「世界的に見ても、このような最新テクノロジーは若い人たちが親しんで使いこなしているので、まずは若いオーナーが多いAクラスに初搭載することにしました」
──各言語へのローカライズを進めるにあたり、苦労した点などはありますか?
「MBUXのサービスには、音声によるコントロールと、ディスプレイに表示するものがあります。音声は13の言語をサポートしており、ディスプレイは13以上の言語に対応しています。音声とディスプレイ表示とでは、それぞれ課題が異なります。音声については、日常で話す“自然言語”を理解させるために多くのデータを収集し、色々な表現に対応できるようにしました。このデータを収集する部分に多くの時間を費やしました。ディスプレイの表示については、それぞれの言語で表示する長さが異なってきますので、表現の仕方に工夫する必要がありました」
──MBUXのサービスについてお尋ねします。車載データで完結するものと、クラウド経由でインターネットの情報を使うものがありますが、その処理はどのようにしているのでしょうか。また、AI機能の進化について教えてください。
「MBUXはハイブリッドのシステムで、もっとも適切な答えを、いかに早く出すか、ということを重要視しています。ユーザーから指令があると、MBUXはオンラインに行くべきかを考えます。もし、オンラインに行くべきと判断した場合、クラウドからサーバーに行ってベストな回答を持ってきます。もしも、クラウドにつながっていない場合は、車載のソフトウェアから回答を持ってきます。質問の内容によっては、オンラインの情報でないと答えられないことがあります。例えば、“明日の天気は?”という未来の質問の場合は、即座にオンラインにつながって情報を集めます。AI機能については、お客様がMBUXをどのように使っているかを見ていきますが、パーソナライズしていくレベルのものではありません」
「将来的には、クルマと家をつなぐことも可能」
──自動車の音声入力については、グーグルやアマゾンなど他の多くのIT企業が手掛けています。そうした企業が持つ音声入力に対して、メルセデス・ベンツが独自に開発したシステムの強みや優れている点を教えてください。
「一番大切なことは『我々はクルマのことが良く分かっている』ということです。走行時に発生する風切り音などのノイズに対し、システムがきちんと動作するように音声のアルゴリズムを調整しています。その結果、とても優れた音声認識が可能となりました。もうひとつは、メルセデス・ベンツのシステムを使うことによってクルマの中の機能をコントロールすることができる点です。これはスマートフォン単体ではできないことです。つまり、MBUXはユーザーに包括的な体験(エクスペリエンス)といったものを提供することができるので、ユーザーはクルマとスマートフォンの間を行き来する必要がなくなりました。さらに、将来的にはクラウドを経由して、グーグルホームやアマゾンエコーとの連携が実現すれば、クルマと家をつなぐことも可能だと思います」
「ビッグデータを収集し、改善や開発に役立てる」