オービス、LHやL型を警察に提供してきた国内の(株)東京航空計器であることも、強みのひとつと言えるかも知れない。
が、確かにLSM-300のメリットは使い勝手の良さという意味ではMSSSに比べて大きいが、それは使う方にとってのメリット。我々ドライバーにとっては、信頼度を含めた性能の方が気になる。従来のレーダー式やループコイル式においても、度々、誤測定が発生しているからだ。
では、不明な点が多すぎるため、大ざっぱではあるが、性能を比較してみよう。
まず、その計測方法だが、従来と違って複数車線の複数台を一挙に捕捉可能な点は、両者とも同じ。しかし、測定方法は違う。LSM-300はレーザースキャン方式と言って、対象を立体的(3D)に捕捉し、その移動距離から速度を算出する。
対してMSSSは従来通りのドップラー方式。対象に電波をあて、跳ね返った電波との周波数の差で速度を割り出す。ちなみに、MSSSは、同時に移動距離も測定して、大きな誤差が出ると測定をキャンセルするというが、LSM-300の方は、今のところ計測値の正確性をどうやって保証しているのかは不明だ。さらに、LSM-300は120km/h以上の測定信頼度は、まだ確立されていないという噂すらある。120km/hというのは制限速度の低い生活道路では非現実的な速度だが、果たして幹線道路や高速道路で適正な取り締まりができるのか、興味しんしんだ。
逆に、MSSSは、実績のあるレーダー式だけに、高速域においても従来と同等の測位精度を誇ると言われている。幹線道路でも問題なく取り締まりができるというわけだ。
ところで、LSM-300のカタログに書いてある計測限界は199km/h。固定式オービスであるHシステムは220~240km/hだから、意外と低い数値だ。最近、世間を騒がせた公道暴走事件の検挙スピードは280km/h。つまり、LSM-300では計測できなかったことになる。それに比べてMSSSは300km/h以上でも正確に計測できるという。もちろんそれは高速域の話であり、主に生活道路での取り締まりに使われる可搬式移動オービスにとっては無縁の世界ではあるのだが。
いずれにせよ、レーザー式、レーダー式に関わらず、国内で使用されている速度取締機器の測定精度は、公に公認されたものとは言いがたい。その測定精度を一体、誰が保証しているのか、適正なテストは行われているのか、まだまだ不明な点が多すぎる。特にレーザー式は過去に例のないものだけに、我々ドライバーが納得できるような検証結果を公に示してもらいたいものだ。